スクリャービン ピアノ・ソナタ第9番 「黒ミサ」
藤倉大 ピアノ・ソナタ(長谷川綾子委嘱作品・日本初演)
ベルク ピアノ・ソナタ op.1
リスト ピアノ・ソナタ ロ短調
<アンコール曲>
リスト ノクターン「夢のなかに」
久々に行く小菅優さんのソロ・コンサートだが、曲目が強烈。
曲者揃い、というか、毒を含んだ曲ばかりで、ベルクがなぜか正常に思えてしまう。
予想通り、聴いている方はだんだん毒に冒されてくるのだが、よくもまあこういう曲を弾く気力・体力があるものだと感心する。
スクリャービンの「黒ミサ」は、彼曰く「音による呪文」であり、私見では「静かな不安」を喚起・刺激する曲のように思える。
藤倉大「ピアノ・ソナタ」は日本初演だが、これまた不気味なテーストの曲。
初めは森の中の小川の流れのようでちょっと安心するが、気づかないうちに冥界へと誘われているという、”並行的なカタバシス”という印象である。
続くベルクの「ピアノ・ソナタop.1」は一番正常(健全)な曲で、万華鏡のようにニュアンスを変えつつも、基本的には強烈な哀しみを表現しているように思える。
さて、メインディッシュのリスト・ロ短調ソナタについて、阪田知樹さんは、かつてこう語ったことがある。
「クラシック界にリストが嫌いな人はたくさんいるのですが、そういう人でも、このロ短調ソナタだけは評価する、そういう曲なのです。」
初っ端から悪魔的な雰囲気をたたえたこの曲は、案の定、ファウストとメフィストフェレスをイメージした曲らしい。
野元由紀夫氏によれば、両者の対立性が一つのテーマに組み込まれた「対立的一元主題法」という手法がとられているそうだ。
ちなみに、私には、ラストでファウストとメフィストフェレスが相討ちで死んでしまうように思われた。
いずれにせよ凄い曲で、聴く方もエネルギーが必要とされるようだ。