Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

ラスト・ダンス

2024年10月04日 06時30分00秒 | Weblog
 「「だから踊ろう... !」は、コロナ禍のもとでカンパニーを率いていたジル・ロマンが、困難な状況下で“踊る喜び”を表現することを念頭に創作。ロマンは「そのダンスの喜びを体現」し2021年に没したダンサーのパトリック・デュポンに本作を捧げています。
 これに続くのはベジャール珠玉の3作。「2人のためのアダージオ」は1986年初演の「マルロー、あるいは神々の変貌」からの抜粋で、ベー トーヴェンのヴァイオリン・ソナタにのせて、兵士と”死”を象徴する女の感動的なダンスが踊られます。「コンセルト・アン・レ」は、ストラヴィンスキーの同名の ヴァイオリン協奏曲ニ調を、一組の主役ペアと男性ソリスト、女性群舞で視覚化するベジャールには珍しいネオ・クラシカルなバレエ。フィナーレには規律から脱したダンサーたちが祝祭的なダンスを繰り広げます。そしてプログラムの掉尾を飾るのが「ボレロ」。

 Bプロの最初の演目は、ジル・ロマン振付の「だから踊ろう... !」。
 意外にも古典バレエのテクニックを中心に構成されたシンプルなコリオで、
 「純粋に踊る喜びだけを目的とした・・・」
作品だそうである。
 次は「2人のためのアダージオ」で、エリザベット・ロス&ジュリアン・ファヴローの2枚看板によるデュオ。
 ジュリアン「私が演じる兵士が、死を象徴する役のエリザベットから死ぬ前に最後の煙草をもらって一服し、ちょっとホッとする場面を経て死を迎えるというもので、経験豊かで成熟したダンサーが踊るにふさわしい作品と言えるでしょう。
 芸術監督に就任したばかりのジュリアンは、膝やアキレス腱の損傷などから引退を考えていたそうで、日本でのダンスはこれが最後ということのようだ。
 続く「コンセルト・アン・レ」は、コリオだけ観ているとベジャール作とは思えない「ネオ・クラシカル」な作品。
 配役に注目すると、主役=カップルのカテリナ・ケビキナとオスカー・フレイムは、いずれも昨年入団したばかりの、ロシアン・バレエにルーツを持つダンサーである。
 すなわち、カテリナ・ケビキナはウクライナ出身でウクライナ国立バレエ団、マリインスキー・バレエという経歴で、対するオスカー・フレイムは、イギリス出身だがワガノワ・バレエ・アカデミーで学んだ後ボリショイバレエ団に入ったという、ゴリゴリのロシア派である。
 この2人は基礎が盤石だし、作品のテーストともマッチしているので、気持ちよく観ていられる。
 ラストはおなじみの「ボレロ」で、メロディは大橋真理さん。

 「初めに「ボレロ」を踊ったときの闘いは、まさにそれでしたね。自分に集中しようと思っても、ほかの人と比べられる。何より観客の期待度が高いですから。それに私自身、長年観続けてきた作品だからこそ、自分の中に彼らのイメージが強く残って払拭できなかった。最初は無意識のうちに先輩ダンサーたちのイメージに近付こうとしていました。しかしあるときジルに「彼らは彼らの仕事をやってきた。君は君しかできない仕事をやらなければ『ボレロ』を踊る意味がないよ」と言われ、そうなんだなと感じました。どんなに近付こうと思っても身体も違えば国籍も違うしジェンダーも違います。私は自分の強みを探して、それを生かす「ボレロ」をやっていかなければならないとハッとさせられました。

 大橋さんの「ボレロ」は初めて観たが、今まで観た中では間違いなく「一番可愛らしい」ダンスである。
 「世界バレエフェスティバル」の「バクチⅢ」のときは結構大柄に見えたのだが、リズム役の男性たちが大きいせいか、今回の大橋さんはかなり小柄に見える。
 ジュリアン・ファヴローがライオンだとすれば、大橋さんはミーア・キャットというイメージだろうか。
 大橋さんの「ボレロ」で私が気付いた特徴は、一つ一つの動きが端正なところと、顔(表情)に力を込めているところである。
 どの演目もそうだが、顔(表情)もダンス表現の一部なので、ここに注目すべきなのだ。
コメント
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