Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

台所からキッチンへ(1)

2022年02月22日 06時30分27秒 | Weblog
 半年ほど前のこと。
 書店の「新刊コーナー」に、谷崎潤一郎の「台所太平記」があるのに驚いた。
 というのは、3、4年ほど前に発行されたばかりという記憶だったからである。
 詳しい事情は不明だが、末尾の方に、「挿し絵と解説を新たに収録した」とあった。
 ということで、即座に購入したのだが、これが中々興味深い。
 「台所」と言えば、ギリシャ・ローマの伝統からすれば、「家政」(オイコス。エコノミーの語源)の中心であり、「政治」(ポリティクス)とは対極にあるとされてきた。
 あの大変な時代に「細雪」を書き続けていた反骨の作家は、今度は、「戦前の1936年(昭和11年)から戦後の1963年(昭和38年)にかけ、家の台所仕事を担っていた歴代の女中たちの変遷の物語。」(ウィキペディアの解説)を通じて、日本社会の「変わらないもの」を描こうとしたように思える。
 すると、私は、書店の別のコーナーにある、吉本ばななの「キッチン」が読みたくなり、衝動買いしてしまった。
 初版は1988年(昭和63年)1月だが、私はハードカバー版を斜め読みしただけで、ストーリーは殆ど忘れてしまっている。
 もともと私は、存命の日本人作家は筒井康隆氏と池澤夏樹氏のほかは読まないので、今回の衝動買いは自分としては珍しい。
 さて、この2冊を読み比べてみると、小説の外部にある社会は天と地ほどの違いがあるにもかかわらず、台所=キッチンが象徴しているものは同一であることに気づく。
 それは、母親の胎内(子宮)である。
コメント
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