仕事の道具

「仕事の道具」

２：タオル

顔に敷くタオル。

ベッドに開いている穴の周りに敷くのだが、マッサージ師によって色々な折り方がある。

私は、このやり方に落ち着いた。

長時間うつ伏せでいると顔が当たって痛くなってくるが、このタオルがそれを緩和する。

心地よく施術を受けてもらうためのアイテムだ。

タオルは、一人終わるごとに新しいのに取り替える。

以前は、全てうちのタオルを使っていたが、今は、患者さん各々にバスタオルを持参していただいている。

修行時代、タオルの洗濯は新人弟子の仕事だった。

新人は、なかなか患者さんのカラダを触らせてもらえない。

治療中は、立って見てる。電話が鳴ると取って、予約を受ける。会計をする。

その間に洗濯、掃除、みんなの昼食の用意、カルテ出し、送迎車の運転などをする。

仕事が終わると先輩のカラダを揉んで、練習する。

実践登板の日は突然やってくる。

「タハラ、その患者さん、足だけ揉んどけ。」

とか言われると緊張してやる。患者さんも新人だと分ってる。

優しい人は、「こうやって揉むともっと気持ちいいよ。」とか言ってくれる。

でも「ヘタくそ交代してくれ。」とか言う人もいる。この時、屈辱を味わう。

そうやってカラダでやり方を覚えて、だんだん上手くなっていく。


タオルの洗濯は、今でも俺の仕事。

たたみ方には、ちょっとうるさいよ。