親鸞聖人時代を生きた人々(49)(法然上人 65才 選択本願念仏集・捨閉閣抛)
『選択本願念仏集』は、建久9年(1198年)、
関白九条兼実の要請によって、
法然が撰述された2巻16章の論文である。
一般には『選択集』と略称される。
浄土三部経の経文を引用し、
それに対する善導大師の解釈を引き、
さらに法然上人御自身の考えを述べている。
末法においては称名念仏だけが相応の教えであり、
聖道門を捨てて浄土門に帰すべきで、
雑行を捨てて念仏の正行に帰入すべきと説いている。
それまでの観想念仏を排して
阿弥陀仏の本願を称名念仏に集約することで、
仏教を民衆に開放することとなり、
浄土教の歴史の中で画期的な意義を持つ聖教である。
1212年に刊行されると、
高名な仏教学者の(特に善導大師)の書を引用し、
弥陀の本願の救いを説いた書である。
確固たる学問的な根拠を示して、
弥陀の本願によらなければ絶対に救われないから、
聖道仏教はさしおいて、浄土仏教へ入れ、
と徹底して教える「選択集」は、
仏教界に水爆級の衝撃を与えた。
『選択本願念仏集』には聖道門の
「捨閉閣抛」(しゃへいかくほう)が
始終一貫、説かれてあった。
捨=捨てよ。
閉=閉じよ。
閣=さしおけよ。
抛=なげうてよ。
華厳宗の明恵は生前の法然上人を
高徳な人格だと尊敬していたが、
法然上人の死後
「選択集」を読んで激怒し、
すぐさま『摧邪輪』三巻で反論した。
これを皮切りに反論書が次々出されたが、
擁護する書も後を絶たず、激しい応酬となった。
当時の仏教界は『選択集』を中心に動いていた。
色々な『選択集』の解説書がでたが、
親鸞聖人の『教行信証』によって、初めて法然上人の
御意が明かになったのである。
「しかるに愚禿釈の鸞、建仁辛酉の暦、
雑行を棄てて本願に帰す。
元久乙丑の歳、恩恕を蒙りて
『選択』を書しき。
同じき年の初夏中旬第四日に、
「選択本願念仏集」の内題の字、
ならびに「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為本」と
「釈 釈空」の字と、空の真筆をもって、
これを書かしめたまひき。
--乃至--、
『選択本願念仏集』は、
禅定博陸 月輪殿兼実、法名円照
の教命によりて選集せしめるところなり。
真宗の簡要、念仏の奥義、これに摂在せり。
見るもの諭り易し。
まことにこれ
希有最勝の華文、
無上甚深の宝典なり。
--乃至--
慶ばしいかな、
心を弘誓の仏地に樹て、
念を難思の法海に流す。
深く如来の矜哀を知りて、
まことに師教の恩厚を仰ぐ。
慶喜いよいよ至り、至孝いよいよ重し。
これによりて、真宗の詮を鈔し、
浄土の要をえらぶ。
ただ仏恩の深きことを念うて、
人倫の嘲りを恥ぢず。
もしこの書を見聞せんもの、
信順を因とし、疑謗を縁として、
信楽を願力に彰し、
妙果を安養に顕さんと。」
(教行信証後序)
『選択本願念仏集』は、建久9年(1198年)、
関白九条兼実の要請によって、
法然が撰述された2巻16章の論文である。
一般には『選択集』と略称される。
浄土三部経の経文を引用し、
それに対する善導大師の解釈を引き、
さらに法然上人御自身の考えを述べている。
末法においては称名念仏だけが相応の教えであり、
聖道門を捨てて浄土門に帰すべきで、
雑行を捨てて念仏の正行に帰入すべきと説いている。
それまでの観想念仏を排して
阿弥陀仏の本願を称名念仏に集約することで、
仏教を民衆に開放することとなり、
浄土教の歴史の中で画期的な意義を持つ聖教である。
1212年に刊行されると、
高名な仏教学者の(特に善導大師)の書を引用し、
弥陀の本願の救いを説いた書である。
確固たる学問的な根拠を示して、
弥陀の本願によらなければ絶対に救われないから、
聖道仏教はさしおいて、浄土仏教へ入れ、
と徹底して教える「選択集」は、
仏教界に水爆級の衝撃を与えた。
『選択本願念仏集』には聖道門の
「捨閉閣抛」(しゃへいかくほう)が
始終一貫、説かれてあった。
捨=捨てよ。
閉=閉じよ。
閣=さしおけよ。
抛=なげうてよ。
華厳宗の明恵は生前の法然上人を
高徳な人格だと尊敬していたが、
法然上人の死後
「選択集」を読んで激怒し、
すぐさま『摧邪輪』三巻で反論した。
これを皮切りに反論書が次々出されたが、
擁護する書も後を絶たず、激しい応酬となった。
当時の仏教界は『選択集』を中心に動いていた。
色々な『選択集』の解説書がでたが、
親鸞聖人の『教行信証』によって、初めて法然上人の
御意が明かになったのである。
「しかるに愚禿釈の鸞、建仁辛酉の暦、
雑行を棄てて本願に帰す。
元久乙丑の歳、恩恕を蒙りて
『選択』を書しき。
同じき年の初夏中旬第四日に、
「選択本願念仏集」の内題の字、
ならびに「南無阿弥陀仏 往生之業 念仏為本」と
「釈 釈空」の字と、空の真筆をもって、
これを書かしめたまひき。
--乃至--、
『選択本願念仏集』は、
禅定博陸 月輪殿兼実、法名円照
の教命によりて選集せしめるところなり。
真宗の簡要、念仏の奥義、これに摂在せり。
見るもの諭り易し。
まことにこれ
希有最勝の華文、
無上甚深の宝典なり。
--乃至--
慶ばしいかな、
心を弘誓の仏地に樹て、
念を難思の法海に流す。
深く如来の矜哀を知りて、
まことに師教の恩厚を仰ぐ。
慶喜いよいよ至り、至孝いよいよ重し。
これによりて、真宗の詮を鈔し、
浄土の要をえらぶ。
ただ仏恩の深きことを念うて、
人倫の嘲りを恥ぢず。
もしこの書を見聞せんもの、
信順を因とし、疑謗を縁として、
信楽を願力に彰し、
妙果を安養に顕さんと。」
(教行信証後序)