言葉の旅人

葉🌿を形どって、綾なす色彩に耽溺です。

「いくさ」という言葉(3)

2010年03月09日 | Weblog
 「軍星」とは?
 「スターウヲーズ」なら面白いのだが、”いくさぼし”は北斗星(北斗七星)のことである。いわゆる異名というやつだ。
 限定するなら北極星の事と言い直しても良いだろう。

 地球上の陸地部分はその北半分に多くを占める。
 だから、古来より人は移りゆく夜空の星を見詰めてその不思議と神秘に見せられていたのはまさに自然な成り行きであったに相違ない。
 その中にあって、ただ唯一殆ど動かない夜空の星を支配者的な位置に擬えたのも又、自然な思いだと首肯できる。
 天空を支配する神と信じるのも又その神秘の延長線上にあるのだろう。
 これは原始的な巫の拠り所としてもってこいの存在でもある。地上界の支配を成し遂げたと思った独裁者は常にこれを祀るを以て特権としたのだ。

 神の世界ばかりではなく、仏教の世界でもこれを尊しとした。
 「北斗供(ほくとぐ)」という修法がある。北斗七星を供養して息災、延命を祈るというのだから面白いではないか!
 釈迦の説教からてんでに離れ始めた仏教諸宗派は、或いは「大日如来」を作ったりし、独立した我を主張しはじめたのはよいが、その細工の果てが台密の最大秘法としてのこれだ!
 ただ勿論のこと、本尊ではなく“妙見菩薩”と呼び、夜叉の如き形象して図示しこれを“北斗曼荼羅”に作った。
 中国に古くから有る北辰(太一)信仰と仏教と結びついたものなのだ。

 北極星を意味する別の言葉である「北辰」と言えば、剣術の神様“千葉周作成政”が開祖の“北辰一刀流”が頭に浮かぶ。
 父親から受け継いだ“北辰夢想流”と、その後江戸に出て修行した“小野派一刀流”を合わせたものである。 

 さて、取り留めのない話だけれど、それだけのことである。
 因みに、西洋では「火星」が「軍星」に宛てられれるが、ギリシャ・ローマの軍神に迄飛ぶと果てがないので終わる事にしよう。