バリん子U・エ・Uブログ

趣味、幸せ探し! 毎日、小さな幸せを見つけては、ご機嫌にハイテンションに生きているMダックスです。

生きめやも2

2015-03-31 20:46:54 | お話 ペットロス
あの子とがいた毎日は面白かったな
子どもは夢中でしていたゲームをセーブしながら呟いた。
子どもの毎日は決して退屈ではなかった。
けれど、愉快でいるためには次々とツールを出してこなければならなかった。
スマホ、コミック、DVD・・・
あの頃は違った。
飛ぶようにかけてくる毛のかたまり、いつまでも続く“持って来い”、いつの間にか始まるおにごっこ。
子どもは亡くなった愛犬が毎日、自分に数え切れないほどの楽しみを与えてくれていたことに気がついていた。

生きめやも1

2015-03-30 00:41:15 | お話 ペットロス
あの子といた毎日は幸せだったな。
女は買ったばかりのリングを指にはめて呟いた。
女の毎日は決して不幸ではなかった。
けれど、幸せでいるためには次々と新しいプレゼントを自分に与えなければならなかった。
ワンピース、おしゃれなカフェでのランチ、サンダル・・・
あの頃は違った。
優しく揺れるシッポ、膝を駆け上ってきてくれるkiss、一つの毛布にくるまって眠る穏やかな時間。
女は亡くなった愛犬が毎日、自分に数え切れないほどのプレゼントをくれていたことに気がついていた。


毎日の冒険 完成版

2015-03-28 20:09:59 | お話 ペットロス
子犬はペットショップで売れ残っていた。
人間社会のルールも、犬の社会のルールも知らない子犬だった。
女は、お腹を空かせて飛び回る子犬に、座って待って、食事をもらうことを教えた。
けれど、期待すること満足することの喜びを、女に気付かせたのは子犬だった。
不規則な勤務時間、長時間の拘束。休日出勤。女は毎日、地下鉄の連絡通路を走って帰った。子犬は女が出勤すると眠って過ごすようになった。そして、帰ってきた女を、光の粉を撒き散らすような喜びの仕草で迎えた。
犬が病気になった時も、女が失恋した時も、一人と一匹で乗り越えた。
一緒にいられる時間は長くはなかったけれど、別々に過ごす時間にも、二人の心にはお互いがいた。毎日の生活は二人で進む冒険の旅だった。


まだ赤ん坊のような子犬だった。
フードはふやかさなければ食べられなかったし、3時間以上起きていることもできなかった。
夫婦は子犬に、家と食べ物と愛情を与えた。
子犬は家の中を成長するもののエネルギーで満たし、マンションを家族が暮らす家庭にした。
毎日の散歩、休日の遠出。泊まりがけの旅行。夫婦は自由に駆け回る子犬に名前を呼ばれると駆け戻ってくること教えた。
子犬は呼べば全力で自分に向かってくる存在のいる幸福を、二人にを気付かせた。子犬はいつも自分の小さな群れを愛し、三人でならどんな所へも上機嫌ででかけた。
町並みが変わり、世紀が変わるのも、三人で見た。日々の生活は三人の冒険の旅だった。


犬は少女の寂しさを慰めるために連れてこられた。
人に良くなついた分別のある犬だった。
犬は、留守番をする少女に、優しく寄り添って、温かい心と体温を分け与えた。
少女が学校から帰るのを辛抱強く待ち、気まぐれに連れ出される散歩でも少女を守って歩いた。
少女が仲間はずれにされた時も、クラブ活動で夢中になっていた時も、犬は少女の傍らにいた。
少女は高校生になり、大学生になり社会人になった。それでも、犬が少女を愛する気持ちは変わらなかったし、少女が犬を愛する気持ちは深まるばかりだった。少女は恋をして犬と一緒に嫁いだ。
たくさんの夢を叶え、家族を増やし、二人は一緒に成長した。めまぐるしく移りゆく日々は二人の冒険の旅だった。


子犬は成犬になり、老犬になった。
そして、ある年、犬の身体は冒険に耐えられなくなった。犬はパーティから離れた。
犬は旅の仲間で、長い年月、たくさんの冒険を一緒にしてきた。
「楽しかったね! 面白かったね!」

犬と暮らした毎日の生活は冒険だった。

毎日の冒険3

2015-03-27 20:08:34 | お話 ペットロス

犬は少女の寂しさを慰めるために連れてこられた。
人に良くなついた分別のある犬だった。
犬は、留守番をする少女に、優しく寄り添って、温かい心と体温を分け与えた。
少女が学校から帰るのを辛抱強く待ち、気まぐれに連れ出される散歩でも少女を守って歩いた。
少女が仲間はずれにされた時も、クラブ活動で夢中になっていた時も、犬は少女の傍らにいた。
少女は高校生になり、大学生になり社会人になった。それでも、犬が少女を愛する気持ちは変わらなかったし、少女が犬を愛する気持ちは深まるばかりだった。少女は恋をして犬と一緒に嫁いだ。
たくさんの夢を叶え、家族を増やし、二人は一緒に成長した。めまぐるしく移りゆく日々は二人の冒険の旅だった。


毎日の冒険2

2015-03-26 20:07:11 | お話 ペットロス

まだ赤ん坊のような子犬だった。
フードはふやかさなければ食べられなかったし、3時間以上起きていることもできなかった。
夫婦は子犬に、家と食べ物と愛情を与えた。
子犬は家の中を成長するもののエネルギーで満たし、マンションを家族が暮らす家庭にした。
毎日の散歩、休日の遠出。泊まりがけの旅行。夫婦は自由に駆け回る子犬に名前を呼ばれると駆け戻ってくること教えた。
子犬は呼べば全力で自分に向かってくる存在のいる幸福を、二人にを気付かせた。子犬はいつも自分の小さな群れを愛し、三人でならどんな所へも上機嫌ででかけた。
町並みが変わり、世紀が変わるのも、三人で見た。日々の生活は三人の冒険の旅だった。


毎日の冒険1

2015-03-25 02:05:59 | お話 ペットロス
子犬はペットショップで売れ残っていた。
人間社会のルールも、犬の社会のルールも知らない子犬だった。
女は、お腹を空かせて飛び回る子犬に、座って待って、食事をもらうことを教えた。
けれど、期待すること満足することの喜びを、女に気付かせたのは子犬だった。
不規則な勤務時間、長時間の拘束。休日出勤。女は毎日、地下鉄の連絡通路を走って帰った。子犬は女が出勤すると眠って過ごすようになった。そして、帰ってきた女を、光の粉を撒き散らすような喜びの仕草で迎えた。
犬が病気になった時も、女が失恋した時も、一人と一匹で乗り越えた。
一緒にいられる時間は長くはなかったけれど、別々に過ごす時間にも、二人の心にはお互いがいた。
毎日の生活は二人で進む冒険の旅だった。



神様の約束 完成版

2015-03-24 20:47:28 | お話 ペットロス
その日、犬たちは神様の元に呼ばれた。
神様ははしゃぐ犬たちに、
命あるものはいつかは死ぬことと、
犬たちが死を考える時期に来ていることを
お教えになった。
そして、神様は犬たちに、
「お前たちはとてもいい犬だったので、ご褒美に死ぬタイミングを自分で選ばせてやろうう。」
と告げられた。


最初に口を開いたのは、まだ子犬と言ってもいいような若い犬だった。
「ぼくはまだ、大好きな家族のためにほんの少しのことしかしてあげられていません。
ぼくの家族はぼくとたくさんの時間を過ごして、たくさんのことを一緒にしていこうと思ってくれていたはずです。
だから、ぼくは、ぼくの死が家族の未来に役立つような、そんな死に方がしたいです。
ぼくはどんなに悲しくてもかまいません。家族の心に、役に立つ大切なものを残していけるときに、ぼくを死なせてください。」
「約束しよう。」
神様は若い犬の言葉を聞いて頷かれた。そして、凛々しい若犬の頭を優しくお撫でになった。


次に口を開いたのは、自信に満ちた美しい成犬だった。
「わたしはわたしの家族が大好きです。わたしの家族も、わたしのことが大好きです。
きっとわたしの家族は一分でも一秒でもわたしと長くいたいと願うはずです。
わたしはどんなに苦しくてもかまいません。家族のためにできるだけ長く家族のそばにいさせてください。」
「約束しよう。」
神様は犬の言葉を聞いて頷かれた。そして、辛い覚悟を決めた強く美しい犬を優しく抱きしめられた。


最後に口を開いたのは、白髪は交じっているものの、大切にされていることが一目でわかる素晴らしい毛並みの老犬だった。
「ぼくは家族と長い年月を楽しく幸福に過ごしてきました。
家族にとって、ぼくはかけがえのない存在です。だから、ぼくを亡くした後の家族が心配です。
ぼくのことはどうでもかまいません。家族の悲しみが一番和らぐ死をぼくにお与えください。」
「約束しよう。」
神様は老犬の言葉を聞いて頷かれた。そして、優しく賢い老犬の顔に涙に濡れた頬をお寄せになった。


神様がどんな犬をお呼びになっても、犬たちの願いは
"大切な家族が幸せでいられますように。"
いつもただそれだけだった。

詐欺師と愛犬家 完成版

2015-03-17 20:59:51 | お話 ペットロス
あまりいいアイデアには思えなかったけれど、詐欺師はお腹が空いていた。
まぁ、500円くらいなら募金代わりにくれる人もいるだろう。相手が怒ればしゃれで通せばいい。
そう考えて、詐欺師は準備を始めた。準備と言っても、公園で遊ぶ犬の声を録音するだけだった。


最初のかもは、年老いた愛犬を抱いて、いつも公園に来ていた初老の男だった。
「500円くださるのなら、亡くなったご愛犬の声を聞かせてあげましょう。」
詐欺師は一人でぽつんと座っている男に声をかけた。
音声の再生が終わると、男は財布から1万円札を出して、詐欺師に渡し、黙って立ち去って行った。
詐欺師は唖然とした。


二人目のかもは、交通事故で愛犬を亡くし、新しい犬を飼ったばかりの女子高生だった。
「500円くれたら、亡くなった愛犬の声を聞かせてあげるよ。」
詐欺師は新しい犬と弟が遊ぶのをぼんやり見ている女子高生に声をかけた。
音声の再生が終わると、女子高生は財布からありったけのお金を出して、詐欺師に渡し、新しい犬と弟のもとへ走って行った。
詐欺師は唖然とした。


三人目のかもは、いつもにこにこ笑ながら愛犬と公園を散歩していた女だった。
女の愛犬が病気で亡くなったことは、公園の噂で聞いていた。
「亡くなったご愛犬の声を聞かせてあげましょう。500円です。」
詐欺師は買い物袋を提げ、足速に公園を横切る女を呼び止めた。
音声の再生が終わると、女は財布から1万円札を出して、詐欺師に渡し、黙って立ち去って行った。
詐欺師は何となくそうなる気がしていた。そうなる気はしていたけれど、やはり薄気味悪かった。そこで、この仕事は辞めることにした。



もちろん男には、詐欺師に聞かされた犬の声が、自分の愛犬の声ではないことはわかった。
でも、だからこそ、男は気が付いた。
そうだ。愛しいあの子は犬だったんだ。
ヒトより短い寿命を精一杯生きたんだ。


もちろん女子高生には、詐欺師に聞かされた犬の声が、自分の愛犬の声ではないことはわかった。
でも、だからこそ、女子高生は気が付いた。
そうだ。愛しいあの子は犬だったんだ。
いつもどんな失敗も許してくれる。



もちろん女には、詐欺師に聞かされた犬の声が、自分の愛犬の声ではないことはわかった。
でも、だからこそ、女は気が付いた。
そうだ。愛しいあの子は犬だったんだ。
通じ合っていたのは、言葉じゃなくて心だった。



三人の愛犬家達は、見失っていた愛犬の本当の姿を取り戻した。