バリん子U・エ・Uブログ

趣味、幸せ探し! 毎日、小さな幸せを見つけては、ご機嫌にハイテンションに生きているMダックスです。

天国dog2 後半 

2019-12-18 23:51:33 | お話 ペットロス
「食べようか。」「食べようよ。」
 おいしいものを食べると、元気が出ます。どうすればいいのかわからなかったので、とにかく、二人はバリちゃんが捕まえたカプセルを食べることにしました。今日のカプセルはイチゴとマンゴーの味がします。
 パパのお手紙を包んできたのでほんのりとパパの匂いもします。目をつぶっていただいていると、パパといるみたいです。
 お家にいた頃、パパは自分のデザートを手にのっけて、よくバリちゃんに分けてくれました。
「パパぁ、助けて。バリ、普通のバリに戻りたい!」
 バリちゃんは心の中でパパにお願いしました。
「バリちゃん、おてて治ってる!」
 シーザーくんが叫びました。
 バリちゃんも急いで目を開けてみました。
ミニチュアダックスのちびっ黒いバリちゃんの手です。裏返してみると、ちゃんと肉球もついています。
「良かったね。」
 シーザーくんがにこにこして言いました。
「うん。バリ、泣いちゃうかと思った。」
 バリちゃんもにこにこして答えました。
「バリ、おててが長くて、大っきかったらいいのにって、いつも思ってたけど・・・・アッ⁉︎」
「どうしたの、バリちゃん?」
 お話の途中でバリちゃんが叫びました。
「シー兄ちゃん、見ててね。」
 シーザーくんが見ていると、バリちゃんの前脚がみよーんと伸びて、先には人間の指がつきました。シーザーくんがびっくりしている間に、バリちゃんの前脚はどんどん太くなって手の先には鋭い爪が生えて来ました。
「バリ、わかった!」
 すっかり驚いて、お尻尾を丸めて怯えているシーザーくんの周りを、いつのまにかウサギの足になったバリちゃんがぴょんぴょん跳ね回ります。
 シーザーくんは怖くてぶるぶる震えています。
「あのね、ここは天国だから、何にだってなれるんだよ。」
 バリちゃんはシーザーくんを怖がらさないようにいつもの姿に戻って言いました。
「すっごくなりたいって思ったら何にだってなれるし、戻りたい!って思ったら、もとに戻れるよ。」
シーザーくんはびっくりして目を丸くしています。
「バリ、もこもこになるから見ててね。」
 あっと言う間に毛皮がもこもこしてきて、バリちゃんは羊さんみたいになりました。
「ぼくにもできるかな。」
「できるよ。シー兄ちゃんはどうしたいの?」
「色付き!」
 みるみるうちにシーザーくんの黒いダルメシアン模様がレインボーカラーに変わりました。
「すっごい。バリもいいこと考えた!」
 バリちゃんは緑地公園で見た馬に身体を変えて走り出しました。
 バリちゃんは地上にいた頃、たくさんお出かけをして、いろいろな動物と会っていました。パパのお膝でよくテレビも見ていました。だから、とても物知りです。
「すごいねぇ。ぼくもなる!」
 追いかけてきたシーザーくんも、バリちゃんのまねをして馬に変身します。
「あのね。あのね。バリ、もっとすごいのも見たのよ。ヒョウって言うの。ガゼルも、インパラも一撃必殺なの。」
 バリちゃんはヒョウに姿を変えると、シーザーくんに飛び付きました。
「バリちゃん、やめてよ。」
 ふざけて飛びかかってくるバリちゃんをふりきろうとシーザーくんは足をタイヤにしました。バリちゃんはお顔をワニに変えてシーザーくんにかみつきます。シーザーくんは手をショベルカーのショベルにして応戦しました。吹っ飛ばされたバリちゃんは、恐竜の身体にドリルの腕をくっつけて反撃します。
変身した二人はきゃっきゃっ騒ぎながら走り回り、ドタバタ取っ組み合って、いつまでも遊んでいます。
天国は、ちょっと、騒々しくなりました。




バリ、バリの魂が幸せでありますように。
安らかでありますように。
もう一つの世界があるなら、いつまでもきゃっきゃと楽しく遊んでいてね。
バリ、大好き。愛してるよ、バリ。

天国dog2 前半

2019-12-15 23:32:23 | お話 ペットロス

シーザーくんとバリちゃんは仲良しです。二人は天国で出会いました。
天国ドッグの二人は、空の上のふわふわの雲の上で、いつも遊んでいます。眠るときもくっついて、二人でねんねです。
地上のパパとママからはしょっちゅう『おてまり』が届きます。おてまりはプラムや桃のような、丸い果実に似ています。きれいな色でいい匂いがします。地上から飛んでくると、ふわふわとお届け相手の周りに浮かんでいます。触ると割れて、送り主の声が聞こえてきます。おてまりは地上からの、気持ちのお手紙です。想いを包んできた果物のようなカプセルは食べるととてもおいしいです。おてまりが来たら二人で聞いて、カプセルは分け合っていただきます。気をつけないといけないのは、割ったおてまりはとても軽くて、すぐにお空の上の上に飛んでいってしまうことです。
 今日はシーザーくんにおてまりが来ました。
 シーザーくんが前脚でコツっと割ると、優しい明るい声と気持ちが広がりました。シーザーくんはうっとりとお手紙に聞き入っています。
 バリちゃんはいつもシーザーくんがしてくれるように、カプセルを捕まえることにしました。シーザーくんにゆっくりお手紙を楽しませてあげたかったのです。
 バリちゃんはシーザーくんがするように、ひらりと宙に舞いあがりました。
 でも、バリちゃんはシーザーくんより、ずっと小さくて、おてても短いのです。カプセルはバリちゃんの手を掠めて、空に昇って行ってしまいます。
「待ってぇ!」
 バリちゃんは最後まであきらめず、思いっ切り手を伸ばして何とかカプセルを捕まえました。
「バリのお手てヘンテコになっちゃった。」
着地したバリちゃんはびっくりしました。
バリちゃんの前脚は長くなり、先はには人間の指がついています。
「シー兄ちゃん、怖いよう。」
バリちゃんはどうすればいいのかわかりません。気味が悪くて泣きそうです。
「バリちゃん、バリちゃん、」
シーザーくんもどうしてあげたらいいのかわかりません。バリちゃんがかわいそうで泣きそうです。
 二人はすっかり困ってしまいました。




いくら言葉を尽くしても、たった10秒のバリの姿さえ正確に記録できない。
いつも強すぎたり、弱すぎたり、誇張しすぎていたり・・・・。
お話の中のバリはもちろん、日記の中のバリ以上に、本物じゃない。それでも、バリの面影はそこにあって、何よりも、拙いお話の中ででも、バリが幸せそうにしているのが嬉しい。
って、ここで終わったら、幸せですらないな(-_-;)\U(・_・U オイオイ
たとえ読んでくれる人がいなくても、後日、続きをアップしておきます。

天国dog1

2019-12-03 02:23:56 | お話 ペットロス

「ぼく、バリちゃん。仲良くしてもらいに来ました。」
 ひとりかけっこのあと、ご飯を食べて、のんびりしていたシーザーくんのところに、黒い小さな犬がやってきました。
 ここは天国です。お空の雲の中にあります。
「うん、仲良くしよう。ぼく、シーザー。」
「バリ、知ってる。」
 バリちゃんは、ププッと笑うと、ちょっぴりいばって言いました。
「シー兄ちゃんはパパの一匹目の犬でダルメシアン。バリは二匹目の犬でミニチュアダックスフントなんだよ。アッ、おてまりだ!」
 シーザーくんとバリちゃんの間に、ゆで卵みたいな木の実みたいなきれいなものがふわふわと飛んできました。
 バリちゃんが前脚で叩くと、おてまりぱかっと割れて、優しい声と気持ちが流れてきました。
「バリ、天国に着いた? シー兄ちゃんと会えた?」
「会えたよーぉ‼︎」
 バリちゃんは雲の切れ間まで走って行くと、地上に向かって、大声で叫びました。
「それって、食べ物じゃなかったの?」
 バリちゃんが戻ってくると、シーザーくんは驚いて聞きました。
「これって、食べられるの?」
 バリちゃんも驚いています。
 ちょうどそのとき、二人の前にまたおてまりが飛んできました。
「シーザー、バリを頼むよ。」
 シーザーくんがバリちゃんのまねをして前脚でおてまりを叩くと、懐かしいお兄ちゃんの声が聞こえてきました。
 シーザーくんはびっくりしました。
 バリちゃんはシーザーくんのまねをしておてまりをぱくりと食べてみて、あまりのおいしさにびっくりしました。
「びっくりしたね。」「びっくりしたね。」
 ふたりは顔を見合わせました。
 そのとき、また、ふわふわとバリちゃんの前におてまりが近づいてきました。
 バリちゃんは食いしん坊さんです。おいしいものが大好きです。でも、バリちゃんはパパとママのことも大好きです。食べてしまったら、パパやママがお手紙に何を書いてくれたのかわかりません。
 おいしくいただきたいけれど、お手紙も読みたい。お手紙は読みたいけれど、おいしいものは食べたい。バリちゃんがうんうん悩んでいる間、おてまりはバリちゃんの周りをふわふわ飛んでいます。
「シーザーと仲良くするんだよ。」
 食べたい気持ちをがまんして、えい、と割ったおてまりからパパの声が聞こえてきました。
 二つに割れて軽くなったカプセルは、すーと空に上っていきます。と、その時、シーザーくんがひらりと飛び上がり、長い手を伸ばしてカプセルを捕まえてくれました。
「はい、バリちゃん、どうぞ。」
 シーザーくんがバリちゃんの前にカプセルを置いてくれました。
 バリちゃんは前脚で押さえたカプセルを一個受け取って言いました。
「シー兄ちゃん、ありがとう。ひとつどうぞ。」
 二人でカプセルを分けて食べました。今度のカプセルは、バリちゃんとパパが大好きなマンゴーに似た味でした。あまりに美味しくて、食べ終わった後で思わず足下の雲を掘り掘りしてしまいました。
 二人は雲の隙間から顔を出して、地上に向かって叫びました。
「シー兄ちゃんは優しいよ−!」「バリちゃんは優しいよー!」
「もう仲良しだよ!!」
 二人は顔を見合わせて笑うと、何だかじっそしていられないくらい楽しい気持ちになって、かけっこを始めました。




天国があって、バリが笑っていたらいいな。そばにお友だちがいてくれたらいいな。楽しく遊んでくれていたらいいな。
そんな風に願わずにはいられない、わたし自身と家族1のために作ったお話です。
しかし、酔っ払ってお話をリクエストした家族1は、しらふになるとそんなことは忘れ去っていて、お話を読んでくれない。おいおい(-_-;)






神様のお庭の犬 完成版

2015-07-29 20:23:03 | お話 ペットロス

バラのお庭に住んでいる犬

バラのお庭に住んでいる犬は甘えん坊。
お兄ちゃんとぼくは本当に仲良しだったの。お兄ちゃんはご病気でつらくなるとすごくイライラしたね。
お姉ちゃんははらはらして、ぼくをお兄ちゃんから遠ざけて、遊んでくれたでしょ。時には怒って、ぼくをかばってくれた。

でも、ぼくは分かっていたんだ。
だから、お兄ちゃんがご病気のときもへっちゃらだったの。
ねぇ、ちゃんとぼくはご病気でつらくなっていたお兄ちゃんを守っていたでしょ。
ぼくはお兄ちゃんに抱っこしてってしょっちゅうお願いしたね。
おうちでも、お出かけのときも、抱っこしてってすぐにお願いしたね。
いつもご病気じゃないときのお兄ちゃんは“甘えん坊だな”って、言って、ぼくをだっこしてねんねをさせてくれたよ。

あのね、強い群の仲間はそうやってくるくる役目を変えるって、ぼく、知っていたんだ。
ぼく達、強いいい群れだね。



エニシダのお庭に住んでいる犬

エニシダのお庭に住んでいる犬

エニシダのお庭に住んでいる犬は怒りん坊。
強いママは僕の味方。抱っこされるの好き。ママと一緒ならどんな大きな犬とだって戦える。
いっぱいいろんなものに吠えかかってやったね。

でも、一番、おっきな敵だったのは、ぼくのご病気。
パパとママが毎週、病院に連れて行ってくれて、毎日お薬を飲ませてくれた。
お薬は嫌な味で、大嫌いだったけど、だいたいいつも頑張って飲んだよ。
発作のときは怖かった。いつもパパかママがついていてくれたから勇気を出して頑張れた。
いつ起こるか分からない発作に十年以上ずっとずっと、お出かけもほとんどせずについていてくれて、ありがとう。
ぼく、怒りん坊でごめんなさい。
ずっと一緒にいてくれてありがとう。いつも好きでいてくれてありがとう。




海のお庭に住んでいる犬

海のお庭に住んでいる犬はいたずら坊主。
お姉ちゃんの声は遊びの時間の始まりの合図。
ご飯もお手入れも、お散歩の後のあんよ洗いも、おトイレだって全部が楽しいゲームだった。
テーブルの下に落っこちたものを拾って渡す。他の部屋にいる家族にお届け物をする。一緒にお洗濯ものをたたむ。
ぼくは一生懸命お姉ちゃんがどうして欲しいって思っているか考えた。ぼくが分かって、うまくできたとき、すごくすごく喜んでくれたね。いい気分だったぁ。
二人で開発した遊びを披露したら、みんな驚いて、褒めてくれたね。愉快、愉快。
すっごくたまにだけど、どうしても上手く行かないで、ぼくが拗ねちゃっても笑っていてくれたの、嬉しかった。
そして、諦めないで、別の日にまた挑戦させてくれて、成功させてくれたの嬉しかった。
ぼくが考えたイタズラに喜んでくれて、嬉しかった。楽しかった。

お姉ちゃん、ぼくら子犬みたいに、いつもはしゃいで笑い転げたね。
たくさんお話ししたね。おままごとのような毎日だった。
毎日、毎日、楽しかったね。



神様のお庭の犬

今ではみんな神様のお庭の犬。
神様や天使に愛されてあまやかされて、元気に遊び、はしゃぎ回ったり、お昼寝をしたりしている。
神様のお庭では、犬も他の動物も、人間達も、みんな、こんな素敵な場所はないって、幸せそうにくつろいでいる。

柔らかいいい匂いの風に吹かれて、神様のお庭で犬たちが見る夢は
愛されてあまやかされて、元気に遊び、はしゃぎ回ったり、お昼寝をしたりした、幸せで素敵な所。
バラのお庭があるお家、エニシダのお庭があるお家、海の見えるお庭があるお家。

ねぇ、神様、ぼくが地上で住んでいたのも、神様のお庭だったよ。

神様のお庭の犬4

2015-07-28 20:08:00 | お話 ペットロス
神様のお庭の犬

今ではみんな神様のお庭の犬。
神様や天使に愛されてあまやかされて、元気に遊び、はしゃぎ回ったり、お昼寝をしたりしている。
神様のお庭では、犬も他の動物も、人間達も、みんな、こんな素敵な場所はないって、幸せそうにくつろいでいる。

柔らかいいい匂いの風に吹かれて、神様のお庭で犬たちが見る夢は
愛されてあまやかされて、元気に遊び、はしゃぎ回ったり、お昼寝をしたりした、幸せで素敵な所。
バラのお庭があるお家、エニシダのお庭があるお家、海の見えるお庭があるお家。

ねぇ、神様、ぼくが地上で住んでいたのも、神様のお庭だったよ。

海のお庭に住んでいる犬 (神様のお庭の犬 3)

2015-07-27 20:03:05 | お話 ペットロス
海のお庭に住んでいる犬

海のお庭に住んでいる犬はいたずら坊主。
お姉ちゃんの声は遊びの時間の始まりの合図。
ご飯もお手入れも、お散歩の後のあんよ洗いも、おトイレだって全部が楽しいゲームだった。
テーブルの下に落っこちたものを拾って渡す。他の部屋にいる家族にお届け物をする。一緒にお洗濯ものをたたむ。
ぼくは一生懸命お姉ちゃんがどうして欲しいって思っているか考えた。ぼくが分かって、うまくできたとき、すごくすごく喜んでくれたね。いい気分だったぁ。
二人で開発した遊びを披露したら、みんな驚いて、褒めてくれたね。愉快、愉快。
すっごくたまにだけど、どうしても上手く行かないで、ぼくが拗ねちゃっても笑っていてくれたの、嬉しかった。
そして、諦めないで、別の日にまた挑戦させてくれて、成功させてくれたの嬉しかった。
ぼくが考えたイタズラに喜んでくれて、嬉しかった。楽しかった。

お姉ちゃん、ぼくら子犬みたいに、いつもはしゃいで笑い転げたね。
たくさんお話ししたね。おままごとのような毎日だった。
毎日、毎日、楽しかったね。

エニシダのお庭に住んでいる犬 (神様のお庭の犬 2)

2015-07-26 20:56:23 | お話 ペットロス
エニシダのお庭に住んでいる犬

エニシダのお庭に住んでいる犬は怒りん坊。
強いママは僕の味方。抱っこされるの好き。ママと一緒ならどんな大きな犬とだって戦える。
いっぱいいろんなものに吠えかかってやったね。

でも、一番、おっきな敵だったのは、ぼくのご病気。
パパとママが毎週、病院に連れて行ってくれて、毎日お薬を飲ませてくれた。
お薬は嫌な味で、大嫌いだったけど、だいたいいつも頑張って飲んだよ。
発作のときは怖かった。いつもパパかママがついていてくれたから勇気を出して頑張れた。
いつ起こるか分からない発作に十年以上ずっとずっと、お出かけもほとんどせずについていてくれて、ありがとう。
ぼく、怒りん坊でごめんなさい。
ずっと一緒にいてくれてありがとう。いつも好きでいてくれてありがとう。


バラのお庭に住んでいる犬(神様のお庭の犬 1)

2015-07-25 00:49:00 | お話 ペットロス
バラのお庭に住んでいる犬

バラのお庭に住んでいる犬は甘えん坊。
お兄ちゃんとぼくは本当に仲良しだったの。お兄ちゃんはご病気でつらくなるとすごくイライラしたね。
お姉ちゃんははらはらして、ぼくをお兄ちゃんから遠ざけて、遊んでくれたでしょ。時には怒って、ぼくをかばってくれた。

でも、ぼくは分かっていたんだ。
だから、お兄ちゃんがご病気のときもへっちゃらだったの。
ねぇ、ちゃんとぼくはご病気でつらくなっていたお兄ちゃんを守っていたでしょ。
ぼくはお兄ちゃんに抱っこしてってしょっちゅうお願いしたね。
おうちでも、お出かけのときも、抱っこしてってすぐにお願いしたね。
いつもご病気じゃないときのお兄ちゃんは“甘えん坊だな”って、言って、ぼくをだっこしてねんねをさせてくれたよ。

あのね、強い群の仲間はそうやってくるくる役目を変えるって、ぼく、知っていたんだ。
ぼく達、強いいい群れだね。




涙の海 完成版

2015-05-26 20:55:59 | お話 ペットロス
女の子の犬が亡くなりました。
女の子と犬はとても仲良しでした。
滑り台が大好きな犬のために、女の子は犬を抱いて、公園に行くたびに滑り台を滑りました。
抱きしめた温かい体。顔をくすぐる柔らかい毛。風を切って滑る爽快感。勢い余ってお尻から砂場に落ちることがあっても、女の子は決して抱きしめた犬を離しませんでした。何度も滑り台をせがむ犬に女の子も、喜んで付き合っていました。
草原を疲れて動けなくなるまで駆け回り、木陰でおやつを食べました。見上げる空。風に揺れる葉っぱの音。お花の香り。お花の根元に埋められた肥料の匂い。
犬はこの世界が大好きなようでした。
犬が死に、女の子は犬のために泣きました。
お母様が慰めてくれました。優しく抱きしめてくれました。
けれど、女の子の涙は止まりませんでした。


犬はいつも女の子に親切でした。
毎朝、目覚まし時計の鳴る3分前に、犬はぽわぽわの小さな前足で、優しく女の子の頬を叩いて起こしてくれました。
怖い番組を見た後で、びくびくしながらお風呂に入る女の子を、バスルームのドアの前で、犬はずっと待っていてくれました。
女の子が学校に行くのがいやでぐずぐずしている日は、叱るように、励ますように玄関まで誘導してくれました。
女の子は犬のいない世界で生きていける気がしませんでした。
犬が死に、女の子は自分のために泣きました。
お父様に新しい犬が欲しいと言いました。
お父様はお前が欲しいのは新しい犬ではなく、お前の犬だ。あの犬が帰ってくることはない。新しいお前の犬と出会えるときまでをお待ち。と、言いました。
つらくて、さみしくて女の子の涙は止まりませんでした。

泣いてばかりいる女の子を心配した両親は、女の子を海に連れて行きました。
どこに行きたいかと聞くと、海に行きたいといつも答える女の子でした。
だから、きっと、海に行けば元気を取り戻すと思ったのです。
けれど、女の子が好きだったのは、"海に行くこと"ではなく、"犬と海に行くこと"でした。犬が一緒でなければ、意味はありません。
女の子は海岸を歩き回りました。最初はつきあってくれていた両親も、旅館に帰ってしまいました。
「黒い小さな犬を見かけなかった?」
女の子は岩場で釣りをしていた男の子に声をかけました。
「迷子になったの?」
「死んじゃったの。」
男の子は驚いて女の子を見つめました。
「君たちを知っている。いつも、すごく楽しそうだった。」
「すごく楽しかったわ。」
「犬もそう思ってるね。」
女の子はこくんと頷くと、男の子の隣に座りました。
「あの子は海が大好きだったから、ここに来たら会えるかもしれないって思ったの。幽霊でもいいから、会いたいの。」
「じいちゃんは漁師だった。」
男の子は女の子から目を逸らしました。
「じいちゃんは海が大好きで、海で死んだ。」
男の子は海を見つめながら、ゆっくりと話します。
「1年間、毎日、来ているけど、じいちゃんにもじいちゃんの幽霊にも会ったことはない。」
「死んでしまったら、もう、会えないの?」
女の子は声をあげて泣き出しました。
「死んでしまったら、もう、会えないよ。」
男の子もこらえきれなくなって、泣き出してしまいました。
二人の子どもは一緒に声をあげて泣きました。
死んでしまったらもう会えないから、生きている意味があったのだと、男の子は気付きました。
もう会えなくなるところに、死ぬ意味があるのだと、女の子は気付きました。
二人の子どもは、あの頃と同じようには、大切な相手と会うことはできないのだと、初めて了解しました。
二人の涙はいつまでも止まりませんでした。

涙の海3

2015-05-25 20:55:10 | お話 ペットロス
泣いてばかりいる女の子を心配した両親は、女の子を海に連れて行きました。
どこに行きたいかと聞くと、海に行きたいといつも答える女の子でした。
だから、きっと、海に行けば元気を取り戻すと思ったのです。
けれど、女の子が好きだったのは、"海に行くこと"ではなく、"犬と海に行くこと"でした。犬が一緒でなければ、意味はありません。
女の子は海岸を歩き回りました。最初はつきあってくれていた両親も、旅館に帰ってしまいました。
「黒い小さな犬を見かけなかった?」
女の子は岩場で釣りをしていた男の子に声をかけました。
「迷子になったの?」
「死んじゃったの。」
男の子は驚いて女の子を見つめました。
「君たちを知っている。いつも、すごく楽しそうだった。」
「すごく楽しかったわ。」
「犬もそう思ってるね。」
女の子はこくんと頷くと、男の子の隣に座りました。
「あの子は海が大好きだったから、ここに来たら会えるかもしれないって思ったの。幽霊でもいいから、会いたいの。」
「じいちゃんは漁師だった。」
男の子は女の子から目を逸らしました。
「じいちゃんは海が大好きで、海で死んだ。」
男の子は海を見つめながら、ゆっくりと話します。
「1年間、毎日、来ているけど、じいちゃんにもじいちゃんの幽霊にも会ったことはない。」
「死んでしまったら、もう、会えないの?」
女の子は声をあげて泣き出しました。
「死んでしまったら、もう、会えないよ。」
男の子もこらえきれなくなって、泣き出してしまいました。
二人の子どもは一緒に声をあげて泣きました。
死んでしまったらもう会えないから、生きている意味があったのだと、男の子は気付きました。
もう会えなくなるところに、死ぬ意味があるのだと、女の子は気付きました。
二人の子どもは、あの頃と同じようには、大切な相手と会うことはできないのだと、初めて了解しました。
二人の涙はいつまでも止まりませんでした。