バリん子U・エ・Uブログ

趣味、幸せ探し! 毎日、小さな幸せを見つけては、ご機嫌にハイテンションに生きているMダックスです。

理想の犬 完成版

2015-03-09 20:29:58 | お話 ペットロス
愛犬を見送っていくつもの年が流れた。
少年だった息子は青年になり、家を出て、ある年のお正月に婚約者を連れて戻ってきた。

「まぁ、うちの子によく似ているわ。こんな犬と一緒に暮らしていたのよ。」
オオカミのような犬の写った年賀状を見て、父親と息子は大笑いした。
「笑うけど、あの子はいつも私を守ってくれたのよ。
お散歩の途中で、横付けした車から知らない人に話しかけられたとき、あの子は間に入って吠えかかってくれたのよ。」
父親と息子は、確かにそんなところのある犬だったと納得した。

「でも、あいつに似てるのは、こっちの犬だな。」
たよりない子犬の写った年賀状を見て、母親と息子は大笑いした。
「笑うけど、あいつは恐がりの甘えん坊だったぞ。
眠くなると、子どものように前足を差し出して抱かれにきたじゃないか。」
母親と息子は、確かにそんなところのある犬だったと納得した。

「一番似てるのは、あいつをモデルに描いたぼくの年賀状だよ。」
人面犬のような犬のイラスト年賀状を見て、父親と母親は大笑いした。
「笑うけど、あいつはぼくの弟で親友だったんだ。
毎日いろんなことを話し合って、ケンカもして、いたずらも一緒にしたんだ。」
父親と母親は、確かにそんなふうに育った二人だったと納得した。

婚約者は三枚のはがきをじっくり見つめて、頷いた。
「三匹ともそっくりです。」
三匹の犬はみんな、誇らしげにしっぽを立て、真っ直ぐに飼い主を見つめていた。