「ぼく、バリちゃん。仲良くしてもらいに来ました。」
ひとりかけっこのあと、ご飯を食べて、のんびりしていたシーザーくんのところに、黒い小さな犬がやってきました。
ここは天国です。お空の雲の中にあります。
「うん、仲良くしよう。ぼく、シーザー。」
「バリ、知ってる。」
バリちゃんは、ププッと笑うと、ちょっぴりいばって言いました。
「シー兄ちゃんはパパの一匹目の犬でダルメシアン。バリは二匹目の犬でミニチュアダックスフントなんだよ。アッ、おてまりだ!」
シーザーくんとバリちゃんの間に、ゆで卵みたいな木の実みたいなきれいなものがふわふわと飛んできました。
バリちゃんが前脚で叩くと、おてまりぱかっと割れて、優しい声と気持ちが流れてきました。
「バリ、天国に着いた? シー兄ちゃんと会えた?」
「会えたよーぉ‼︎」
バリちゃんは雲の切れ間まで走って行くと、地上に向かって、大声で叫びました。
「それって、食べ物じゃなかったの?」
バリちゃんが戻ってくると、シーザーくんは驚いて聞きました。
「これって、食べられるの?」
バリちゃんも驚いています。
ちょうどそのとき、二人の前にまたおてまりが飛んできました。
「シーザー、バリを頼むよ。」
シーザーくんがバリちゃんのまねをして前脚でおてまりを叩くと、懐かしいお兄ちゃんの声が聞こえてきました。
シーザーくんはびっくりしました。
バリちゃんはシーザーくんのまねをしておてまりをぱくりと食べてみて、あまりのおいしさにびっくりしました。
「びっくりしたね。」「びっくりしたね。」
ふたりは顔を見合わせました。
そのとき、また、ふわふわとバリちゃんの前におてまりが近づいてきました。
バリちゃんは食いしん坊さんです。おいしいものが大好きです。でも、バリちゃんはパパとママのことも大好きです。食べてしまったら、パパやママがお手紙に何を書いてくれたのかわかりません。
おいしくいただきたいけれど、お手紙も読みたい。お手紙は読みたいけれど、おいしいものは食べたい。バリちゃんがうんうん悩んでいる間、おてまりはバリちゃんの周りをふわふわ飛んでいます。
「シーザーと仲良くするんだよ。」
食べたい気持ちをがまんして、えい、と割ったおてまりからパパの声が聞こえてきました。
二つに割れて軽くなったカプセルは、すーと空に上っていきます。と、その時、シーザーくんがひらりと飛び上がり、長い手を伸ばしてカプセルを捕まえてくれました。
「はい、バリちゃん、どうぞ。」
シーザーくんがバリちゃんの前にカプセルを置いてくれました。
バリちゃんは前脚で押さえたカプセルを一個受け取って言いました。
「シー兄ちゃん、ありがとう。ひとつどうぞ。」
二人でカプセルを分けて食べました。今度のカプセルは、バリちゃんとパパが大好きなマンゴーに似た味でした。あまりに美味しくて、食べ終わった後で思わず足下の雲を掘り掘りしてしまいました。
二人は雲の隙間から顔を出して、地上に向かって叫びました。
「シー兄ちゃんは優しいよ−!」「バリちゃんは優しいよー!」
「もう仲良しだよ!!」
二人は顔を見合わせて笑うと、何だかじっそしていられないくらい楽しい気持ちになって、かけっこを始めました。
天国があって、バリが笑っていたらいいな。そばにお友だちがいてくれたらいいな。楽しく遊んでくれていたらいいな。
そんな風に願わずにはいられない、わたし自身と家族1のために作ったお話です。
しかし、酔っ払ってお話をリクエストした家族1は、しらふになるとそんなことは忘れ去っていて、お話を読んでくれない。おいおい(-_-;)
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