陸軍良識派の研究

2009-09-02 | history
を読んでいる。保坂正康著,光人社,1996年。

戦争中日本を支配したのは陸軍。その中核であった参謀本部(大本営陸軍部)のことがよくわかる。そこをさらに支配していた東条英機とその人脈(服部卓四郎や辻政信,牟田口廉也たち)の「硬直」ぶりは周知のことだが,その中にあって「良識」を示した人々がいた。その系譜が興味深く述べられている。

とくに興味深かったのは,情報参謀の堀栄三。その時点では若く,参謀本部の中で力量を十分発揮できなかったのは,たしかに残念。海戦の戦果報告(情報)を吟味することなく,そのまま発表し,その「大戦果」を真に受けて,部隊が作戦行動をして,将兵を窮地に陥らせたそうだが,あきれてものも言えない。堀参謀はアメリカ軍の作戦を分析,次の手を的中させていった。アメリカ軍が,日本軍の暗号を解読している可能性があることを,駐日ドイツ大使館の駐在武官から示唆されていたとのこと。また,太平洋は守るに損で,攻めるに得な戦場であることを大本営は知らなかった。制空権がポイントで,それさえあれば,攻めるほうは,ターゲットを自由に選べる。必要ないところはスルーすればよい。それにより数万の陸上戦力を実質無力化できる。驚くことに,大本営はこのことに気づいていなかった。「ルーズベルトは,日本が真珠湾奇襲攻撃したとき喜んだのは,単に対日戦争の名分が出来たというだけでなく,太平洋で攻める側に立てることを喜んだのに違いない」と語ったそうだが,その通りだろう。相手が嫌がる戦略を立て戦争すべきだったのに,スマートでない大本営は土地と海域に執着した。このことは中国大陸についても言えそうだ。

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