「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか

2010-03-17 | history
J.B.ウッド著,ワック,2009年刊を読む(旅先で知り合った方からお借りした。多謝)。

戦線拡大をせず,守備的に戦い,フィリピン(南方資源確保)とマリアナ諸島(サイパン等,東京爆撃阻止)を守り,潜水艦を有効に使い,米艦隊ではなく輸送船をねらい,艦隊決戦を避け,敵部隊出動に対し臨機応変に対応する温存艦隊(fleet in being)を維持すれば,あのような惨敗はなかった,少なくとも1年以上敗戦を遅らせることができた,その間にはソ連社会主義の拡大阻止という観点から有利な敗戦に導けた可能性がかなりある,という説。

硫黄島で栗林さんがとった用意周到で合理的な作戦を西太平洋全域で用いればよかった,という説として読んだ。日清,日露戦争での日本海軍の輝かしい戦勝があだになった側面もあると思う。日本海海戦の再現を連合艦隊は求められていただろう。しかし,あのときと事情が違う。あのときはロシア艦隊を全滅させる戦略的な必要があった。太平洋戦争ではそのような必要はなかった。冒険する必要はなかったのだ。たしかに,艦隊を温存させておくだけで,米軍には大きな脅威になっただろう。米軍の最弱点は兵員等の輸送で,それをつくのにたしかに潜水艦は有効だった。東京を一度爆撃されたくらいで,ミッドウェーで虎の子の空母群を危険にさらした山本長官のミスが大きい。山本さんは二度冒険した。一度に限るべきだった。信長でさえ,冒険は桶狭間一度きりだった。彼は冒険のリスクを知っていたのだ。ミッドウェー作戦には大方が反対していたのに,認められなければ辞任すると山本さんが言ったので,強行ということになった,という話は知らなかった。

拡大路線が破綻したというのはトヨタも同じ。合理的で冷静な計算,実行が肝要。企業戦略を考える上で参考になるだろう。

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