
更衣室に入っていくと、ピンクのドレスを着こんでいるルミちゃんがいた。
「ちょっとキツイかも。うん、でも大丈夫だわ。伸びる布だから、ちょっと痩せたらバッチシよね」などと言いながら、ピンクのドレスを脱ぎ、今度は黒のドレスを着て見ている。
傍らに、ドレスの持ち主のツバキさんが居て、次々と大きなバッグの中からドレスを出しては、ルミちゃんに着せたり脱がしたりしていた。2個の大きなバッグには、石付きのデモ用ドレスや、普段使いのドレスなどが10着ほど入っていた。
ツバキさんは、これまで何度も盛大なパーティーでデモンストレーションを踊っている。スラリとした肢体は、贅肉はなく、長い髪はサラサラに靡かせている。レッスンをしている姿を見るだけでも羨ましいほどのステキさである。ルミちゃんの方は、もっと背が高く、競技選手をしているから、ダイナミックな踊り方で、こちらも、チビの私には羨ましいばかりの女性なのだ。
更衣室でのあれこれは、どう収まったのか私は知らない。
夕刻、心地よい踊り疲れと共に家路につこうと駅に向かっていた。ルミちゃんが大股で私を追い越しながら、一緒に帰りましょうと言う。目いっぱい膨らんだ大きなバッグを二つ抱えている。ツバキさんから頂いた10着ほどのドレスが入っているそうだ。
「お金は要らないと言っているので、銀座のラッタッタ・カフェで美味しいお食事でも御馳走しようと思っているのよ」と言う。
「銀座かぁ」私は呟いてしまった。月に数回上京して踊っていても、銀座まで移動して食事をしようと思ったことは無い。そういえば誘われたこともあったけれど。
自宅の最寄り駅に着くと、何故かホッとした。
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「と・ある日のこと」をお送りします。
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