4月5日の午後5時半過ぎ、出先から帰ってきた私が玄関ホールに差し掛かった時、2羽の燕が慌てたように飛び去った。一羽しか見かけなかった古巣に、漸くカップルが出来たようだと嬉しくなった。
玄関ホールの昨年の古巣の下に、糞が4,5個落ちているのを見かけたのが3月の末頃。今年も燕の宿となるのかと思っていた。だが、カップルで居る様子はなく、朝確認すると糞が2,3個あるのが2日ほど続いた。大概はカップルで宿探しをし、内覧後住み着くものだと思っていた。夫にカップルになったようだと告げると、
「雛が生まれているようだよ。まだ何羽生まれたのかは分からないが、親が餌を運んできて、餌をねだる鳴き声がしているよ」と言う。「えっ? 噓でしょ?」と、私。
家主の知らないときに卵を産み、そして抱卵していたということには納得がいかない。
糞を見つけた1週間前に、直ぐに糞受けや、昨年の子燕の落下事件を踏まえて、より安全な巣の下を確保すべく、米袋を2枚重ね、その上に日よけの柔らかいネットを張り、落下しても死なないようにと設えていた。
まだこれから卵を産み、抱卵して子が誕生するのを、楽しみながら待つつもりだった。
「嘘? いつ産んで、いつ抱いていたの?」
嬉しいのと、何だか燕に出し抜かれたような気分が入り混じった。が、まずは、おめでたい話である。無事の巣立ちを祈る。
と、ここまでは4月5日の話。だが、家人の偽情報が一転、「どうも、子燕は居なさそう」と、言う。「「えっ? 噓でしょ?」と、私。
翌朝、早朝散歩に行く前に、玄関ホールの真ん中の照明器具に造られた燕の巣を見上げた。昨年の子育てで崩れかかっていた巣が、黒々とした土で補修されている。昨年より大きくてしっかりとした造りに見えた。日中もカップルはせっせと補修工事を進めている。
巣が出来上がると、一日一個の産卵を数日続ける。昨年は二羽巣立ったが、今年は何羽になるのだろう。
すっかり偽情報に惑わされたが、改めて、燕の次世代へ繋ぐ作業は、並大抵の努力ではなく、これからも、子育てと南帰行と、様々なアクシデント含みの日々が続くのだろうと、のんびりと暮らしている今の私の平和な毎日と比べると、申し訳ないほど、有難く思えてきた。
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