紫陽花記

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別館★俳句「めいちゃところ」

★22 もしもの話 

2023-09-24 11:39:44 | 「とある日のこと」2023年度


認知症を疑い認知症外来に姑を連れて行ったと言う友人がいる。
認知症は間違いないとの診断とか。友人の姑は89歳。独り暮らし。若くに夫を亡くし息子は独立した家庭を築いている。建設会社でタイピストとして長年務めた。社長の秘書のような仕事もこなし、現役時代は充実した毎日だった様子。

戸建てを買い、定年後は趣味の民謡を近所の奥様方を相手に教えたりして、充実した過ごし方をしていた。それが数年前から、忘れ物が多くなり、民謡の生徒たちには時々訳もなくキレたりしていたらしい。特にこの頃、友人に電話してきては、意味不明なことから腹を立てて、ガシャリと電話を切ったりしていたそうだ。

認知症の疑いを感じ、ようやく認知症外来に連れて行くことが出来たそうだ。
「薬が処方されたので、少しでも穏やかになってくれればいいのだけど。それに、火の元も怖いし、一人暮らしは無理なのではないかしら? でね、近くの認知症でも入れる施設の情報を集めてみたの。どこの施設も月13万円前後の費用が掛かりそうなの。姑の年金額は女性としては良い方だと思うけど、費用と雑費を考えると、月15万円位。姑は何に使ったのか定かではないけど、それなりの預金があったらしいのに、驚くじゃない、残高は0なの。頭が痛くなっちゃった」友人は、心底困った顔をした。

 施設の利用は簡単にはいかないことに驚く。と同時に、一介のサラリーマンだった人が施設を利用することとなったら、簡単に事が運ばないかもしれない。政府の言うように年金と2000万円の預金があったとしても、長寿の時代間に合う金額ではなさそうだ。
将来に不安がある。人生100年と言っているが、長生きも辛いかもしれない。




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★21 一番の幸せ者

2023-09-17 07:38:56 | 「とある日のこと」2023年度


「私ら5人姉妹の中で私が一番の幸せ者だと思うわ」
友達Hちゃんの次姉が言ったそうだ。Hちゃんは5姉妹の4番目。姉3人と妹に囲まれて、よく言えば大人しくて我慢強い。私と似たような環境で育ち、似たような性格ながら、違うのは身長が162cmもあるところ。あまり押しが強い方でないところが、私には心地よく思えている。

「どうしてかと言えば、夫は昨年亡くなったけれど、男性の平均寿命に近かったし。肝臓ガンを患っていたが、治療の方法は無いと言われていた。そんな時、コロナに罹ってしまい、あっという間にあの世へ旅立ってしまった。お骨になって戻って来たのは、夜の7時過ぎ。78万円の請求書を持った黒いスーツ姿の役所の男性二人が付き添ってきた。夫が亡くなった気がしないわ。まだ生きていてどこかへ旅しているような感じ。それに、娘二人は遠くへは嫁がなかったし、孫も良くしてくれているしね」とHちゃんの次姉が自慢したそうだ。

5人姉妹は同じ父母から生まれながら、それぞれの暮らし方の違いがある。早くに夫君を亡くしたHちゃんの長姉。3番目の姉は生まれてすぐに亡くなったし。4番目のHちゃんは、離婚と再婚の経験者。5番目の妹はまだ独身を貫いているそうだ。

何かの書物で読んだのだが、自分が一番親に愛されていたと思うのは、どの子供も同じように思うらしい。それと同じように、自分の人生が一番幸せだと思えれば最高。一番不幸だと嘆くより遥かに良いと思う。そういう考え方からすれば、私も、辛いことが数多くあったが、今となれば、一番の幸せ者かもしれない。慎ましく多くを望まず、手に持てるだけの幸せで満足できる暮らし方。こんな幸せは他にないはずだもの。




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★20 隠しどころ

2023-09-10 07:20:34 | 「とある日のこと」2023年度


「いやぁ、ビックリしたのよ。先だって歌いに行った時、以前何度も歌った曲が出てこないの。友達に助けられながら歌ったのだけど、最期まで思いだせなかったわ。歌くらいならいいわよ。それが、大切なモノを思い出せなかったらどうしよう。ぞっとしたわよ。いよいよ認知症が始まったのかしら」
カラオケの友達Bさんが電話の向こうで言う。

「大切なモノって?」「お金」Bさんは、そう言うと、「困った、困った。どうしたらいいかしら。お父さんには見せていない通帳なんかを、仕舞って置いた場所を忘れちゃったら困る」と、焦る。

以前Bさんが語っていたのは、家庭の経済は全部取り仕切っていて、預金額は夫君には明かしていないし、通帳などは夫君に分からない所へ全部ガッチリと隠していると言っていた。我が夫婦とは真逆で、私は夫の預金額はもとより、どこの金融機関へ預けているかも知らない。自分はどんぶり勘定しかできないし、いずれ困るのは目に見えている。

「だったら、半分ぐらい夫君に見せておけばいいのでは」と言う私の提案に、「あら、半分? 通帳を分けるしかないわね。いや、ダメ」「じゃあ、金庫を買えば」「金庫はダメ、分かっちゃうじゃない」と言う。とにかく、金の在り処は勿論、どれだけの金額があるかも夫君には知られたくないらしい。

ひとしきり私の提案を並べてみたが、どれも却下。Bさんは「困った。困った」を繰り返して電話を切った。

今記事をお読みになった皆さんの家庭は如何でしょうか? 夫婦は共同体だと思うか? それとも個々の集まりと思うか? 

ゴマンといる夫婦には様々な形態があるのでしょうね。どちらにしても、経済の破綻にならないように。夫婦仲は良好であってほしい。




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★19 モラハラ止めて

2023-09-01 16:03:02 | 「とある日のこと」2023年度


「開けて下さぁ~い。モラハラは止めて下さぁ~い。お願いします、開けて下さぁ~い」
 スマホの時刻は早朝5時半。散歩に出かけた私は、何事かと歩みを止めた。声の主は何処からだろうか? 裏通りの二階建ての大きなアパートの一階部分の奥の方かららしい。近所の住人らしい奥様が居た。「警察に通報するしかないわね」と、私に話しかけるというよりも、呟くように言った。今回が初めてではなさそうだ。夫婦間のイザコザなのだろうか?

 アパートの二階部分の一つのドアが開いて毎度のことなので様子でも見ているとでもいうような雰囲気。また、声の主が同じような言葉を発した。目を凝らして見ると、髪を一つに後ろで纏めた女性で、若い娘というより40歳前後に見えた。声は大きく張りがある。近所の奥様に目で挨拶し私はその場を離れた。先ほどの奥様の判断で警察に通報するかどうか? 気にはなったが、通りすがりの私はすぐに半分忘れかけた。

 モラハラ・・・近年よく聞くが、先ほどの声の主たちはどのような状態なのだろう。大きな事件にならないうちに解決できると良いのだが。

 夫婦間のイザコザでの暴力などは昔からあったことだと思う。けれど、男性側から女性側に対しての暴力は、言葉の暴力だけならまだしも、力加減次第では大きな怪我や命に関わることになりかねない。恋愛関係でも暴力を振るい、ましてや命までも取る事態になってしまった事件も数多い。

先ほど叫んでいた女性は、今回に限ったことではないのかもしれない。もし私だったら、別々の道を歩いた方がお互いに幸せだと思い別れるかもしれない。何にしても、幸せになることに努力して欲しい。




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