
ダンスホールのシフト表を見ると凸ちゃんの名前を見つけた。身長190cmの痩せ型で笑顔の優しい凸ちゃん。私とは40cm余の違いがある。この日に踊りに行くことにした。
ダンスタイムになると、凸ちゃんは二人目のお相手となって目の前に立った。スローの曲だ。「大きいのが来ましたよ」と、笑顔。「お久しぶり」という私に、「ほんと、お久しぶりですねぇ」と笑顔を向けた。
「フワァ、大きいっていいわねぇ」「そうですか? 嬉しいな」凸ちゃんはちょっと膝を折り、私の身長に合わせるようにホールドを組んだ。
「舞台には出ているの?」「出ていますよ」「どんな所へ」「どんな所って?」「どんな役?」「ロングランの舞台の、一つのコーナーに出ていますよ」「楽しいでしょうねぇ」「うん。楽しいよう」
1分40秒の長さの曲の中での会話は、ここで止まった。
次はルンバの曲で凸ちゃんと踊る。大男とチビ女子の図が頭に浮かんできた。ストーリーは思い出さないが、イヤ、もしかしたらそのようなドラマは無かったかもしれない。
小柄な人は大柄の人を好むという観念が私のどこかに残っていて、そう言えば、夫も私からしたら高身長の部類。以前居た大学生の山ちゃんも、ワイシャツのボタンがはじけそうに太目で大きかった。可愛いかった。アルバイトダンサーから卒業して、某企業に就職した時には、ちょっと寂しく感じたものだった。どんな仕事を頑張っているのだろう。偶には踊っているのだろうか?
凸ちゃんが、お隣のお客様にも、「大きいのが来ましたよう」と、笑顔を向けている。幸せ売りみたいだ。
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「と・ある日のこと」をお送りします。
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