●〔101〕先崎学『世界は右に回る-将棋指しの優雅な日々-』日本将棋連盟 1997 (2005.12.30読了)
先崎学八段は才気煥発(という歳でもなくなってきましたが)、文才も豊かです。面白くスイスイ読めました。
下記のように、ふだんあまりマスコミに出ることがない棋士たちの生態(?)が描かれているところがいいです。
きけば、朝の四時まで酒を飲んで、テレビ対局をして、負けて、昼からヤケ酒を飲んでいたらしい。朝まで酔っぱらって、相手が深浦で、負けて口惜しい、もないと思うが、本間さんといえば、肝臓大魔人、人間ポンプ、人間が考える葦ならば本間さんは酒を飲む葦である。酒が入ればかえって強くなるくらいのものだろう。一回戦の森九段と指したときだって四時まで飲んで勝ったのだ。(p.12)
(塚田八段と高群女流二段の結婚式で)その滝さんのスピーチが良かった。滝さんは高群さんの師匠である。
「高群に、付き合っている棋士がいると聞いて、驚きまして、相手を訊いたら、塚田君だというので、私は、思わずヤッタとガッツポーズが出ました」(場内爆笑)(p.54)
一行は六人。森、小野、郷田、先崎の将棋指し四名と、新聞記者と税理士が一人ずつ。
ここから一週間は、まさに夢のような日々だった。ニューカレドニアのカジノ(あるのである。なかったら森さんが行くわけがない)は夕方の六時から夜中の二時までしか営業をしない。よってきちんと寝ることができるので、規則正しい生活がおくれる。昼はビーチ。うまい夕飯を食って夜はカジノ。二日目ぐらいには、こんな生活をしていたら馬鹿になってしまうと思ったが、四日目になると、馬鹿になってもいいと思えてきた。ああ、もうすこしいたかったなあ。(p.118)