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《読書》唐沢俊一『博覧強記の仕事術』アスペクト(その1)

2010-01-02 17:22:07 | 読書
●〔81〕唐沢俊一『博覧強記の仕事術-効率的なインプット&魅力的なアウトプット指南-』アスペクト 2009(2009.08.25読了)〈2009089〉

○内容紹介
「博覧強記の技能」をあなたに伝授。取捨選択、記憶、整理、思考、発想、そして洗練されたアウトプットが出来るように、ノウハウをもってわかりやすく説明。博覧強記の世界へようこそ。

 面白く読むことができました。
 唐沢俊一だけに、真髄はトリビアルなところにありました。

○「創造力とは記憶力だ」
 いまだに日本映画の最高峰とされている黒澤明も、“創造力とは記憶力だ”と言っている。
『男はつらいよ』シリーズの山田洋二監督の思い出話によれば、黒澤は常に
「俺は天才なんかじゃない、記憶力がいいだけだ。自分の映画はみんな、昔見た映画のマネ をしているだけだ」
と言っていたという。(pp.3~4)

 そう、「思考」も「発想」も、実はすべて「記憶」から生まれるのだ。
 毎日あらゆるメディアから溢れ出る情報を取り込み、取捨選択し、思考し発想し、その上 でアウトプットを行う、というのが、今求められている「新しい博覧強記の人」である。 (p.5)(強調は原文ママ)


○馬鹿ほどえらい
 私が親しくしている岡田鉄平さんというバイオリニストがいるが、彼 は三〇間近になるまで、大阪府と大阪市はどちらが大きいのか、知らなかったそうである。でも、周囲のバイオリニストも似たようなものだと彼は言い、
「一〇代の頃は毎日練習練習で、それ以外のことを覚えている暇があるバイオリニストはものになりません。馬鹿であればあるほどいいバイオリニストだ、と業界では言われています」
と、平気な顔で言う。少し感動してしまったものだ。(pp.29~30)


○「規模の自浄作用」
 「本」というものは、一番、効率的、効果的に情報や知識や見識を広めることを可能にする媒体である。また、映画も本と並んで、優れた媒体である。それらを教養の基礎に置くのはごく当然、自然なことである。なぜ、本や映画が良質な情報を持つのかというと、それは媒体の持っている「規模の自浄作用」と言うべきものの結果である。ネットや携帯電話の情報と異なり、本や映画というのは、発信するだけで大変なコストを必要とする。それだけに、何でもかんでも発信するというわけにはいかず、さまざまな基準で情報を選別し、選ばれたものだけが本や映画となり、読者や観客に届くわけだ。規模が大きい媒体だけに、その自浄作用で、良質な情報が優先して発信されることとなる。よく「情報化時代」などという言葉が使われたとき、パソコンやネット、携帯電話で情報を得なければ時代遅れかのような言われ方をするが、情報過多の時代こそ、選別された情報が必要とも言える。(p.63)


○見極め
 もっと実用的な例を挙げよう。私の担当編集者でⅠ君という東大出の人がいるが、彼は、ホントに東大出か、と思えるくらい、教養話が嫌いだった。あの東浩紀と同期なのに。何しろ、驚いたことに英語がまったく出来ない。英語が苦手で東大受験を思いとどまっている人は考え直した万がいいかもしれない。その勤める総合出版社でも、風俗系の担当になったときが一番生き生きしていて、新宿・歌舞伎町の抱きキャパで火災が起きて多くの死者を出したとき、たまたま彼に連絡が数日とれなかったことがあり、担当作家、編集部の同僚、実の父親までてっきりあそこで死んだと思い込んだ、というような男である。……ところが、そんな彼が配置替えで教養書の担当になり、大学教授といった人たちに本を書かせる立場になると、いきなりお堅い本を立派に作り上げる。彼からは自分が編集した本を毎回送ってくるが、あと書きで彼に対する絶賛を表明している著者も少なくない。その後会ったとき、彼に「すごいね。さすが東大出は違う」と言ったら、そんなことはないと彼は言下に否定した。
 つまり、彼は、「その本を出すために必要最低限度の知識はどこあたりなのか」を見極め、わからないところは著者本人に聞いたり、入門書を読んだりするという。それで、本を編集するには充分の知識量が身につくのだと言う。編集者は、最低でも著者の基本的勘違いなどを見抜く知識を入れていないといけない。記述の正当性を見抜くだけの知識は必要だ。だが、担当編集者が本を書く必要はない。あくまでも著者の原稿チェックが出来ればそれでいいのである。
 やはり、見栄、プライドというのは、やっかいなものである。「わからないです」と言えば済むものを、自分だけで何とかしようとするからポロが出るのだ。勇気を出して「教えてください」と言えば効率的に物事は進むのである。(pp.76~78)

*画像は岡田鉄平

〈To be continued.〉

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