●〔92〕野火迅『常識として知っておきたい世界の名作映画50-傑作シネマの教養が楽しく身につく本-』KAWADE夢新書 2005 (2005.12.14読了)
今では、映画は、サブ・カルチャーの域を超えた堂々たる文化だ。言い換えれば、趣味や嗜好の範囲を超えた「常識」である。たとえば、夏目漱石の著作をあらかた読破していなくとも、『坊ちゃん』『門』『こゝろ』の内容くらいは知っていないと、常識人失格の烙印を押されかねない。同様に、アルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥』、ジョン・フォード監督の『駅馬車』についてまったくの無知であるならば、「興味がない」のひと言ではすませてもらえない。(中略)古い映画の中には、見る者の“知的忍耐力”が前提になっていて、「しんどくて、たまらん」作品が数多くある。また、セリフや演出が古風すぎて、「なんじゃ、こりゃあ!」と毒づきたくなる作品もある。ようするに、楽しい映画鑑賞のはずが、とてもツライお勉強になりかねないのだ。
その障害をいっぺんに取り払うのが、本書である。本書は、戦前、戦中、戦後派の間で名作として伝えられてきた映画を精選し、それらの見所を一点集中的にあぶり出す。ひと口にいえば、本書は名作シネマを見なくても見たフリができる本である。(pp.2~3)。
何事にせよ古典というものは大切でしょう。映画もしかり。この本は上記の前口上にある通り、古典的な名作映画を紹介しながら、凡百の映画ガイドとは一味違った切り口を見せてくれました。
ちなみにこの本で紹介されている50作のうち、私が見たことがあるのは「市民ケーン」、「ゴッドファーザー」、「駅馬車」、「カラブランカ」、「第三の男」、「サンセット大通り」、「鳥」の7作でした。まだまだ修行が足りませんね。