四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
極度乾燥の無雪低山で氷点下を凌ぐ
1月のある日、電車を乗り継いでローカル線のとある駅に下りた。
凌ぎ始めの神社まで徒歩一時間。シノギングの安全をお祈りして装備を整える。21AW向けの新作ベースレイヤーとschoeller naturetecのソフトシェル「ニンジャフーディー」、そしてこちらも21AW向けの新作フユガレに編み上げ式のクナイを合わせて挑む。
電流爆破式の柵をお行儀よく越えていざシノギング!
神社奥の敷地は動物よけの柵で囲われているが、倒木でダメージを受けたところから失礼する。
檜の尾根をしばらく登ってアキレス腱とふくらはぎを伸ばす。気温は0℃(笑)
735mのピークでやや西に方角が変わり、それと同時に植生も変わって実に気持ちのいい尾根が伸びる。
ゆるめの傾斜で100mほど標高を上げる。やけに手が冷たいなと思ったら気温はいつのまにか-5℃まで下がっている。ここまで薄手のグローブをしていたが、凌ピッケルに手の熱を奪われてしまうのでたまらずフリースグローブにLight Shell WP Gloveを重ねて凌ぐがそれでも寒い。
傾斜がきつくなり始めて最初の壁へと導かれる。日影に入った途端に寒さに支配され-5℃だという事を思い出す。
標高差130mほどの壁に突入。登山道ではないのでもちろん直登。ここで凌ピッケルの出番。ピックを打ち込むほどの傾斜ではないが石突を刺してバランスを取りながら安全に登る。こんな時にはやはり凌ピッケルがあると安心だ。
壁が終わるとご褒美の気持ちのいい広い尾根。もうここに泊ってもいいんじゃない?
いえいえ、もう少し上に行く。少し傾斜のきつい尾根の露岩を左から巻く。カラカラに乾燥したクマの糞が落ちている。落ち葉で滑らないように気を付けて登る。
しばらく行くと次の壁。ややヤセていて露岩が点在しているので慎重に登るが、地形図で想像するほどのいやらしさはなく意外とすんなり通過できた。
直登(笑)
まだ13:00だが日差しは完全に夕暮れ時。
一本東の尾根に合流すると間もなく目星をつけていた別荘地に到着。御正体山を望む絶好のテラスに満悦。
ブナの大木も点在する気持ちのいい別荘地。久しぶりに1,500mを超えた(笑)
まだ15:00だというのにこの気温。焚き火をしなければやってられない。
お酒を呑むには少し早いのでスパイスティーで我慢する。薪はまわりにふんだんにあるのだがどうもスカスカしていて燃焼が弱い。
孤高のシノラーY氏に同行していただいた。
クナイはスリットラインにぶら下げるのが凌流。
日が落ちると寒さが染みる。
今夜はモグ500だけで寒さを凌ぐ。去年の冬はあまり極端に低い気温にならなかったのでいい耐寒テストになりそうだ。
大好きな薄暮の時間。山並みの向こうの無数の灯りに大都会が浮かび上がる。
17:00をまわったのでお酒解禁~。ヒューッ!
今夜はすき焼き鍋。具材は三種類までと決めている。もちろんぬる燗で(あいまに焼いたイカをしゃぶる)。
暗くなるとあっという間に-12℃まで下がってしまった。指先が痛い。水分という水分があっという間におもしろいように凍り付く。同じ気温でも雪山よりも極度に乾燥したこの無雪低山の方がはるかに寒く感じるんだよな。ほんとうに寒い。
上半身はベースレイヤー+クイックハラマキ+カルフワセーター+ニンジャフーディー+ヨヒヤミ、足まわりは独立発泡体(あ、クローズドセルって言うんですかね・・・)をインソールに敷いたダウンブーティーとフユガレ+アグラスカートで寒さを凌ぐ。
あまりの寒さに20:00にモグにモグる。ほろ酔いだったせいもあって2:00まで爆睡。その後尿意の我慢大会が始まり、同時に寒さが支配してきた。尿意と寒さを凌ぐために横向きになって足をそっくりアグラスカートに突っ込んで凌ぐも我慢の限界。トイレを済ませたそのついでにマル秘アイテムを投入。これで何とか寒さは凌げそうだ。
明け方、気温はついに-14℃。
寒くなかったと言えばうそになるが何とかモグ500で凌ぐことができた。
注)私は寒さに鈍感な方なのでこれを基準にはしないでください。
朝飯はここのところお気に入りの豆腐を入れたしじみスープ。寒い朝にはこれが一番。
撤収時のごちゃごちゃ感(笑)こう見えても小さいヌノバケツの二段重ねのおかげでパッキングはあっという間に終わるのだ。
富士山もちょっとだけ見える。
すべての痕跡をなくして下山開始。
次々に現れる別荘地に興奮。
こんなに寒い時にはAXESQUINの元祖フィンガースルーミトンがあると心強い。
下山ルートもずっと気持ちのいい尾根が続く。
こちらにも露岩帯。落ち葉に足を滑らせて渓に落ちないよう慎重に巻いて通過。
シノギングと言えば送電鉄塔。幹線らしくとても大きい。
薄暗い針葉樹帯に突入。200mほどの急斜面+壁を降りればゴールは近い。
こちらの壁はあまりにも急だったので西に迂回して枯れた沢に出る。
どんぶらこっこと流れ着いたのか立派な鹿の頭。
神社に始まり神社に終わるのが凌流。
常時氷点下を凌ぐ充実のシノギングであった。