※前回の金沢の記事はこちら(14節・大分戦、3-4)
※前回の甲府の記事はこちら(10節・栃木戦、1-0)
<金沢スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 13節(栃木戦、0-4)で負傷したGK中野の詳細が発表され、全治6週間との事。
- 前節(徳島戦、0-2)負傷交代した嶋田はベンチ外に。
<甲府スタメン>
- 負傷離脱していた武富が15節(千葉戦、0-1)に復帰し途中出場、前節(秋田戦、1-0)からスタメン。
- 負傷離脱していたジェトゥリオが前節復帰し途中出場。
- 井上詩音がプロA契約を締結。
最前線にウタカ・殿にGK河田が控えている以外は、何処と無く地味な印象の今季の甲府。
それを象徴するかのように、7節以降複数得点試合が皆無という、ある意味喜劇的なスコアでリーグ戦を過ごしており。
つまり過去10戦は5勝5敗という完全五分な成績ながら、得点は常に1点以下であり、勝利の全てがウノゼロとなっています。
もっと語るならば、7節・清水戦以外の4勝(栃木・町田・いわき・秋田)は、全てパワーサッカーの趣があるクラブから挙げているという具合に傾向がハッキリしており。
フィジカルで押し込んでくるチームに対し、ウタカ・河田を中心としたゲームコントロールが冴え渡るものの、それ以外のチームには相性が悪いといった所でしょうか。
先制しても逆転される試合も多く(長崎・群馬)、果たしてこのまま1-0を目指す(意図しているかどうかは不明)だけで良いのかどうか。
この日の相手は金沢で、縦に速いアバウトな攻めという特徴こそパワーサッカーに近いものがありますが、最近は能動的な崩しにも挑戦しているチーム。
自身のペースに持ち込む事が出来るかどうかで、克服して自信に繋げたい所。
前半1分にはやコーナーキックを獲得した甲府。
その右CKから、キッカー長谷川のクロスを中央でウタカが合わせ(ブロックに当たり枠外)早々にフィニッシュシーンを作ります。
引き続きの右CKは不発となり、その後遅れて立ち上がりのボール争いの時間がやってきますが、それを制すると再び攻撃権を奪取。
10分過ぎぐらいまでは、金沢に攻撃機会を作らせずに試合を進めた甲府ですが、次第に勢いは削がれていき。
12分の金沢の最初の攻撃、トップ下の加藤を中心にパスを繋ぎ右サイドを前進し、エリア手前で遮断されるも加藤が拾った事で2対2のデュエルが発生。
小島と協力してボールを確保した加藤、そのままエリア内へ入り込んでシュートしますがGK河田がキャッチ。
こちらも初の攻撃機会をフィニッシュで終わらせると、堰を切ったかのように金沢ペースに移り変わります。
ダイヤモンド型4-4-2という、変則的なフォーメーションの前線の守備相手に苦戦を強いられる甲府。
金沢は前年も同様の形を取る事がありましたが、あの時は守備時のオーソドックスな4-4-2から、攻撃時はサイドハーフの嶋田がトップ下へ可変するというシステム。
しかし今回は守備時も加藤は中央のままで、前線の人数を増やしてプレッシングの圧を高める姿勢を取り。
GK河田も前に出てビルドアップに加わる余裕は無く、サイドに送っても前回のような素早い寄せに遭い前進は中々出来ず。
それでもアバウトなパスを出せている分まだ良かったですが、21分とうとう目も当てられない危機が。
ショートパスでのビルドアップで打開を図った甲府ですが、降りて受けに来た武富も小島に付かれた事で、戻しを選択せざるを得ない状況に。
そして佐藤のバックパスがあろう事か林の足下へと渡る事案が発生してしまい、そのまま放たれたシュートをGK河田がセーブと、紙一重での凌ぎとなってしまいました。
普通にやるのでは前進は果たせないので、違う手段が欲しい状況。
26分、左へ開いた蓮川がボールを持つと、そのまま自陣エリア内へと流れてボールキープ。
そして金沢の前線2人が寄って来た所を右へ浮き球のパスを送った事で打開し、右サイドから敵陣へ運ぶ事に成功します。(最後は佐藤のエリア内へのミドルパスが繋がらず)
流石はJ1所属(FC東京からのレンタル)という事で、その技術力を見せ付ける蓮川。
しかし33分、林に右サイド深めで奪われてまたもショートカウンターの危機に晒され。
奥へと切り込む林に対し、蓮川がカバーに入って何とか凌ぐ甲府。
その後も度々際どい所でのカバーも強いられた蓮川、攻守双方でキーマンとなる中々厳しい役どころとなったでしょうか。(この日が今季3試合目のスタメン)
そして金沢はこの好機以降、甲府に攻撃機会を与えない程の攻勢に持ち込むという、立ち上がりとは真逆の展開に。
最前線のウタカに中々好機が訪れず、そのメンタルが不安になるかのように、今度は前線のプレッシングが甘々となる甲府。
37分には金沢の最終ラインから右への展開に対し、武富の寄せが甘くあっさりパスワークで前進を許すと、間延びしてしまった事で自陣で数的不利の守備に陥り。
ここもポイントゲッターの林に渡ると、中央から放たれたミドルシュートをブロックして事無きを得ます。
プレッシングの意識はあるものの、どうしてもウタカの運動量という問題を抱えているので何処かで甘くなるのは避けられず。
そして中途半端となる結果中盤に広大なスペースが出来るので、金沢に上手く運ばれる下地をみすみす渡してしまっていたという状況でしょうか。
41分、孫のロングパスは跳ね返したものの中盤で拾われて攻撃継続。
右サイドでの細かい繋ぎから、加藤のエリア内への浮き球パスに走り込んだ杉浦がヒールでポストプレイと、変化で揺さぶった末に加藤がシュート。
しかしこれもGK河田がセーブと、弱点を突かれての決定機も何とか防ぐ甲府。
河田含めた最終ラインの奮闘が光った一方で、前半は最後まで攻撃に出られず。
そのまま前半が終わり、事態を重く見た篠田善之監督はハーフタイムで2枚替え。
武富・宮崎→三平・荒木へと2枚替えし、長谷川が左サイドハーフにシフトと、2列目の3人を弄って来ました。
幕を開けた後半。
最初に攻撃機会を得たのは前半と同じく甲府で後半2分、プレッシングで追い込まれた末の井上ロングパスでしたが、ウタカが落下点に入った事で跳ね返りを拾って好機に持ち込み。
そして長谷川の左ポケットへのスルーパスで左CKと前半と同様の展開を描き、キッカー長谷川のクロスを中央で合わせにいくウタカ。
これが孫との競り合いの末に背中に当たって浮き上がり、そのボールを井上がヘディングで押し込み右サイドネットを揺らし。
しかしオフサイドを取られ、三平が異議を唱える等不満の残るジャッジとなりましたが、先制点は幻に。(ウタカの背中に当たった事はピッチレベルでは判り辛い)
その後も6分にパスワークでの攻めを展開、長谷川左からカットイン→エリア内へ縦パス→荒木ポストプレイで抉ったのち、須貝経由の末に佐藤がミドルシュート。(GK白井セーブ)
HTを経てビルドアップの下地は整ったかに見えましたが、これも次第にロングボールを蹴らされる場面が増えるなど徐々に効果は薄れ。
9分にGK白井が浮き球を抑えて素早くカウンターに持ち込む金沢、低い弾道のロングフィードを一気に通し、胸で落とした林が加藤のスルーパスに走り込む絶好機に。
蓮川がここもスライディングで間一髪カバーと、際どい凌ぎとなります。
お互い1分毎に好機を作るという慌ただしい展開のなか、苦戦する甲府はウタカ中心の攻めを繰り広げ。
12~13分の間に、左サイドで溜めてクロス(ブロックされCKに)・CKからヘディングシュート(枠外)・浮き球をワントラップで裏へ抜け出し(孫を抜けず)と、多種多様に好機に絡むウタカ。
このエースの働きでペースを掴みたかった所ですが、そうはならなかったこの日。
繰り広げる攻勢に自信を付けた金沢、15分にゴールキックからショートパスでの前進。
右サイドを加藤・小島・林のパスワークで踏襲していき、小島グラウンダーでクロス→林ポストプレイを経て奥田のシュート(林田がブロック)まで繋げます。
ポゼッションに舵を切ったようなこの日の金沢ですが、17分には長峰の左からのロングパスで一気にエリア内を突き、走り込んだ林がボレーシュート(GK河田キャッチ)と長短の使い分けが凄まじく。
相手の好循環を断ち切れない甲府は、18分に佐藤→山本へと交代。
現状打破には大ベテランの経験が必要と考えたでしょうか。
それでも情勢は変えられず、金沢の好機はさらに続く事に。
23分にはあろう事か、山本の右へのサイドチェンジのパスが眼前の林田に当たってしまい、拾われて攻守交替という事態に。
林とのパス交換から、杉浦が右からカットインしてペナルティアークでシュート。(ブロック→GK河田キャッチ)
ミスからピンチを招くという悪循環ですが、既に勝負所の時間帯故に、弱点そのままで突っ切る事を目指したでしょうか。
20分に蓮川の持ち運びを絡めたビルドアップで前進に成功と、攻撃でリズムをつかむ事で強引に主導権を手繰り寄せにいく甲府。
そして決定機は25分に訪れ、敵陣右サイドでのスローインからウタカのポストプレイでスイッチを入れ、逆サイドの長谷川に素早く渡し。
長谷川は溜めを作りつつのカットインからミドルシュートを放つと、GK白井がセーブした跳ね返りを須貝が詰めてエリア内左からボレーシュート。
勝負ありかと思われた連撃ですが、白井の後方で孫がブロックと、ゴール寸前で防ぐ金沢。
27分にはそのお返しとばかりにスローインから好機を作り、右からのクロスはクリアされるも長峰が繋ぎ、加藤の左ポケットからのシュート。
これがブロックされると、ボールは甲府ディフェンスにピンボールのように当たり続けて跳ね返り、更なる追撃(杉浦のシュート)に繋がったもののGK河田がセーブ。
際どいフィニッシュの応酬に、試合の流れは全く読めない展開となります。
しかしその鍔迫り合いもいつかは終わる時が訪れ。
それを齎したのはやはり……と言いたくなるように、29分に関口の持ち運びからのパスを三平がダイレクトで裏へ送った浮き球が、エリア内のウタカに収まり。
ラインコントロールのミスでオフサイドを取れなかった金沢を尻目に、それは「お主が決めるのだ」という天のお告げか、巧みなボールコントロールから放たれたウタカのシュートでゴール右へと突き刺さるボール。
これが「持っている男」の働きなのか、エースの一撃で均衡を破った甲府。
リードはたった1点ですが、雰囲気的に重すぎる1点。
一気に苦しくなった金沢、33分に3枚替えを敢行し、梶浦・林・杉浦に代えて小野原と豊田そしてジェフェルソン・バイアーノを投入します。
前線をパワー系の選手へと代えて打開を図るも、これまでの好循環を生み出していたメンバーを一新するのは諸刃の剣でもあり。
36分に右ポケットから送られたバイアーノのクロスが精度を欠くというシーンが、そのマイナス面への危惧を表します。
金沢が反撃に手間取る隙に、甲府は35分に長谷川とウタカに代え、ジェトゥリオとエドゥアルド・マンシャを投入。
ジェトゥリオが頂点の3-4-2-1へと布陣を変更する、5バックシステムとも取れる逃げ切り体制に移りました。(3バックは右から蓮川・井上詩・マンシャ)
バイアーノ・豊田の2トップとなった後も、放送席が何度も「そうした方が良い」と語っていた、ロングボールへの傾倒はあまり見せなかった金沢。(42分に小島→毛利へと交代、小野原が右サイドバックに回る)
あくまでもショートパスによる崩しを貫いたその姿には変化を実感したものの、スコアは動かす事が出来ず。
フィニッシュも39分の加藤のシュートのみ(ゴール左へ外れる)と、相手の堅守に阻まれるという判り易い展開に陥りましたが、我慢を続けます。
そしてアディショナルタイムも最終盤。
甲府のスローインをカ跳ね返して素早く前線へと送り、カットされるも奥田がクリアをブロックして尚も繋ぎ。
意地の姿勢を見せた末に、毛利が放ったミドルシュートがゴールを脅かすも、GK河田のセーブに阻まれ同点ならず。
直後のCKからも、二次攻撃を経てもう一度ミドルシュートを放った毛利でしたが、ゴール上へ外れて万事休す。
試合終了となり、またもウノゼロでの勝利を挙げた甲府。
ゲームコントロールにはむしろ失敗し、金沢サイドの良い所が目立った試合となりましたが、順位は4位へ浮上を果たしました。
このスタイルでいくにしても、上には未だ失点数一桁を保っている町田・ヴェルディという2クラブがドンと構えているため、自分色を出すには少々物足りないという感じ。
結果に繋がっているのは良い事ですが、このまま破綻無く進撃する事が出来るかどうか、注目の要素となるでしょうか。