※前回のいわきの記事はこちら(7節・岡山戦、1-1)
※前回の長崎の記事はこちら(10節・徳島戦、4-0)
<いわきスタメン> ※()内は前節のスタメン
- 石田が前節(栃木戦、0-1)負傷交代となり、今節はベンチ外。
- 同じく前節負傷交代した有田だがスタメン継続、フェイスガード装着と半ば強行出場の形に。(なお遠藤もフェイスガード装着で出場)
- 7節に負傷した有馬の詳細が発表され、全治3か月との事。
- 離脱者が膨らんで来た影響か、吉澤が今季初のベンチ入り。
<長崎スタメン>
- 前節(秋田戦、4-2)出場停止の鍬先が復帰、スタメン出場。
- 2種登録されていたユースの宮崎が登録抹消に。
3試合で10得点、それにより3連勝と昇り調子の長崎。
そんな絶好調のチームと相対するいわきですが、前節同じパワーサッカーの属性である秋田を一蹴しているため、相手の対応の遅れに頼る事は出来ず。
そのいわきは、疾風の如く駆け上がってきたこれまでのリーグ戦のようにはいかないJ2での今季。
思う要に勝ち点を伸ばせず、「J2に旋風を巻き起こす」という期待は、同じ昇格組である藤枝へと移り変わっているような状況であり。
強靭なフィジカルによるインテンシティを下地とし、縦に速い攻撃で相手ゴールを脅かす事はなされているのですが、それだけでは厳しいのか。
前節・栃木戦はそんな事を意識してしまう敗戦で、既に強固な守備力のみでは無く一定のボール保持力も備えている栃木に対し、一本鎗なサッカーのいわきとの差が現れたような試合。
やはり上位カテゴリでは、上を目指すには何でも出来る必要があるという事を考えさせられますが、試合が続く状況で考える事では無く。
ゴールデンウィークの連戦、その初戦でホーム開催。(いわきグリーンフィールド)
そしてピッチには強風と、パワーサッカーを発揮するには十分の環境となったこの日。
前半のいわきは風下となりますが、それでも持ち味を余す所無く発揮。
敵陣深めでスローインの連続に持ち込む入りで、前半3分には永井のロングスローからのこぼれを嵯峨がミドルシュート。(エリア内でブロック)
一方逆に追い風を活かさんとする長崎ですが、ロングボールのターゲット役のフアンマが、いわきセンターバック(家泉・遠藤)の激しいチャージに難儀。
双方チャージの応酬の末にフアンマ側が反則を取られる結果に対し、不満をあらわにするフアンマという具合に、神経過敏な状態を常に強いられます。
いわき・秋田といったクラブが中心のパワーサッカーの特徴は、フィジカルを活かしたディフェンスは元より、データ上にも得点期待値の高さに表れ。
その代わり実際の得点はそれよりかなり低いという具合に、悪く言うならば「数打てば当たる」攻撃。
この日のいわきはそれを象徴するようなサッカーで、ゴールに近づくシーンはまさに紙一重であり。
9分セットプレー(右奥からのフリーキック)からの攻撃が途切れ長崎ボールとなるも、すかさずゲーゲンプレスで家泉が敵陣で奪い返し再度攻撃。
横パスを中央で受けた谷村、ディフェンスに遭うもデュエルの末にマイボールにしてそのままペナルティアークからシュート。
これが右ゴールポストを直撃し、跳ね返りをエリア内左で永井が繋いで有田がシュート(GK波多野キャッチ)という場面のがその始まり。
12分にはコーナーキックから、キッカー山下のニアサイドを狙ったクロスが流れ、ファーサイドで有田がシュート。
完全に枠内を捉えたものの、今度はゴール寸前でのフアンマのブロックに阻まれます。
これまで長崎の攻撃機会は皆無と、まさに一方的な攻めを展開するいわき。
しかし16分の長崎、GKから繋ぐ体勢から一転したヴァウドのロングパスが風に乗り、最終ライン裏どころかエリア内を突き。
そこにフアンマが走り込んで一気にGKと一対一が生まれたものの、ダイレクトで放たれたフアンマのシュートをGK高木和がセーブ。
一瞬で際どいシーンを作られたいわき、油断禁物という判り易い絵図となりました。
このシーン然り、GKからのショートパスによるビルドアップを何度か試みる長崎。
しかしボール保持の工夫が決定的に足りず、ほぼ可変無しによる繋ぎの結果、サイドに叩いた末に詰まり奪われるという事を繰り返すのみに終わります。
サイド深めでプレッシングを受け、ロングパスがブロックされた末に自身に当たってゴールラインを割り、いわきのCKというシーンも複数回生まれる程。
この辺りは、ゾーンディフェンスを重視するようになり安定化を齎したのとハッキリしたトレードオフとなっており。
こうなると、勢いを持って攻めるいわきに対するカウンターしか手段は残らない状況。
29分には嵯峨の右ポケットからのクロスが跳ね返されると、加藤大に収まってそのままカウンターを発動する長崎。
縦パス→フアンマポストプレイ→クレイソンスルーパスを経て裏へ走り込む加藤大、しかし遠藤のチャージで縺れて倒れてしまい、反則の笛が鳴り。
このフリーキックからはフィニッシュが生まれずも、裏狙いを明確にしていわきディフェンスを脅かす姿勢が出来上がったでしょうか。
いわきが攻め続ける下地を作っても、このように一方的な虐殺ゲームとはいかないのがサッカー。
押し込み続けた成果は、前半のみで7本CKを得るというデータにも現れ。
36分にはその右CK、キッカー山下はゴールライン際の永井にショートコーナーを託すと、受けた永井はカットインでゴールに迫り意表を突き。
そしてシュートを放つもGK波多野がキャッチと、変化を付けた攻撃も結果に繋げられません。
単調にクロスを入れても、長崎の中央の硬さの前に無と化すのは周知の通りであり。
終了間際の44分にはいわきがカウンターを仕掛け、自陣でのボール奪取から素早く細かいパスワークの末に、宮本が敵陣へドリブルで抜け出す好機に。
そしてエリア手前での横パスから有田がシュートするも、櫛引のブロックに阻まれゴールならず。
尚もアタッキングサードで繋ぎ、宮本のミドルパスを有田がポケットで収めるもオフサイドを取られて終了となり。
前回の徳島のような無策とは無縁な攻めながらも、どうしても長崎ディフェンスを破れないいわき。
その流れのまま突入したアディショナルタイムも、最後はFKからの放り込みを躊躇した末に前半終了の笛が鳴り響き、やや攻め疲れ感も見られて終わりました。
ハーフタイムで長崎が動き、笠柳→澤田へと交代。
ビルドアップで何度も詰まりを起こしていたのは右サイドだったので、テコ入れは当然といった采配であり。
後半は風上となるため、勢いに乗らんとするいわき。
そのあまり、キックオフ直後というタイミングで長崎のロングボールを阻みにいった有田がブロックによりハンドを取られ。
それでも勢いは止まらず、前半と同様に敵陣深めでスローインの流れを作った末にCKに持ち込んだのが後半3分。
この右CK、再びキッカー山下は変化を付けてエリア手前中央へ低いライナーでのクロス。
しかし合わせた河村はふかしてしまい実りません。
7分にもCKから、ニアサイドへのクロスを遠藤がフリック気味にヘディングシュート(GK波多野キャッチ)と、膨らむCKから何とか一本取らんとするいわき。
一方長崎はフアンマにロングボールを送らんとするも、向かい風によりそれは難儀。
前半同様、全く攻撃機会を得れない時間が続いてしまいます。
そして地上からのビルドアップ重視に切り替えるという、こちらも前半同様の流れ。
迎えた10分、テコ入れした右サイドからの前進で、ディフェンスに阻まれながらも際どい繋ぎの末に前進に成功。
そして逆サイドへの展開を経て米田の左奥からのクロスに持ち込むと、フアンマのヘディングシュートが炸裂。
ゴール右へ外れるも、いわきに対する警報としては成果は十分なフィニッシュとなります。
そんなフアンマの脅威に脅かされつつも、ゴール並びに勝利を目指さなければならないいわき。
直後の11分にまたCKを得ると、有田も付けていたフェイスガードを外して気持ちにターボを掛けたでしょうか。
この左CK、再びCB(家泉)のヘディングシュート、今度は中央から完璧に合わせたものが炸裂。
しかしあろう事か、前方に居た永井に当たってしまい右へ外れるという悔やまれる結果に終わってしまいます。
それでも試合の流れは不変であり、次なるいわきの決定機は19分。
左サイドのスローインからの攻めで、クロスが跳ね返されたのち今度はポケットを(宮本の)スルーパスで突く攻撃。
そして走り込んだ有田がシュート、GK波多野にセーブされるもエリア内に浮かび追撃のチャンス。
しかし詰めにいった加瀬は米田に倒されてしまい撃てず(反則無し)と、この日はフィニッシュ以外にも多種多様な途切れ方も披露してしまった感がありました。
その後も21分に長崎・鍬先の反則により、エリアからすぐ手前という位置での直接FK。
キッカー山下が直接シュートを放つも壁を直撃と、舞い降りる攻撃手段もそれを活かせないいわき。
一方時々カウンターを仕掛けるも、防戦一方の感は拭えない長崎。
25分に再度ベンチが動き、クレイソン・加藤大→宮城・秋野へと2枚替え。
カイオが加藤大の居たトップ下へシフトと、今度は布陣変更も交えた采配となりました。
26分にいわきが嵯峨が遠目からミドルシュート(枠外)と、やや焦りが露呈したような攻めの後の長崎のゴールキック。
ここから試合は動き、交代を経て新たなターゲットのようになったカイオがロングボールを落とし、そこから左サイドに秋野が加わって繋ぎ。
これにより守備陣を密集させたうえで中央を選択し、鍬先のミドルシュートを家泉がブロックするもこれがエリア内へとこぼれてしまい、すかさず詰めたのはフアンマ。
ゴールゲッターの本領発揮と言わんばかりに、遠藤・GK高木和よりいち早くシュートに辿り着きゴールネットを揺らします。
攻められ続けていた長崎が先制と、どう転ぶか判らないサッカーの面白さ・恐ろしさが存分に発揮されたゴールとなりました。
ホーム故に、気を落とす暇は与えられないいわき。
代えの利かない宮本が足を痛めるシーンが生まれるも、プレーを続けペースを落とさず振る舞い。(32分に加瀬→杉山へと交代)
尚もスローイン・CKを膨らませるなど、試合絵図は変わらず。
そして35分の右CK、キッカー山下はニアへの低いクロスを選択し、遠藤が足でフリック。
これは跳ね返されるも宮本が拾って繋ぎ、嵯峨のミドルシュートが放たれますが今度はゴールバーを直撃。
スコアが動いても、際どい決定機逸からは逃れられない、といったこの日のいわきでした。
36分に長崎はカイオ→都倉へと交代。
クローザー的な扱いの今季の都倉、そのプレッシャーの掛け方は健在なものの、いわきの熾烈かつ特有な攻めに対しそれはあまり役に立たず。(いわきは38分に谷村→近藤に交代)
事実先制点以降、長崎の攻撃機会は皆無となり、ひたすらに専守といった構えを強いられます。
マイボールの際もただロングボールを蹴るのみとなり、それを拾いにいくフアンマが、いわきCBのチャージに苛立ちを隠せないという前半の再現も目立ち。
終盤の40分以降も、いわきのCKは6度と、流れは変わるどころかますます固定化され。
ゴールを奪えぬままATまで時間を進めてしまったいわき。
セットプレーの連続故にCBも上がりっぱなしに近い状況で、スローインから左からクロス→クリアされるも拾って右からクロスという攻めを経て、その宮本のクロスをファーサイドで遠藤が合わせにいき。
GK波多野が跳び出して阻止するものの、こぼしてしまった所を近藤がシュート。
しかしこれもゴール寸前で都倉がブロックと、この日の長崎の紙一重での凌ぎは一級品であり。
尚も押し込み続けるいわき、それにより長崎は米田や岡野が足を攣らせるという被害も出たものの、最後まで集中力は途切れず。
結局0-1のままタイムアップを迎え、これまでとは一転した薄氷ながらも4連勝を達成した長崎。
一方、シュート数・攻撃機会で圧倒しながらも無得点に終わってしまったいわき。
「理想のサッカーを貫けながらも結果が出ない」事は、「どんなサッカーをしたいか判らない」「理想のサッカーはあるものの程遠い」といった状況よりも堪えるのでは無いか。
そんな危惧も外野からながら考えてしまう程でありますが、果たして光明がさす日は来るでしょうか。