成城学園駅付近は二度の野川歩きや先週の仙川、世田谷通り歩きなどで何度も来ているのに、不思議に成城大学を見ようと思いつきませんでした。なんでかな。
学生時代には楽器を担いで何度か訪れた成城大学。40年ぶりに足を踏み入れます。
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成城大学へは駅前の信号からまっすぐ200m直進してから右折して、銀杏並木を歩いて正門に向かうというのが一番ドラマチックな入り方です。
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正門付近。成城大学は学内見学は随時可能。「受験生に限らずお気軽に本学にお立ち寄りください」と公式サイトに書かれています。素晴らしい。
ちなみにこの写真は一通り見学して最後に門を出た時の写真です。入る段階でいきなり写真を撮りまくると不審者として咎められかねないので入る時には撮りません。
この日は大学内を徘徊する予定で来ているので、一応ジャケットなど羽織って客員教授くらいに見えるようにしていきました。
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入ってすぐ。広場のようなスペースを、左から3号館、2号館、1号館が取り囲んでいます。
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2号館の手前を右に、小田急の線路に近づく方向へ。表門から地上を歩いてきましたが奥に進むといつのまにか地面は1フロア低い所になっています。
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成城大学が仙川沿いの傾斜地にあることは分かっていました。高台になる正門と川沿いの校舎とは地表の高さが6mも違っています。
なので平らに歩いてきたつもりでも奥の7号館、8号館前では連絡ブリッジの上にいることになるのでした。
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階段降りた先はすぐに仙川です。右が8号館、左が7号館。
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8号館の中に入ってそとを眺められる窓を探しました。小田急線の線路が近い。写真下の道は
つい先日歩いた仙川沿いの左岸です。
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8号館Lounge #08。かっこいいカフェは岐阜県羽島郡に本社のあるバウハウス丸栄の設計。店舗内装インテリアで豊富な実績のある会社です。
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さきほどの階段を下りて一番川に近い通路へ。見えている橋は
先日のこの写真の橋です。
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右手に植えられているのは桜です。春は素晴らしい眺めになるんだろうな。
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7号館。
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3号館。2007年に新築された成城大学の中では新しい建物。設計は山下設計です。
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3号館1階のラウンジ。今まで見てきた中で最もコンパクトなキャンパスですがこういうフリースペースはとても充実しているという印象です。
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3号館の高低差を吹き抜けとして生かしたきれいな階段スペース。かっこいいですね~。
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3号館の外。一つ上の写真の外の川沿いです。すでに低くなっているのにさらに奥(北)に向かって下がっています。
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下り坂の先にあったのは成城池。大学の裏手にこんなのあるの知りませんでした。
昭和40年頃まではすぐ後ろの仙川と同じ水面レベルでした。現在では河川改修の結果川より2m高い独立した池になっています。
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成城池の先に仙川を渡る歩道橋があります。川向こうにも成城学園の所有地は広がっていて、歩道橋の脇にはスポーツセンター、その先には初等科があります。
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正門前まで戻って大学食堂棟(左)の前の道。40年ぶりに成城大学に来て初めて見覚えのある風景でした。
学生の頃、成城大学のオーケストラ(レストロ・アルモニコ管弦楽団)のエキストラで正門からこのコースで突き当りに見えている講堂に行ったのでした。
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学生食堂の中。さすが成城大学というおしゃれな空間。天井から下がる白いネットは、光をやわらかく拡散させるのと、反響を抑えるためのものと推察しました。
ちょうどお昼だったので、440円のネギラーメンを食べましたがとても美味しかったです。
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40年前にオケのリハーサルで行ったのはここ。現在は学園創立者の名を冠した柳沢記念講堂ですが、以前は五十周年記念講堂でした。
1967年に建てられた講堂を2015年に日建設計の設計で大幅改修して柳沢記念講堂としてリニューアルしました。
こちらが公式サイトにある1985年の講堂の姿です。建物自体は依然と変わっていないことが分かります。
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柳沢記念講堂の斜め向かいにある成城学園歴史記念館。残念ながらこの時は中を見ることができませんでした。
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歴史記念館からガラス越しに中を覗く。奥にある階段を見て建築好きの人なら思い出すものがあります。私もすぐに分かりました。
高崎にある群馬音楽センターの階段のミニチュア版なのです。
2019年に訪ねたブログの
この写真の階段。
どうしてここにレーモンドのエッセンスがあるのか訪れている時には分かりませんでしたが、帰って調べてその理由が判明しました。
成城大学の建築について新しい部分では3号館の山下設計や講堂改修の日建設計の名前がすぐに出てきますが、それ以外の古い校舎の設計はなかなか情報がありません。
東京建築アクセスポイントというサイトで
成城大学見学ツアーの記録を見て、そこで初めて設計者の増沢洵の名前を知りました。
wikipediaの
増沢洵の項目を見たのですが、成城大学について書かれているのは「1977年 成城学園の建築で日本建築学会賞」という略歴の1行のみ。
そこから増沢デザインという増沢洵氏のご子息幸尋さんのサイトで「増沢建築設計事務所の記録」に行きつきました。
その記録も年代別に建物の名前が書かれているだけのそっけないものですが、そこからなんとか成城大学の名前があるものをピックアップしてみました。
増沢建築設計事務所による成城大学の建築物一覧
1958 1号館・第2体育館
1963 2号館
1967 50周年記念講堂
1968 旧図書館(現在は4号館)
1970 旧3号館(2007年に山下設計の設計で建て替え)
1977 5号館
1979 中学校第2校舎(2021年にリノベーションで大学9号館になる)
1980 本部大学食堂棟
1988 新図書館
1991 中学校音楽ホール(ここまで増沢洵氏の設計・2020年10月に歴史記念館となる)
1995 7号館(幸尋氏の設計と推測)
1996 スポーツセンター (幸尋氏の設計と推測)
増沢洵氏は1990年に65歳で亡くなられています。年齢から考えると1988年の新図書館までは関わっておられたと想像します。
1995年以降の2点については後を継がれた幸尋さんに拠ると考えて差し支えないように思います。
成城大学は1~9号館までしかありませんので、こうして見ると現在でも3号館と8号館以外は増沢親子の設計の校舎が使われていることが分かります。
以上を大学サイトのキャンパスマップにまとめてみました。(一次資料に基づかない推定が含まれることをご承知おきください)
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いろいろな大学の建築を見て来ましたが、ここまで長年一つの設計事務所に設計を任せて来たキャンパスというのは記憶にありません。
成蹊大学と三菱地所設計がわりとこんな感じですが、あれは大学創立者の岩崎弥太郎と系列会社の関係なのでまあ理由は分かる。
学習院大学と前川國男という関係もありますがここまでの偏りではありません。
さて、成城学園歴史記念館の階段とレーモンドの群馬音楽センターの階段との類似についてです。
増沢洵氏のwikipediaの履歴にこうありました。
・1947年 レーモンド設計事務所入所。アントニン・レーモンドに師事。
そしてなぜか成城大学関連がひとつも記載されていない簡易な作品リストの中に「群馬音楽センター」の文字がきっぱりと書かれていました。
増沢洵氏はレーモンド事務所にいるときにあの階段に関わっていたんですね。歴史記念館の階段が師匠レーモンドへのオマージュであることは疑う余地がありません。
ただ、残念ながら8号館と歴史記念館の設計者についてはまだ行きつけてはいないのでもうちょっと調査を続けなければなりません。
【追記】
その後の調べで、成城学園歴史記念館の建物が成城学園中学校のミュージックホールとして1991年に建てられたことが
判明。
改めて
増沢建築設計事務所の作品リストの1991年の項を見ると確かに「成城学園中学校音楽ホール」の文字がありました。
1991年は増沢洵氏がなくなる前年ですが、幸尋さんの年齢・経歴などから音楽ホールの設計も増沢洵氏が主体と考えるのが妥当なように思えます。
ということで、建築物リストとキャンパスマップの一部を修正しました。
マップにある13の建物のうち、3号館と8号館を除く11の建物が増沢父子の作品でした。増沢率84.6%。残るは8号館の設計者だけです。