
始まりは11年前の2016年に見つけたこちらの階段でした。神楽坂上交差点のすぐ脇の安養寺と交番の隙間の路地を入った先にある階段。

上の方でちょっとカーブする佇まいも良かったのですが何といっても手すりの支柱の形状が独特でした。
後で
「装飾のある柱を持った神楽坂の階段」というタイトルでブログを1本書きました。
写真には「中央に手摺が立てられているのですがその柱が銅でできているようで、仏教的な葉っぱの装飾がされた鋳物です。
裏道の目立たない階段がなぜこんなに作りこまれているのか。
近くにお寺もあるのでその関係かも知れません。かつては参道的な階段だったとか。後でもうちょい調べます。」と書いています。
後で調べますと書いていますがもちろんすぐに忘れて調べてなどいません。

それから11年が過ぎた2025年の2月末に同じ装飾のついた階段を高田馬場近くの神田川沿いで偶然見つけました。11年ぶりに神楽坂のことを思い出しました。
この手すりがある階段が神楽坂のあそこ1か所だけの「固有種」ではなく全然離れた別の場所にあったことに驚きました。
神楽坂と違って近くに寺らしきものもない。ひょっとするともっと広範囲に汎用的に使われている仕様なのではないだろうか。
その後の検索で都内の階段を収集しているブログやnoteですぐに3つほど存在を確認できたので晴れた日に自転車で見に行きました。

最初のは高田馬場駅の東、早稲田通りと明治通りの交差点南西角のサンパークマンション前の小さな階段
❶。

階段脇の擁壁に流鏑馬の絵がモザイクタイルで書かれていることからその筋の人には「流鏑馬階段」と称されることもあるようです。

レンガ造りの階段にはあの支柱が。
そもそもこの装飾は何を表しているのか。仏像の台座(蓮台)などに彫られる蓮華の文様に見えますが今一つ確信が持てる資料が見つかりません。
一番上で花弁が下を向いているのもちょっと気になる。まあでも正解が分かるまでこの文様は蓮華だということにしよう。
それでこのタイプの支柱を持つ階段を「ロータス階段」と呼ぶことにしました。

流鏑馬階段の上には馬頭がありました。神田川沿いの階段の上にはリスがいました。ということはロータス階段は蓮華の支柱と動物のオブジェがセットになっているのか。
神楽坂はどうだったかストリートビューで確認しようとしましたが画像はありませんでした。残念。motoさん、ちょっと見てきて。

交差点方向を見下ろす馬の頭。それにしてもこのシリーズは本当に誰がどういうコンセプトに基づいて作ったのか謎過ぎます。

続いて先月見た神田川沿いの階段
❷にもう一度行きました。2つの階段は5分も離れていません。

2016年のブログでは支柱の素材を銅と書いていますが、そんなわけはなくて鉄を主体とする合金に緑青っぽい色を塗装したもののようです。

一番上にはリス。

リスが見ている神田川方向。複雑な地形の場所でした。

3つ目の階段
❸はそこから1.4km離れた下落合4丁目。神田川の対岸の東長谷寺薬王院の西の塀に沿ってありました。
ちなみに赤い丸付き数字は最後に載せる地図の番号と一致します。

この階段は途中4度ほど方向を変える長いものでした。高低差も15mくらいあったような。

ロータス支柱は上の方は塗り直されていました。なぜ全部やらなかったのか。

長い階段で脚がくたびれかけたころにやっと天辺と空が見えました。上で待っているのはウサギか?

ウサギでした。横にはフクロウもいました。

神田川方向は視界良好。ウサギとフクロウって捕食する側とされる側ですがここではそういう関係ではないようです。

せっかく上りましたが下に自転車が置いてあるので戻ります。

4つ目の階段
❹は薬王院の階段
❸を上った少し先の場所にありました。下落合4丁目14の道路標示があります。登った左上の老人ホームが4-12-2です。

階段の上には他と同じように円柱の車止めがありましたがその上にあるはずの動物のオブジェがありませんでした。

階段下の突き当りに見えるのが聖母病院です。過去に見て来た階段の中でも特に何もない住宅地の中の特に重要でもない場所にある階段でした。
今回新たに3つのロータス階段を訪ねるにあたりいくつかの階段ブログの情報を参考にさせていただきました。
中でも「
東京の階段 DB」ブログは圧巻の情報で新宿区だけでも244もの階段がありました。(ブログ主は早稲田大学の研究者で
「東京の階段」の著者の方でした)
先ほど244件全ての写真を確認して少なくともこの他に5つのロータス階段があることを確認しました。(残念ながらその内の2か所は区画整理で消滅していました)
ロータス階段については「90年代に新宿区が整備した階段でよく見られるタイプ」と簡潔に記されていました。
この支柱がある階段はどのように選ばれたのか、蓮華の装飾にどのような意味があったのかなどを知りたいのですが、30年前の事業となると区役所に行っても調べるのは難しそうです。
とりあえず機会を見て残り5つの階段の写真を撮って来るつもり。

高田馬場周辺の4つのロータス階段の位置です。
「東京の階段DB」で新宿区の全階段を見ていたら
❷の階段から100mも離れていない場所にもうひとつあったことが分かりました。先に分かっていれば寄れたのに。残念。