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ありゃりゃサンポ

近現代の建築、町並みと橋が好き。
一日八千歩の散歩の忘備録。美味しいご飯と音楽と。
東京都全域をGPSで塗り潰し中。

一橋大学 伊東忠太となかまたち

2023年06月15日 | キャンパス建築巡り

国立駅から緑あふれる学園通りを歩いて数分。一橋大学の国立キャンパスにやってきました。
正門から入って50mほどは背の高い杉並木の間を進みますが緩やかなカーブと木立のせいでキャンパス内がほとんど見えません。何が現れるのかわくわくする演出です。

ロータリに到達すると視界が180度開けます。そして右手の一番近くにメインイベントである兼松講堂が見えます。
まずは思っていたのと違うその大きさに驚きます。向こうから歩いて来た教授風の型を縮尺代わりに入れて写してみました。

正面から。何度も写真では見ていましたがもう少しコンパクトに見えていました。何度経験してもそう感じることって多いです。人は小さく見積もるもの?
一橋大学は明治8年に商法講習所として誕生します。名称を変えながら都内を何か所か移転。関東大震災で神田一ツ橋にあった校舎を失った後、昭和2年に国立地に移転します。
移転時の名称は東京商科大学。この兼松講堂は移転時に建てられた建物ので唯一現存しているものです。ロマネスク風の安定感のあるスタイルが素敵。

大きさの次に驚くのがその状態の良さです。築後80年を経た2004年に大規模修繕が竣工していますが、そこから20年後でも状態は完全と言えるほどです。
東大本郷、駒場、東工大、農工大、学芸大と都内の国立大学は一通り見て、一橋大学が最後となりましたが、古い校舎の保存の良さではトップクラスです。
ロマネスク様式特有の連続した半円のアーチが美しい。東大みたいにゴシック寄りになるとこれが尖って来ます。

設計は伊東忠太。なので建物のあらゆるところに謎の怪獣が組み込まれています。
ロマネスク様式が盛んであった時代のヨーロッパでは、まだ土着の精霊信仰が残っていたのでこのような謎の怪獣が教会建築に受け入れられました。
怪獣好きの伊東忠太が怪獣をくっつけ安いロマネスク様式を選択したのは当然の流れだった、という話は藤森照信の解説で読みました。



兼松講堂に来るなら内部にも入れるタイミングでと思っていました。この4月に一橋大学管弦楽団の演奏会があって行くつもりだったのですが大雨で断念しました。

アーチ越しに見るロータリー。右手に見えるのが本部です。

西洋庭園風の池越しに見えるのは附属図書館の入っている時計台棟。以下の建物は伊東忠太門下の文部省建設課陣によって設計されました。

昭和2年に兼松講堂で伊東忠太の思い描く基本デザインが提示されて、後はそれをベースに数年かけてキャンパスを仕上げて行ったような印象です。

図書館前のロビー部分。

全体を貫く半円のモチーフ。天井の廊下もやわらかいカーブで仕上げられています。

同じく昭和5年に完成した本部棟。

ポーチ上部と階段踊り場からの光がロビーを照らします。

日傘と時計台。

本部裏手。ロータリーから奥には戦後から近年の校舎も並んでいますが基本的なトーンはなるべく保つように努力されています。

本郷キャンパスの内田ゴシックとは建物の印象がまったく違うのに使われているスクラッチ煉瓦はほとんど同じものに見えます。

緑濃いキャンパスに立つ矢野二郎像。日本における商業教育の開拓者。草創期の校長を務めました。
余談ですが、私は未だかつて一橋大学の卒業生と知り合ったことがありません。他校と交流のあった学生時代にも社会人になっても。けっこうレアな存在なのかな。

グラウンド。

昭和7年に建てられた「別館」と呼ばれる建物にドーマーのついたいわくありげな木造建築がくっついていました。何かと思ったらトイレでした。

旧門衛所。昭和6年。趣きのあり過ぎる佇まいで有形登録文化財に指定されています。

学園通りを挟んで反対側にある東キャンパスへ。道路の突き当りに見える小さな参画が復元された旧国立駅駅舎。

東本館。戦時中、大学が陸軍に接収されていた時代には電波兵器練習部隊の予科校舎として使われていました。

斜めに見る東1号館。背丈が低いのがロマネスクの基本ですが、それにしても昭和初期の国立なので土地にも相当余裕があったからできた計画ではないでしょうか。

東1号館。近年の建物も色調や時計台上のロンバルディア帯で伊東忠太の遺志を伝えます。

一橋大学は若干舐めていたのですがとんでもなく美しいキャンパスでした。次回は本当に兼松講堂の中に入れる日に行きたいと思っています。
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