金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】隣国の自由と民主主義の危機

2019-08-29 07:05:53 | 金融マーケット

 このブログを始めた時に、最初に取り上げたテーマが「民主主義の賞味期限」です。今の隣国を見ていると、民主主義がひどく儚いものであることを感じざるを得ません。

 そもそも、有権者が選挙で人気のある候補者を選ぶだけでは、民主主義国家は成立しません。人気があっても、きちんとした資質を持ったリーダーが選ばれなければ、民衆の声に右往左往するだけのポピュリズム政権が誕生するだけとなります。ちゃんとした民主主義国家が成立するためには、民主主義を支えるエリート集団=ノブレスオブリュージュの存在が不可欠です。優秀な官僚組織、国の経済基盤・技術基盤を支える民間企業組織、正確な情報を国民に提供し続けるマスコミ、そしてそれらのエリート達を育てる教育機関がそれに該当します。

 未成熟な国家を、とりあえず安定させる手っ取り早い方法は、独裁による統治です。典型的なのは軍事政権で、軍隊という圧倒的な暴力装置を背景として、一人のリーダーに権限を集中させ、国民の反対や我儘は許さない統治のやり方です。この独裁政権時代を通じて、徐々に優秀な官僚組織や、強い経済基盤や、世界で競争できる企業を数多く育てることが出来れば、どこかの段階で、独裁政治⇒民主政治へ移行するというのが理想的な体制移行となります。

 しかし、大抵は理想通りにはなりません。なぜなら、一度独裁者になった者は、自分の権力を死守しようとするのが人間の性だからです。自分の好き勝手にできる世界を、敢えて変えたいと思う権力者がいるはずがありません。また、次の世代を担う後継者が育ってきたら、それを粛清してしまうのも独裁者の性というものです。

 北朝鮮のことを言っているのではありません。隣国の同盟国、韓国の歴史を振り返っているのです。軍事独裁政権により安定を保っていた韓国は、民主化運動により新たな時代へ突入したものの、軍事政権時代への復讐心から、かつての権力者たちを死に追込み、かつての政権への協力者を政治的に粛清してしまいます。その後、保守⇒革新⇒保守‥の政権交替時でも同じことが繰り返され、いつまでたっても、国家基盤を支えるノブレスオブリュージュが形成されていません。

 イングランドで言えば、ピューリタン革命以後の世界と同じ。クロムウェルが恐怖と過激な思想によって大衆を先導する一方で、王制派が巻き返して、延々と混乱が続いた時代。現在の隣国とダブります。

 イングランドでは結局、デモクラシーがきちんと確立するのは、名誉革命の成立まで待たなければなりませんでした。(続く)


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