2015年の日本ダービーは、稀に見る「史上最強レベル」の馬たちが揃う世代でありました。二冠馬ドゥラメンテの他、GⅠ7勝のキタサンブラック、ドバイターフ(GⅠ)を勝ったリアルスティール、香港ヴァーズ(GⅠ)と宝塚記念を勝ったサトノクラウン。
レースは、逃げたミュゼエイリアンが前半1000mのラップ58秒8と流れる展開を創り出します。好位8番手で脚を溜めるドゥラメンテは、直線に入るとスムースに外に出して、そこから一気に前を捉えます。残り400mのところで早くも先頭に立って、そのまま後続を突き放して1馬身3/4差をつけて快勝。良の勝ちタイムは2分23秒2のレースレコード。まさに完勝劇の日本ダービーでありました。
しかし、レース後に骨折が判明。三冠確実と言われながら、その夢を果たすことはできませんでした。
ドゥラメンテは、4歳春に復帰して中山記念を快勝後に、ドバイシーマクラシック(GⅠ)では英ポストポンドの2着に、そして帰国後の宝塚記念でマリアライトの2着となったあと、ここでも靭帯損傷となって引退を余儀なくされました。
2016年に引退後、社台SSで種牡馬に。その後は順調に繁殖牝馬に恵まれながら、種牡馬としての実績も輝かしいものとなりますが、2021年8月に急性大腸炎で死去。まだ9歳の若さでありました。
なお、種牡馬ドゥラメンテの実績は、初年度産駒からGⅠ3勝のタイトルホルダー、2年目産駒からは牝馬二冠のスターズオンアース、3年目の産駒からは、牝馬三冠のリバティアイランド、菊花賞馬ドゥレッツァ、NHKマイルCを勝ったシャンパンカラー、ホープフルSを勝ったドゥラエレーデと、クラシックホース・GⅠホースを量産。2023年にはリーディングサイヤーに輝きました。もし、あのまま生きていれば、ディープインパクト・キングカメハメハの後継種牡馬として、日本競馬界を牽引するスーパースタリオンとして君臨していたはず。今更ながら早世が悔やまれます。
ところで、実は同世代の馬たちの種牡馬実績も凄いんです。
まずはキタサンブラック。初年度産駒から、あの世界最強馬となるイクイノックスを出しました。2年目産駒からも皐月賞馬ソールオリエンスが出て、種付料は一気に2000万円まで跳ね上がっています。
次はサトノクラウン。初年度産駒からダービー馬タスティエーラを出しました。この10年間、ダービー馬はディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒、ハーツクライ産駒に独占されていましたが、この時代を終わらせたのが種牡馬サトノクラウン。
さらにリアルスティール。2年目産駒からダート界の怪物フォーエバーヤングを出しました。フォーエバーヤングは、サウジダービーとUAEダービーを快勝したのち、米国ケンタッキーダービーに挑み、ハナ差ハナ差の3着で惜敗。秋には米国ブリーダーズカップクラシックへの挑戦が予定されており、遂に日本調教馬からダートの世界一の馬が誕生するかもしれないところまで来ています。
このように、2015年のダービーは、ドゥラメンテが完勝したレースではありましたが、ここに集った同世代の馬たちから、世界の競馬を牽引するような血脈が生まれようとしています。まさに「史上最強レベル」の世代であり、後の世からは「2015年は歴史的なダービーだった」と振り返られるレースとなる気がいたします。