金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【銀行破綻が続く】 米国のファースト・リパブリック銀行が破綻 日銀も動向を注視中!

2023-05-02 11:27:58 | 金融マーケット

 米国西海岸の地銀大手ファースト・リパブリック銀行が破綻しました。今年に入って、これで米国内ではシリコンバレー銀行、NYのシグネチャー銀行に続いて3例目となります。

 以下は、読売新聞報道からの抜粋です。

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 米連邦預金保険公社(FDIC)は1日、米地銀ファースト・リパブリック銀行(カリフォルニア州)が経営破綻したと発表した。3月に破綻したシリコンバレー銀行(SVB、カリフォルニア州)を上回り、2008年のリーマン・ショック以降で最大の米銀破綻になる。発表によれば、米銀大手JPモルガン・チェースがファースト・リパブリック銀の事業を買収し、預金や支店業務を引き継ぐとしている。

 ファースト・リパブリック銀の資産規模は昨年末時点で約2100億ドル(約28兆円)で全米14位。SVBの16位を上回る。4月24日の決算発表で、3月中旬以降、約1000億ドル(約14兆円)の預金が流出したと発表した。市場予想を上回る預金流出だったことで信用不安が高まり、発表後、ファースト・リパブリック銀の株価は約80%下落していた。

 米国では銀行が破綻した場合、1人当たり原則25万ドル(約3400万円)までの預金が保護される。大口顧客が多いファースト・リパブリック銀は保護対象外の預金を多く抱えており、破綻を懸念した利用者が預金を引き出したことで資金繰りに行き詰まった。

 米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)が進めてきた急速な利上げによって保有する有価証券の価格が下落し、巨額の含み損が生じたことで破綻に追い込まれる金融機関が相次いでいる。3月にはSVBに続いてシグネチャー銀行(ニューヨーク州)も破綻に追い込まれた。経営不安が高まったスイス金融大手クレディ・スイスは、スイスの金融最大手UBSに買収されることが決まった。

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 今回の米国内の銀行破綻の特徴は、リーマンショック時のような「不良債権」を抱えての破綻ではなく、急激な預金引出しが発生したための「資金繰り破綻」であります。もちろん、資金繰りが悪化した背景には、急速な業績悪化がありますが、いわゆる「債務超過」になった訳ではありません。リーマンショック後に施行されたバーゼルⅢ規制で、世界中の銀行は、当面十分な自己資本を堅持することを義務付けられていますので、預金者が慌てさえしなければ、簡単には破綻状態にはならないはず、でした。

 しかし、SNSなどによる噂ベースの情報の広がりのスピードが想定を超え始めており、また24時間365日のリアルタイム決済システムが当たり前になった現在では、預金引出しの速さが、バーゼルⅢの想定を遥かに超えてしまっていることが、今回の一連の『銀行破綻』の背景になっているのです。

 この3行ともに、『債務超過』の状態ではないため、救済する銀行が出てきているのが、大きな混乱に至っていない理由。銀行が倒産してしまうと、預金者保護には限界があり、上記記事のように米国では、1人当たり25万ドルという制限があります。日本でも1人当たり1000万円が制限ですから、それ以上預けた預金がパーになってしまう訳ですが、今回のように他の銀行に買収される場合には、銀行倒産ではありませんので、預金は全額保証されます。

 なお、一連の銀行破綻のトリガーは、FRBによる昨年来の急激な金利上昇施策が原因。リーマンショックとコロナ禍によって、10年以上も異常な金融緩和状態が続いていたため、健全なALMマネジメント(資産・負債マネジメント)が緩んだことが背景にありますが、けして債務超過になった訳ではなく、むしろ久しぶりの金融引締めで、預金者が不確定な情報でパニックになりやすい状態に陥ったことが破綻を生んだということ。そして、その預金者の不安定な精神状態は、まだまだ続くと思います。

 

 こうした事象は、対岸の火事ではありません。日本でも、いつでも起こり得る事象であります。ちょっとした『風評』が流れただけで、24時間365日のインターネットバンキングの仕組みの中では、あっと言う間に預金流出が起き得ます。1997年の北海道拓殖銀行の破綻、山一證券の破綻時には、朝9時~夕方3時までの窓口営業だけでも、大変な預金引出し騒ぎが起きましたが、今同じことが発生すれば、問題の拡大スピードは、あの時の数百倍、数千倍となるでしょう。

 

 日本銀行も、これからのFRBの金融政策動向や為替市場を横目に見ながら、慎重な対応を取ることになりそうです。米国を追いかけて、慌てて金利上昇に向かわなかった判断は、今のところ『吉』と出たようです。

 


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【GⅠ回顧】 天皇賞春・青葉賞・クイーンエリザベス2世C・チェアマンズスプリントP

2023-05-02 03:12:16 | 競馬

 まずは府中の青葉賞勝ったのは、1番人気のキタサンブラック産駒スキルヴィング中団後方待機で脚を溜めます。逃げたアサカラキングの前半1000mのラップは1分0秒4とややスローで全馬余力を残します。この結果、直線はヨーイドンの瞬発力勝負となりましたまず逃げ粘るアサカラキングを、ミッキーロケット産駒メイテソーロが交わして先頭に立ちますが、すぐにその外からハーツクライ産駒ハーツコンチェルトとスキルヴィングの2頭が抜け出して、激しい競り合いに。スキルヴィングが1/2馬身差をつけて勝利。良の勝ちタイムは2分23秒9。2着ハーツコンチェルトから2馬身差の3着には、最後方から追い込んだキズナ産駒ティムール、1馬身3/4差の4着にメイテソーロ、1馬身3/4差の5着にアームブランシュ

 勝ったスキルヴィングは、堂々たる横綱相撲で勝ち切りました。ロングスパート戦も、瞬発力戦も、両方対応できるところを見せましたので、地力は皐月賞組と差はありません。またまたキタサンブラック産駒であります。2着ハーツコンチェルトも同様で強さを見せてくれました問題は、このあと中三週で再度、府中芝2400mという消耗戦の舞台に臨むこと。もし、このハードルを超えることができれば、ソールオリエンスと並ぶ名馬誕生ということだと思います。

 

 

 そしてGⅠ天皇賞春勝ったのは、ディープインパクト産駒の4歳牡馬ジャスティンパレス好スタートから中団待機で脚を溜めます。タイトルホルダーが先頭に立ったあと、大外からアフリカンゴールドが猛然と先頭を奪って主導権を取ります。前半1000mのラップは59秒7で、稍重の馬場としてはハイペースとなりました。1000mを越えたところで、アフリカンゴールドがズルズルと下がっていき、タイトルホルダーが再び先頭へ。その後ろをアイアンバローズ、アスクビクターモア、ディープモンスターなどの先行陣が追いかけて、タイトルホルダーに息を入れる暇を与えません

 そうこうしているうちに、タイトルホルダーが先頭から脱落して、その外からキズナ産駒の6歳牡馬ディープボンドが先頭に立ちます。直線に入ると、そのまま押し切りを図るディープボンドの外からジャスティンパレスが並びかけて、これを交わし抜け出して、後続に2馬身1/2馬身差をつけて完勝。稍重の勝ちタイムは3分16秒1。2着ディープボンドから1馬身差の3着には、後方から追い込んできたオルフェーヴル産駒の7歳牡馬シルヴァーソニック、1馬身1/4差の4着にはノヴェリスト産駒ブレークアップ、クビ差の5着にはハーツクライ産駒マテンロウレオ

 勝ったジャスティンパレスは、4歳になって大きく成長して、新しい京都の天皇賞春を完勝長距離界のトップに立ちました。この馬は、スピードの持続力と瞬発力を併せ持つスーパーステイヤーになる可能性が高く、将来がとても楽しみになりました。2着のディープボンドは、これで天皇賞春を3年連続で2着という悔しさ。すでにGⅠ級の実績馬なのに運がありません。3着シルヴァーソニックは、ここへ来ての充実ぶりを改めて示してくれました。強いステイヤーだと思います。なお、種牡馬ディープインパクトは、この勝利で国内GⅠ(J-GⅠを含む)が72勝目で、種牡馬サンデーサイレンスの71勝を超えました。いよいよ、偉大な父を超える瞬間(産駒のJRA勝利数2749勝)が近づきつつあります。

 ちなみに、レースを途中で止めたタイトルホルダーは心配です。何もなければ良いですが・・。また、タイトルホルダーとともに前々でレース途中まで淀みないペースを作った、アスクビクターモアアイアンバローズなどは、最後の直線では力が残っていませんでした。前々で競馬をしていた馬たちは、次のレースでは見直しで良いと思います。

 

 

 香港のチェアマンズスプリントP勝ったのは、1番人気の香港馬のスワイネス産駒ラッキースワイネス好スタートから2番手追走へ。直線に入ると早め先頭に立って、そのまま後続に3馬身1/4差をつけて圧勝。良の勝ちタイムは1分8秒38。2着には後方から差してきた香港馬クーリエワンダー、さらに1馬身1/4差の3着には香港馬ウェリントン

 ラッキースワイネスは、これで名実ともに世界のスプリンターとなりました。日本の安田記念への出走プランもあるそうですので、楽しみにしたいと思います。

 

 最後は香港のクイーンエリザベス2世C勝ったのは、圧倒的1番人気の香港馬アクラメンション産駒ロマンチックウォリアー好スタートから3番手追走へ。逃げた香港馬マネーキャッチャーのラップはかなりのスロー。ロマンチックウォリアーにとっては、どこからか仕掛けるかが難しいレースとなりました直線に入ると、ロマンチックウォリアーが逃げ粘るマネーキャッチャーを早めに交わして先頭に立ち、そのまま後続に2馬身差をつけて完勝。良の勝ちタイムは2分1秒92。2着には最後方から追い込んできたディープインパクト産駒の5歳牡馬プログノーシス、1/2馬身差の3着には逃げたマネーキャッチャー

 勝ったロマンチックウォリアーは貫禄の勝利で、この馬はぜひ欧州遠征をしてほしいと思います。2000mでは世界トップクラスにいることはハッキリしていると思います。2着のプログノーシスは、超スローにも関わらず、よく後方から差してきたと思います。2200~2400mも守備範囲に見えましたので、このあとは宝塚記念も有り得ると。イクイノックスさえいなければ、チャンスはありそう。

 

 


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