第86回東京優駿をめぐる、もう一つのドラマを忘れておりました。それは、ミルコ・デムーロの想いです。
もともと、サートゥルナーリアの主戦騎手はミルコでした。暮れのGⅠホープフルステークスを勝ったのもミルコ騎乗によるもの。しかし、年初早々、オーナーサイドの意向で、Cルメールへの乗替りが発表されて、ミルコはこの馬から降ろされてしまいました。この後、ミルコは絶不調に陥り、Cルメールに大きく水をあけられることになりますが、NHKマイルCにてアドマイヤマーズでルメールに雪辱、さらに先週はオークスをラヴズオンリーユーで勝利し、クラシック完全制覇を成し遂げることになりました。
そのNHKマイルCでルメールが騎乗停止になった際、サートゥルナーリアがまたミルコに戻る可能性もあったはずですが、オーナーサイドの意向、すなわち吉田勝己氏の意向で、若き天才Dレーンが選ばれることになりました。その時のミルコの心情はいかなるものだったのでしょうか?
日本ダービーは18頭フルゲートであり、どの陣営も一発かましてチャンスをものにしたいというレースです。したがって、激しいぶつかり合いはもちろんのこと、途中の位置取りでもトリッキーな動きが頻繁に見られる難しい展開となります。だからこそ、レース経験の豊富な騎手が、出来るだけ乗替りをせずに本番に向かうことが勝つ条件と言われているのです。今回のケースではサートゥルナーリアを最もよく知るミルコが第一候補だったはず。
皐月賞では、ミルコ騎乗のアドマイヤマーズの横を、ルメール騎乗のサートゥルナーリアが一瞬で抜き去っていき、何もできませんでした。今回騎乗するアドマイヤジャスタは、ホープフルSではルメールが騎乗してサートゥルナーリアと競り合って2着だった馬。復活したミルコが、今回も何も出来ずに負けるとは思えません。
ミルコがサートゥルナーリアを抑えて勝利した場合、これはこれで感動を呼ぶドラマになると思います。