Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

木の精霊

2011-12-19 17:54:42 | よしなしごと
いつも歩いている通勤路の途中に梅の木が1本あり、その木が早春に咲かせる
花を愛でるのを毎年楽しみにしていた。それほど大きな梅でもなく、ごく普通の
梅なのだが、毎年きれいに花を咲かせてくれていたので、梅の季節には会社の
行き帰りにその花を見ては「あぁ、もう梅が咲く頃になったのか」と、可憐な
梅の花の美しさに目を細めるとともに、早く春が訪れてくれることを祈っていた。

先週の前半のある朝、その梅の枝がすべて切り落とされているのに気がついた。
枝だけでなく、木の半ばから上の方まできれいに切り落とされていて、なんだか
寒々しい格好になってしまっていた。あぁ、剪定でもしたのかな、でもきっと
しばらくすれば、また枝がたくさん生えてくるだろう、元気に育つといいな。
それくらいに思ってその梅のそばを通り過ぎて、いつものように職場に向かった。

その夜、すっかり暗くなった通勤路を足早に歩いて帰宅していた途中、一人の
女性がどこか物悲しげに、しみじみとした風情であたりを見ているような姿が
視界の端に入った。ん?こんな寒い夜中に何だ?と思ってその方向を見てみると、
枝が切り落とされた、あの梅の木だった。あれ?確かに女の人だと思ったけどな、
見間違いだったか。変なこともあるもんだ、と思って、そのまま通り過ぎた。

そして今朝、いつもの通勤路を歩いていたら、あの梅の木がなくなっていた。
どこかに移されたのか、それとも処分されてしまったのかはわからないが、
梅の木があった場所は、きれいに更地にされてしまっていた。もしかして、
あのときに見た女の人は、梅の木の精霊だったのだろうか。自分がここから
いなくなってしまうことを知って、名残惜しい気持ちで景色を眺めていたの
だろうか。そう思ったら、なんだか悲しい気持ちになると同時に、木の精霊と
いうのは本当にいるのだな、と実感することができた。なにせ偶然にしては、
あまりにできすぎているからね。

話は変わるけど、果物が甘いのは、鳥や獣に食べさせることで、種を少しでも
遠くに運ばせるため、という話を聞いたことがある。それが本当なのであれば、
植物というのは知覚機能があるだけでなく、思考力も自己変異能力もあると
いうことになる。鳥や獣が果物を食べた後に遠くに移動することや、糞とともに
排出された種が発芽することを知覚できなければ、わざわざ果物の中に種を
入れて遠くに運ばせるなんてことをするわけないのだし。植物はみな、動物とは
まるで違う形態の五感や思考回路を持っているのだろう。そして、動物と同じ
ような感情も、持っているに違いない。そんなことを考えさせられた。