新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

Surviving Sepsis Campaign 2012 の簡単な記載

2013-02-19 22:36:49 | 医学系

こんばんは

 

いや~今日は寒かったですね。雪も降りましたし・・・。

まぁ、それ以上に寒い話もあるのですが・・・・

 

さて、本日は先ほどもコメントをいただきましたので「Surviving Sepsis Campaign」の記事を簡単にまとめてみようかと思います。ただ、専門的すぎる内容なので医療従事者むけになっているかもしれません。

 

・・・・まぁ、医療従事者はBlogではなくて自身で論文を見て確認されるのだと思いますが

ちなみにらでというのは推奨度でGrade1は「するべきである」、Grade2は「したほうがよい(推奨)」です

 

Sepsisというのは簡単に言いますと敗血症(菌が血液中に存在し、それにより体に有害な反応が生じている状態)のことです。専門用語では「感染症に伴うSIRS」と書けますが、基本的に今回は敗血症と診断されなくても「感染による全身性炎症」があることが疑われる(実際に血液培養を2セットとっても陽性率は半分程度と言われて:この論文中にも書かれています)状況であれば、これに従い対応します。

 

特に今回のSurviving Sepsis Campaignに関わってくるのは「ショックになった場合(血圧が低下し、重要な臓器に血液が流れなくなった状態)」と「臓器不全(腎臓、肝臓、肺、血小板減少、凝固異常)」を認める患者です。

今回、血圧の低下については「収縮期血圧が90mmHg以下」「平均動脈血圧(MAP:収縮期と拡張期の中間くらい)が70mmHg以下」などです。

 

初期対応として大量の輸液を行うのですが、1) 中心静脈圧(CVP) 8-12 mmHg 2) MAP 65以上 3) 尿量 0.5mg/kg/hr以上 4) 中心静脈 もしくは 混合静脈血の 酸素飽和度が各々70%, 65%以上 (grade 1C)
となっています。これはショック状態であれば酸素がより使われるので、これらは低下しています。あと上昇した乳酸値が正常に戻る(grade 2C)というのもありますが、これもショック状態では嫌気性解糖状態になるので乳酸が上昇します。それを指標にしています。

その後感染源をルーチンで検索し、早期治療を行います。

敗血症の診断のために、血液培養を最低2セット(1セットは経皮的に、もう1つはできれば中心静脈カテーテルから)採取し、45分以上の抗菌薬の投与開始が遅れてはならない(grade1C)。

侵襲性のCandida(カビ)感染が疑われるならば、β‐Dグルカン(grade 2B)とマンナンの検索(grade2c)を行ってもいいかもしれない

 

抗菌薬の投与は1時間以内に開始し(ショック状態はgrade 1B、重症Sepsisはgrade 1C)、当初は推定病原菌にきくような「広域抗菌薬」を含んだ単剤 or 併用抗菌薬治療を実施する(grade 1B)

状況を見てde-escalation(耐性菌を増やさないように、偽膜性腸炎やVREなどの感染を起こさないように)抗菌薬の変更を考慮する(grade 1B)

 

だんだん寒くなってきましたw

ちなみにこの抗菌薬の領域は併用療法のことやプロカルシトニンなどのマーカー、免疫不全患者やグラム陽性球菌の感染を除いて7-10日間程度で終了するなどの記載が書かれています。

 

実はこの辺は常識の範囲で収まってくるレベルです。

すいませんが長いので、少しとばします。

 

基本的に解剖学的な感染源がわかれば、そこをコントロールする(当たり前ですね。grade 1C)

細胞外液を初期輸液として用いる(grade 1B)が、HES(などのデンプンというか・・・、そういう溶液)を用いてはならない(grade 1C)

 

で、大きなポイントは昇圧剤ですね。これまでもノルエピネフリンが第一選択(grade 1B)は変わってませんが、ドーパミンがここまで否定的に書かれたのは…いろいろ理由が書かれています

 

心負荷がかかることが推測され、RCTで生存に有意差が付いてしまったので推奨できない…という状況ですね

 

そういうこともあり、今日は第一三共のMRさんに「ノルエピネフリンをどうやったらうまく希釈できるか、推奨のやり方を体重別にわかるようなものを作ったら、これからすごく使われると思うよ(本社に言ってくださるそうです)」と言ってみました。

できたらいいなぁ・・・。現場としてはそのほうが・・・・。今まではキット製剤があるドーパミンが多用されていた日本ですが、ここまで書かれたら使いにくい。

低用量のドーパミンは腎保護で使うべきではない(grade 1A)

 

など、昇圧剤はいろいろ書かれています

DOB(ドブタミン)の仕様についても記載がありますが、個人的にショック患者で昇圧剤を使用するときは、僕は今までステロイドを併用していました。

低用量のステロイド(僕はヒドロコルチゾン 50㎎を1日4回)を使用していましたが、今回も輸液と昇圧剤でコントロールができるなら使用しない(grade 2C)。使用するなら持続点滴で(しかも今までは300㎎以下だったのに、200㎎と量が限定された)・・・などですね。

 

他に輸血のことや呼吸器の設定、腎臓などいろいろ書かれていますが、それは確認してください。

 

右手の小指が冷たくなって、痛くなってきましたw

 

個人的にあと1つ、血糖管理が昔は150㎎以下が目標設定だったのが、180㎎/dl以下・・・すなわち高血糖でなければよいとなっています。

110-140と140-180で差がつかなかった…というのが根拠です。

 

他にもいろいろ書かれていますが、たぶん明確に違うのは「昇圧剤」「ステロイド」「血糖管理」だと思うのですが。僕の戦略は他は変更することがなかったので・・・。

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

 

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4 コメント

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読みました (えがお)
2013-02-20 14:19:30
先生 寒い中 お疲れでした

読むことが出来ました

難しい単語に カナをふってくださり
ありがとうございます

このブログを読んで

医学の進歩感じました


お医師様は
日々新しく
勉強の連続なのですね

独身時代と結婚してからでは

生活しながら

ワークライフバランスの軸がぶれないように
するの大変ですね

昨日ニュースに 医学生のための
ワークライフバランスの軸を考える会が
あったと インターネットニュースで見ました



また ステキな記事 教えてくださいo(^-^)o

返信する
Unknown (アンフェタミン)
2013-02-20 22:20:53
>えがおさん
こんばんは、コメントありがとうございます

医師は基本的に勉強をし続けないといけない職業ですが、特に勤務医は最前線の知識を常にアップデートする必要があるので大変です。

まぁ、それも楽しいのですが。

独身時代と結婚後ではいろいろ難しいところもありますが、なんとかBlogも更新したいと思っています。

こちらこそ、ワークバランスを考える会の情報をありがとうございます

また、コメントいただければと存じます
返信する
ワークバランス (えがお)
2013-02-22 07:33:17
医学生に対して医師が 助言 経験談を語ることが先週 東京都内であったと医療、介護ニュースでありました

女性医師の出産
子育て中のベビーシッター利用
仕事と家事の両立

家事分担を分け合いながら
夫婦で 医師を続けるなどありました


ワークライフバランスは
夫婦で理解しあい 協力していくことの大切さ 学びました。
私は、ワークライフバランスが崩れ
主婦 子育て 家事しながら、夫の協力なしで仕事をしています。休日はのんびり スーパー銭湯で 心身共にリラクゼーションを心がけて
月曜日を迎えています
返信する
Unknown (アンフェタミン)
2013-03-04 22:11:42
>えがおさん
こんばんは、コメントありがとうございます

最近は男性も子育てに参加しているといいますが、やはり女医さんには出産を含めて男性医師が変わることができないところが多々あると思います。

そういう意味で「女性をサポートする環境」をもっと作っていかなくてはならないと思います

実は土日に草津に行きました。僕も温泉大好きです。

また、コメントいただければと存じます
返信する

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