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血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

僕の再生不良性貧血の説明(患者さん向け)2017年版

2017-12-08 20:00:00 | 患者さん用(説明の仕方シリーズ2017年版)

再生不良性貧血は骨髄の低形成と汎血球減少を特徴とする病気です。簡単に書きますと、血液を作る大元である造血幹細胞が減って、血液全体が減った病気です。

 

前の記事の骨髄異形成症候群が「血液の質」の問題に対して、再生不良性貧血は「量」の問題です。

 

原因には先天性のものもあれば、薬剤性や肝炎後などもありますが、基本的に成人で多いのは自己免疫により造血幹細胞が攻撃を受けて減ってしまうというものです。免疫抑制療法がよく効くとされている検査結果はいくつかありますが、この次に出てくる発作性夜間血色素尿症(PNH)型の血球があると免疫病態を反映するといいます。他、血小板低下型の患者さんとかTPO高値などが免疫抑制療法が効くといいます。

ちなみに今年のトピックスとしては「エルトロンボパグ」が再生不良性貧血に適応追加になったことです。エルトロンボパグはTPO受容体作動薬(血小板が減る病気である特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病:ITPの薬)ですが、TPOというのは血小板産生だけでなく

それでは、簡単な説明文書を作成します。基本的には前(僕の再生不良性貧血の説明(患者さん向け))と大きく変わらないと思います。もしよろしければご確認いただければと存じます(表現とかは変わっていますので)

 

 


 

Fさんは足の紫斑を主訴に近くの病院を受診され、血液疾患が疑われて当科に紹介となりました。

 

外来の採血では白血球が200/µl、ヘモグロビン(Hb)が7.8 g/dl、血小板が1.2万/µlと全ての血液の数値が低下していました(汎血球減少)。血液像という顕微鏡で血液を確認した検査では、好中球という細菌と戦う細胞が15%と減少しており、リンパ球という細胞は75%でした。

すぐに入院していただき、骨髄の検査を行いましたが、骨髄の検査では低形成骨髄(骨髄の細胞が少ない)状態で、芽球は0.6%と増えておらず、顆粒球系細胞は全体で15%程度と減っており、リンパ球が60%、形質細胞や肥満細胞なども目立っています。巨核球もほとんどありません。

形態的に明らかな異形成(おかしな血液細胞)はなく、今の時点では再生不良性貧血と診断しました(再生不良性貧血とPNH、骨髄異形成症候群は相互に移行する可能性があります)。

 

再生不良性貧血は造血幹細胞という血液の大元の細胞の数が減ってしまい、血液が作れなくなる病気です。原因は様々ですが、成人では何らかの原因で、自分の免疫細胞(細胞障害性T細胞)が造血幹細胞を攻撃することで起きると考えられています。

 

重症度ですが、好中球数は200/µl未満で、網状赤血球数は2万/µl未満、血小板も2万/µl未満であり、最重症と診断します。

 

重症度によって治療方針は変わります。軽症は経過観察でも良いですが、中等症ではシクロスポリン:CyAを使用した免疫抑制療法、やや重症は年齢によって対応を考えます。基本は治療指針にあるフローチャートに従います。ここからは重症、最重症の説明です)

 

最重症(重症)の場合、基本的な治療選択肢は2つになります。1つ目は同種造血幹細胞移植(骨髄移植)、もう1つは抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)を使用した免疫抑制療法です。

 

同種骨髄移植はリスクが高いですが、完治の可能性があります。一般には40歳未満で血縁ドナーがいる場合は積極的に進めます(過去の研究で40歳未満はATG+CyAと長期生存率が変わらない。完治するのであれば、移植を進めるのが基本的な考え方)。

一方、ATG+CyAは血縁ドナーが見つからない場合(非血縁ドナーでは生存率がATG+CyAより下がる)や40歳以上(年齢が上がれば上がるほどGVHDのリスクも上がり、移植の生存率が下がる)の場合に実施します。

 

Fさんは40歳未満ですので、ご兄弟でHLA(白血球の型)が合えば移植ができる可能性があります。ご兄弟はいらっしゃいますか?

 

Fさん:はい。弟と妹がおります。

 

そちらの方々が移植(骨髄の提供)について問題ないようであれば、HLA検査を行い、HLAの型が合うかを見てみましょう。あった場合は骨髄移植を念頭に進めていきます。なかなか時間が取れない状況だったり、HLAの型が合わなかった場合はATG+CyAの免疫抑制療法を行いましょう。

 


 

こんな説明になるかと思います。多分、前のものとあまり変わりありません。

現在、エルトロンボパグがATG併用療法の初回併用もできますし、効果に乏しい時の追加治療としても使用できます

添付文書 

適正使用ガイド

日経メディカルの記事

日経新聞の記事

 

エルトロンボパグを併用した時の比較がされてませんので、一概にこの説明が正しいわけではないのですが、基本的な考え方だと思ってください。ただ、エルトロンバパグの登場で先々治療指針の変更があると思いますが。

 

僕も1年半、血液内科の現場から離れていますので、エルトロンボパグの話がどういう方向に行っているか把握しきれていません(実際の状況を)。

 

そのうち血液臨床の現場に戻るつもりですが、またわかったら修正したり、コメントに書き込んだりします。

 

少しでもお役に立てれば幸いです。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 

 

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