新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

ど~でもよい話2:僕と漢方・・出会いと塞翁が馬

2008-04-28 22:08:36 | ど~でもいい話

さて、最後の記事です。

今日も傷寒論の読破を目指して、考えながら読んでました。

何を考えていたかというと、後輩たち(教えてと言っている後輩)に導入しやすいように西洋医学と傷寒論をどうやって結びつけるか。 記事の内容も西洋医学に翻訳すると「な~んだ」という内容が多いので。

そうすると導入しやすいし、僕も病院に漢方薬のレパートリーを増やせてうれしいし、後輩も知識が増える。僕の理解も深まるw

ちなみの僕は研修医のはじめは・・・まったく、漢方なんて興味なかったです。「眉唾」ものと思っていましたw

漢方との出会いも・・・まさに塞翁が馬です

 

僕はスーパーローテ1年目ですので(もともとやっていた13大学のひとつなので、まぁ関係はないですけど)、いくつかの診療科を研修します。俗に言う「マイナー診療科(すいません、ごめんなさい)」も研修したのですが、僕は診断技術を上げるために「放射線科」と「検査」を希望して、「放射線科」になっていました

ところが

「先生、○○さんがどうしても腎臓内科と放射線科を研修したいというんですよね」

「ほ~」

「で、先生。代わってあげてもらえませんか?」

こ、こいつら・・・。そういうわがままを通しますか?しかし、それで研修にでてこないとか言ったら困るんだろうしな~

貸し一だと思っておこう (地域医療でも面倒を見てほしいと言う理由で札幌から青森に変更になったと聞いております。これで貸し2w)

「わかりました。交代しますよ」

で、僕は皮膚科研修になったのだ。

 

皮膚科研修という事で予定を切り替えて「ステロイド外用薬の使用法」をメインで学び、他に応用が利きそうなものを学ぼうと考えて、1ヵ月半の研修を始めました。

因みにこのときの指導医M先生は、某大学病院の漢方(東洋医学?)の診療科に勉強にいっており、週一回外来をされていた。

 

皮膚科の研修中、最初のころ・・・怒り狂ってきた中年の女性がいました

「○△病院で診てもらっているのだけど、1年近く皮膚炎が治らない」

M先生は舌を見たり、話を聞きながら

「この薬を飲んでみてください」

と、漢方薬を処方。 内心

「まじっすか?ここで漢方かい!」

と思いました。

 

ところが翌週の同じ日、その女性がやってきて

「先生、あんなに長く患っていた皮膚炎が治ってしまいました」

と言い、お礼を言って去っていきました

このとき「恐るべし、漢方医学。これは学ぶべきだ」と思い、先生にその事を伝え、いろいろ教えてもらいました。

研修終了後も学会や、勉強会などに連れて行ってもらい、勉強会のCDやDVDなどもいただいたりして自己研鑽を積むこともできました。どちらかと言うと、皮膚科研修と言うより「漢方研修」。あの人だったらどんな薬を出すのか・・・とか、聞いていたし。もっとも、「一番初めは漢方は使わずに、二番煎じ以降にしときなさい」といわれていたので、今でも「急性期処方」以外は「二番煎じ」にしておりますが

 

しかし、この「出会い」も実は「同期研修医」のわがまま・・・から始まっていたりして・・・。

今でも思いますが、皮膚科研修できてよかった。ステロイド外用薬も「原則」に従い、思い切りよく使用しております。医務室にあった「Strongest」をすべて使用しきったのは私です。そういう疾患が多いんだものw

 

だから「一事が万事、塞翁が馬」と思うのです。

 

人間の人生なんて、最も都合のいいことが(その事が本人が)わからないように起きているだけだと思って生きています

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なかのひと 

現役のときの自信満々で受けた試験に落ちたのも(後期出願せずw)、おかげで医学部に入ったし・・・。うちの母校に入ったのも・・・何だかんだ言ってもいい仲間に出会えたし、あの大学に入ったから「こういう人間」にもなれたと思うし(いいのか悪いのかは、僕はわからないですけど)・・・。

人生って繋がっている上に、都合よく出来ているものだな~と思います。

 さて、明日は何をしよう。まぁ、時間だけは無駄にしないように気をつけよう・・・っと。

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医師教育制度はどうするべきか?

2008-04-28 21:34:16 | 医局制度改革・医学教育改革

記事二番目です

さて、僕は以前から「医療」「教育」の分野が好きだと書いてきました。実際、大好きですし・・・職場の準看護学院の授業など、「血液」以外にも「感染症」「膠原病」はやってもいいよ~という事で、担当になっております。

 教育というのは大事ですし、この分野に関しては「後生」を育て、日本の未来を作る・・・という意味では最も重要な仕事の一つだと思っています。 

 そういうわけで教育という分野に非常に興味があります。そしてそれを行うための組織にも興味があります。

そういうわけで、今日はこの話を・・・・。 キャリアブレインからです

「臨床研修病院削減」は医師不足助長  

医学部を卒業して国家試験に合格した新人医師に2年間の研修を義務付けている「医師臨床研修制度」が、今年4月に改正された。研修医を2年以上受け入れていない病院では、臨床研修病院の指定を取り消されることになったが、これでは「研修病院の“削減”につながり、全国的に深刻化している医師不足を助長する」と、医療関係団体が批判している。  

医師の臨床研修については、2004年4月に同制度が施行。医師免許取得後の2年間、臨床経験を積むことが義務化され、医師は全国の研修病院から研修先を選択できるようになった。 

しかし、設備が整って待遇も良い都市部の民間病院などに研修医が集中する一方、地方の大学病院などで医師不足が深刻化するといった問題が起こっている。  

厚生労働省は今年4月、研修プログラムの質の向上などを理由に制度を改正。臨床研修病院について、「2年以上、研修医の受け入れがないとき」には指定を取り消すという要件を盛り込んだ。また、3月26日付の医政局長通知では、「原則として、当分の間、臨床研修病院の新規指定及び研修医の募集定員の増員を行わない」ことも示している。  

これに対し、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)では「医師不足対策には、国が医師の絶対数を増やす決断をし、研修病院の充実を図るべき」と指摘。新たな指定取り消しの要件について、「地方の臨床研修病院を減らすことになり、医師不足を助長する」と批判している。 

また、新規指定や定員の増員をしないことについても、「新たに医師養成に挑戦しようという医療機関は歓迎すべきで、それを遮るような方針は不適当だ。研修制度を改正するなら、より良い医師研修を目指して、プログラムの審査や改善、財政的援助をするべき」と、研修病院の指定取り消し要件などの撤回を求めている。

更新:2008/04/28 16:25 キャリアブレイン

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この医師を増員する決断をする・・・というのは賛成です。

ただ、増員を決断したとして・・・どういう形で医師の卵を教育していくのか・・・という問題はあると思います。

この際、座学に関しては何も言いません。 医学知識に秀でた人がある程度の知識を話して下されればよいのですから

はっきり言えば「大学は勉強を教わるところではなく、自ら学ぶべきところ」であり、そもそも教育の質を医学以外の分野でも変えなくてはならないですけど・・・範囲を拡大しすぎないようにして・・・・今は医学に関してだけにします

座学に関しては、不足する部分は「自ら学ぶ」姿勢でなくてはならず、医学という人の命に関わる分野に関しては「人員を多くとって」「厳しく学生の成績をつける」のが本当は正しいのでしょう。

ですから、座学までは・・・本人たち次第でもいいのです。

問題は臨床実習にあります

僕が以前から言っている話ではあるのですが、今現在の状況では「医者を増やす」にも「大学病院」などにおいて「学生の指導をできる余裕」は大学病院で勤務する医師にはありません

何故なら「臨床」「研究」「教育」という分野だけでも大変な上、様々な雑用、そして大学病院であるゆえに「外の病院では行ってしまっている」看護師さんの実務の拡大・・・がなく、結局仕事量が最も多い職場の一つです。

それなのにもっとも安い給料で働いている医師でもあります

先日も書きましたが、朝から晩まで・・・患者さんを診ている大学病院の医師の給与は「600万~1000万」の間、教授が1000万くらい、準教授が900万・・・講師800万、助教600~700万です。

安いか、高いかといわれれば・・・年収300万円の人たちから見れば・・・きっと

「何言っていやがる。十分もらっているだろう」

と思われるかもしれません。 しかし、実際の手取りは更に下がるわけですから・・・少しでもよい生活をするならアルバイトをせざるを得ない。

しかも、だいたい医者は一箇所で働く事が少ないので、退職金がないため・・・実質生涯年収はかなり安いとも言われます

更に「他の病院」の医師も足りていないので、結局ある程度人がいる「大学病院」から派遣せざるを得ません。

僕が今いる場所では「医者が足りなく当直を回すこともできない」と一時期言っていました。

その状況下でどうやったら医者が増やせるのでしょうか?医大生を増やせるでしょうか?

・・・編入制度もOKです。しかし、誰がそれを教えるのでしょうか?

研修制度も変えなくてはなりません。根本からw

そうでなくては・・・この崩壊の波は止められないでしょう

先日、書きかけた「僕のアイデア」を公開します。まぁ、昔しゃべった内容だし・・・過去に書いたような気がしますけど・・もう一度。

先ほども書きましたが、座学に関しては概ね自己研鑽でも良いと思っております。

しかし、臨床実習からが重要になってくると思っています

実は学生時代に「CBTをつぶす」という目標を持って、動いていた時期がありました。まぁ、いろいろ仔細があり・・・動けなかったのですけど。

CBT(Computer Based Test)とは臨床実習に先立ち、実習可能な知識を持っているという確認の試験です。これと手技的な面を評価するOSCEというものがあります。

当時は「CBTを導入するのであれば、学生にもメリットがあるべきだ。これは臨床実習を行う知識があることの確認であり、これをクリアすれば、すべての病院で実習してもよいことになるはず。後輩たちのために今のうちに変えてしまおう」と思い、結構いろいろな場所へ学生の会議(体育大会)に参加していた際に話をしてみたりしていました。

これを利用します。

まず、CBTをクリアしたのであれば(あとOSCE)臨床実習はどこでもやっていいはずです。医者を増員するという決定がなされたのであれば、その増えた学年からはCBTクリア後はどこの病院でも実習できるようにします

今の研修医は「お客様」状態になっていることが多い(学生の延長か・・・といっている先生方も多い)ので、それと同レベルの内容ならば学生でも勤まると思います。

しかし、人は国家試験があれば気になるというものw

まぁ、僕は5年の1月末に「3月末までに100回受けたら100回受かるようにしておけ。それでなくては人の面倒はみれない」と、尊敬する先輩に言われて・・・1ヶ月で2回アプローチ:医師国家試験対策の問題集(臨床実習もやリながらですよ)を解きましたよ。 おかげで5年の終わりのMECは良かったですけど・・・。

それを思えば・・・一ヶ月でいけるか?(流石にそれは詰め込みすぎですが)

 いずれにせよ、国家試験があると気になると思うので・・・・そこでポートフォリオを導入します。

ポートフォリオは「紙バサミ」と言うような意味ですが、現在教育界や医学教育分野でも広がっている「教育手法」の一つです。

僕も職場に導入しようとして、様々な本を買いました(OSCEとポートフォリオの本が何故か本棚にどさっと)。OSCEは実際に職場で行って、職場の機関紙に少し載りました。ああいう使い方をしたかったわけではないのですけど、更に発展させる準備は行っております。

まぁ、そのポートフォリオ評価を「医師国家試験」の成績に加味する・・・それも50%以上。それにより、実践的かつ積極的な臨床実習が行えるうえに、研修医の時にはそれなりに動けるかもしれません。

これに関して評価法が一律になるか・・・という面もありますが、自己評価も多いですし・・・指導医は目標に対して実際はどうかというような評価をしたりします。 因みにポートフォリオはイギリスでは導入されているのですよ、国家試験にw

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現在欧米のカリキュラムで強調されていることの1つは,プロフェッショナリズムである。プロフェッショナリズムは,CBTやOSCEでは評価できない(図)。そのため,英国では5年間の医学部(内,3年間が臨床実習)で4年生の終わりにEMI,OSCE,CRQで評価し,卒業試験ではポートフォリオ評価を外部よりの評価者とともに施行している。そのため,医師国家試験は行なっていない。米国でも医師国家試験にCBT,OSCEに引き続き,ポートフォリオ評価の導入を準備中であるという。

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2530dir/n2530_03.htm

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別に欧米化しろというのではなくて、「評価法として確立されているものであり、実際に行われている。むしろそれを学び取って、実際に日本も応用してはどうですか? 」といっているだけです。

僕が更に言いたいのは・・・これによって「大増員」する事になっても「初期」医療従事者として人員が増えることと同時に、大学だけでは見きれないであろう大量の医大生に充実した臨床実習を行ってもらいたいのだ。 そうする事で将来の日本の医療が開けてくると思う

また、これを行うと臨床研修で全診療科を学ぶ必要性はない。だって、似たような形で学生実習として学んでいるのだから。

そう考えると僕だったら「研修制度として、一年目に外科or内科を半年+救急or麻酔科を半年・・・残りの一年は専門の診療科を研修する」とすれば厚労省の唱える「新臨床研修制度の目的」は十分果たせるだろう。

 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/hensen/index.html

もうちょっと評価に関して公式文書に残すなら、考えて実施してほしかったように思う・・・。

因みに、医局の力を削ぐのが本当の目的だったとしても・・・そちらも十分果たしたでしょう? もっとも、人事権というものに関しては・・・削除する方法を考えてあるので、少し考えてみて欲しいように思います。

 

今の僕の中にあるある種の日本の医療の将来を考えた教育制度の半分はこれです。残り半分は・・・・医局を敵に回しかねないので・・・今は書きませんw

けど、必ずよい方向に持って行けると思います。医局にとっても国にとっても、国民にとっても・・・。だって僕も大学病院で「臨床・研究・教育」に携わりたい人なので、「医局を良くしたいという思い」しかありませんので

それゆえ、今現在は組織論や教育論を中心に、将来どのように展開可能かを考えて暮らしております。

行き・帰りの電車もバスも、歩いているときもかなり考えておりますw

こんな教育システムを考えておりますが、これなら医師の増員も可能で、将来の医療体制も作り直せる可能性がある・・・と思われる方、応援をよろしくお願いいたします

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なかのひと 

ま、ここに書いていない半分の意見・・・。そして組織論が加わると3~4倍くらいの内容になりますが・・・それはまだ秘中の秘ですw

けど、こういうことって書いておかないと明日死んだら、誰にも伝わらずに終わってしまう。それでは無駄死にだしな~。 ま、明日は死なない事に期待しよう。

一日一日一生懸命に生きる。人のために生きて、人のために死ねればそれで本望w

もう一件、記事を書かせてください。今日はノリノリですw 

P.S:皆さんの応援のおかげで、Blogランキング、再び17位へ上昇しました。ありがとうございます~。今後もよろしくお願いいたします

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だまされた日医?:厚労省の思惑か?

2008-04-28 20:05:43 | 医療

こんばんは

今日は朝から実験しておりました。FACSで初代培養細胞の性質のチェック(まぁ、狙ったものがでてきたのが8割、予想はしていたけどでてほしくなかったのが2割かな?)をして、その後2年間育てたTg Mouseの各臓器を確認しておりました。

おぉ、論文どおり・・・腎臓にも病変が・・・。ついでに、肺にも来てますな・・・ などと考えながら、目が疲れてきたので培養室へ行き、窓から見える桜を見ようとしたら・・・

「あっ、散っている」

風でしょうか?今日も風が強かったから・・・。いずれにせよ、少し前まで咲いていた桜は散っていました。まぁ、他の場所は咲いているのでしょうけど・・・。

ここで一つ歌を詠みます

「春行かん 風に散りゆく 桜花       

        そこに見ゆるは 桃色の風」 

なんちゃってw

さて、それでは早速最初の記事に行って見ます

MRICの記事からです  

Medical Research Information Center (MRIC) メルマガ 臨時 vol 53   

■□ 刑事捜査抑制の保障無し―法務省・警察庁は文書を明確に否定 □■

             国立病院機構名古屋医療センター 産婦人科 野村麻実  

 

医療安全調査委員会の第三次試案を、医師の皆さんは調査委員会の結論が出るまでは警察の捜査がストップされると、期待してはおられないでしょうか。そうお考えになるのも当然だと思います。第三次試案を読めば、そのように受け取れる記述があり、また日本医師会もそのような説明を会員にしているからです。ところが、そのような期待は医師側の勝手な解釈であることが、先日の国会質疑で明らかになりました。警察はたとえ調査機関の通知がなくても捜査することを、刑事局長が明言したのです。この答弁で、第三次試案には警察の捜査をストップさせるような法的根拠がまったくない事実を、私たちは突き付けられました。  

国会質疑の模様をご紹介しながら、今浮かび上がっている問題点を述べてみたいと思います。  

4月22日、決算行政監視委員会第四分科会において、衆議院議員で「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」に参加している橋本岳議員が、第三次試案について国会質疑を行いました。その内容はインターネット上の録画( http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=39012&media_type=wn&lang=j&spkid=11744&time=02:39:37.1)で見ることができます。  

質疑の相手は、法務省・警察庁の局長であり、主な論点は、厚労省と警察庁あるいは法務省の間で交わされた「文書」の有無です。なぜ文書の有無が論点になったか。それは、第三次試案の記載だけでは、医師が法的に守られるのかどうかが分かりにくく、調査委員会の結論が出るまで警察の捜査がストップされるということが文書で示されているかどうかを、省庁間の明らかな合意を明らかにするのが目的でした。  

橋本議員はまず、4月3日の日経メディカルオンラインの記事( http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200804/505980.html)に、「法務局や検察庁などからは、この案の公表について了解する旨の覚え書きを得ている」との記載があったことを基に、省庁間で交わされた文書の有無を確認しました。すると法務省・警察庁は、この第三次試案について一切の文書を取り交わしたことがないと回答しました。  

この記事内容そのものは記者会見場での出来事で、私たち現場医師に事の詳細を知ることはできませんし、大した問題ではありませんが、この答弁自体は非常に重要だと考えられます。実はこれまで「文書」の存在を匂わせ、警察の捜査がストップされるような両省の合意があると受け止められる記事が、日本医師会より何度か出されていたからです。  

たとえば、日医ニュース第1117号(平成20年3月20日号)の中で木下勝之・日本医師会常任理事の名前で出された「刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み ―その4― ―新しい死因究明制度に反対する意見に対して―」と題する記事の中に、文書の存在を示唆する「明文化」「明記」という言葉が2度出てきます。  

1カ所目は、質問2の回答部分です。原文では「一方、委員会の判断に基づき警察に通知が行なわれない事例に関しては、訓告結果が調査報告書として遺族に渡って、遺族が警察へ行き刑事罰を主張しても、捜査機関は、調査委員会の医学的な判断を尊重して、原則として捜査を開始しないことが明文化されています」となっています。  

2カ所目は、質問3、4に対する回答部分で「繰り返すまでも無く、医療関係者を中心とする調査委員会から捜査機関へ通知される事例は、極めて限定的な「重大な過失」事例だけであり、通知されない事案には、原則として捜査機関は関与しないことが明記されている」と記載された部分です。  

このニュースを読んだ医師らは、「厚労省は法務省・警察庁との間で、調査委員会の通知なしには刑事捜査を開始しないという内容の合意の文書なり覚書を作成した」と受け取ります。しかし、このたび法務省と警察庁は合意文書の存在をきっぱり否定したのですから、上記は医師の勝手な希望的観測に過ぎなかったことになってしまいました。  

また木下理事は日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p11の記事で「故意に準じる重大な過失、隠蔽、改竄、リピーター以外は捜査機関に提出されず、それ以外の報告書も刑事処分には利用しないことを警察庁、法務省も了解済みであることを説明」と明記し、日本医事新報No.4381(2008年4月12日)p12-15においては「報告書は遺族に返すので民事訴訟への使用を制限するのは難しいが、刑事処分には持っていかないことを警視庁、法務省も了解している」と説明しています。これらは、前述した警察庁の答弁とはまったく合致しません。  

木下理事の説明は客観的には誤りであると言わざるを得ませんが、これは医師会の責任なのでしょうか。 まさか、医師会が意図的に会員医師らを欺くとは思えず、医師会が厚労省から虚偽の説明を受けて、誤解してしまったとしか考えられません。つまり医師会は騙されたのではないでしょうか。医師会は特に法的な問題点に関して説明を受ける立場にありますが、法務省・警察庁から説明を日医は受けてきたのでしょうか?受けていなければ、関係省庁との調整を行う厚労省の怠慢、いや欺罔だと言ってもいいでしょう。  

そもそも、仮に第三次試案の別紙3「捜査機関との関係について」が法務省・警察庁との合意に基づいて発表されたものであるとしても、その内容は実のところ「遺族から告訴があった場合には、警察は捜査に着手することとなる」(別紙3問2の答え)わけで、現状と何も変わらないことを明記してあるだけです。22日の国会質疑においても警察庁米田刑事局長は「遺族の方々には訴える権利があり、警察としては捜査する責務があり、捜査せざるを得ない」「(委員会が通知に及ばないという結論を出した場合にでも)個別の事件の判断で遺族の方々の意思というものがもちろんあるから、捜査するしないについては言及できない」旨の答弁を行っています。つまり別紙3は医師に過剰な期待を抱かせるべく、形式上「文書」にしてあるに過ぎません。  

厚労省は「文書がある」と日医には嘘をついてきたはずだと思うのです。だから冒頭の日経メディカル記事の記者会見でわからないなりに「文書」「覚書」なりとにかくそれ風のことを嘘ではないけれどいわねばならなかったのだと思います。さすがに嘘は言わなかったでしょう。しかし勘違いさせることのできる言葉を並べたはずです。言いもしないことが、メモされるはずがないのです。報じられたことそのものよりも重大であったのは現場医師にとって「厚労省は誠意がない」と心から確信できる事実そのものだったと私は考えています。  

医療安全委員会に関わる関係省庁は厚労省だけではありません。次回試案からは、法務省・検察庁に加えて、日医も入った形での試案作りをすべきではないでしょうか。でなければ、今後も同様のこと、つまり日医や医師が騙されるような事態が起きる可能性が否定できず、あまりにも危険すぎて論議の対象にさえできません。  

医療安全委員会をその理念どおり運用するためには、刑法を改正または特別法を制定して、医療過誤に関する業務上過失致死傷罪[刑法211条1項]を親告罪にするとともに、刑事訴訟法を改正または特別法を制定し、医療過誤案件に関しては、医療安全調査委員会の「刑事手続き相当」の意見がない限り、捜査機関は捜査に着手できず、また検察官は起訴できないようにすることが必要です。法務省・検察庁の協力をオブザーバー程度で終わらせないようにするためにも、また厚労省が「自らの権限拡大を狙っている」と勘繰られないためにも、三者の間で協議をより密におこなうことが課題であると考えられます。  

同様に、民事訴訟の乱発抑制のためには、民事訴訟法を改正または特別法を制定して、医療過誤案件に関しては、訴訟提起前に裁判所の民事調停ないし認定ADRの手続きを経ることを義務化し、そこでは医療安全調査委員会の報告書をもとに紛争解決を図るものとすることなど、法的な対策を講じていただきたいと考えております。

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すばらしい文書です。

朝一番にメールチェックしていたときに、あったので思わず熟考しておりました。

 

僕は最近、第3次試案に関しては記事を書いていないのですが(だって、優秀な先生方が動いていらっしゃいますので)、今日は紹介したいと思い、記事にしました。

日医は厚労省にだまされている・・・

そうかもしれません。自分たちの首を絞めるような話を、簡単に採択するとは思えませんし・・・恐らく、本文中にあるように紛らわしい文章だったのではないかと思います

レベルは違いますけど・・・例えば「緊急時に入ってください」と「緊急時には言ってください」ひらがなにしたら同じw

まぁ、こんな低レベルな話ではないでしょうけど、言葉遊びをすると意外と文章によってはだませますし、純粋に話し合いの場でも「嘘ではないけど、本当でもない」様な話で、「だました」のかもしれません。

真実は不明ですが、結果を見ると可能性はあると思います この件に関して、野村先生が書かれているように「第3次試案」ではなく、次の試案へ向けて・・・法務省なども含め、日本の医療をこれ以上壊さないための制度を作っていく必要があると思われる方、応援をよろしくお願いいたします。

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なかのひと 

桜の季節になると歌を詠みたくなりますね~

葉隠聞書第2の歌も好きですけど

「恋死なむ 後の煙に それと知れ    

          ついにもらさぬ 中の思いは」

さて、それでは今日は記事を書きまくりますので、よろしくお願いいたします 

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