新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

死因究明の前に・・・。医療をこれ以上悪化させないことが必要では?

2008-02-22 20:59:06 | 医療
こんばんは。

昨日の風邪で今日も多少しんどかったのですが、医者って患者さんがいたら休めないですよ。数日前・・ある先生も40℃くらいの熱でふらふらしながら病棟にいました。さすがに患者さんに不利益があったら困ると思われたのか、19時ころには帰っていらっしゃったみたいですけど。

僕は今日はかなり良くなってきてましたので。はい。頑張れましたw

さて、今日もCBからとってきました
これです。

医療事故の届出と遺族感情


 「この数行ではやはり判断できない。十分でないところがあり反省している」――。医療事故の原因を調べる第三者機関の創設で争点になっている「届け出の範囲」について、厚生労働省が示した事例に委員から批判が集中した。厚労省の担当者は「個々の患者の状態によっても条件が違う。本来は何十ページも必要で、それをサッと切ることはできない」と弁解した。届け出が必要なケースを具体的な事例で明らかにしていこうという厚労省の試みは評価すべきであるが、遺族の感情を考えると事例を単純に振り分けられない。(新井裕充)


 厚労省の提案では、医療事故と考えられるような死亡が院内で発生した場合、第三者委員会に届け出るべきかどうかの第一次的な判断を医療機関が独自に行う。

 これまでの議論では「届出の範囲をしっかり決めないと現場は混乱する」という意見が再三にわたり出ていた。

 厚労省は2月20日、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)で、届け出の範囲を判断するためのフローチャートを示すとともに、これに具体的な事例を当てはめて提示した。
 実際に起きた医療事故の事案を数行にまとめる作業には大変な苦労が伴ったことが想像されるが、逆に批判を浴びる結果になってしまった。

 議論の発端になったのは、「届け出不要」に分類された事例16で、次のとおり。
 「虚血性腸炎を疑い、緊急に大腸内視鏡検査を実施したところ大腸粘膜の色調が悪く、壊死の可能性も疑われ、慎重な経過観察が必要と考えられた。治療としては、心疾患や糖尿病等の合併症の程度等を考慮し、保存的治療(絶食、輸液など)を行うこととした。検査中は特に全身状態の変化なく終了し病棟に戻ったが、その後、急に腹痛を訴えるなど容態が悪化したので腸管穿孔を疑いX線写真を撮影したところ、遊離ガスが認められ腸管穿孔(せんこう)と判断された。その後、適切な措置を施したが死亡」

 資料では、下線が「大腸内視鏡検査を実施」「急に腹痛を訴えるなど容態が悪化」「腸管穿孔」に引かれている。
 厚労省のフローチャートによると、「誤った医療を行ったことが明らかではない」が、「行った医療に起因して患者が死亡」して、「医療を行った後に死亡することを予期していた」というケースで、「届出不要b」に分類されている。



■ 届け出の範囲と遺族の感情
 議論の口火を切ったのは加藤良夫委員(南山大大学院法務研究科教授・弁護士)。「内視鏡検査で消化管が穿孔した。だから普通は死亡にいかない。しかし、その後の対応など、さまざまな段階を経て死に至るというプロセスになっている。つまり、『内視鏡検査中の消化管穿孔であり、これは合併症だから届出は要らない』という判断にはならない」として、厚労省が「届け出不要」に分類したことを「非常に限定的」と批判した。
 加藤委員は「証拠を引き出して医療の質を向上させること、尊い犠牲や過ちから学ぶという視点から見ると、大事なものが落ちてしまう危険性がある」と述べた。

 前田座長は「まさにそこが問題。広く委員会に届け出して、そこから教訓を拾い上げていくという考え方もある。しかし、届け出を明確なものに絞り込んでおかないと医療行為がやりにくいという意見もある。今回、初めてここに突っ込んだ議論をするが、医療現場の人が分かるような、ある程度の合意形成を得たい」と述べ、さらに意見を求めた。

 山口徹委員(虎の門病院院長)は「死亡に至るまでに不適切な処置があった可能性を否定できない事例だ。『適切な措置を施したが死亡』と簡単に書いてあり肝心なところが分からないが、『適切な措置を施したか』という部分を含めれば、検討すべき範囲はもっと広い」とした。
 ただ、「穿孔後に標準的な医療が行われたか」という部分は院内の調査委員会で検討すべきとして、「届出不要」の分類に賛成した。
 木下勝之委員(日本医師会常任理事)も「これは院内で検討すべき事例で、第三者委員会に届け出るべき事案ではない」とした。

 これに対し、医療事故で子どもを亡くした豊田郁子委員(新葛飾病院セーフティーマネジャー)は「届け出不要と考えられている事例の中には、院内できちんと調査しなければならない事例が多くある。しかし、院内の事故調査委員会を立ち上げられない医療機関も多い」として、調査委員会が遺族の相談に対応できるような制度を求めた。

 豊田委員はまた、「医療関係者が届け出を不要と考える事例でも、『家族の立場だったら届出が必要だろう』という声が現場から出ている」と指摘。たとえ届け出が不要な事例でも、遺族が希望する場合には届け出なかった理由を説明する義務があるとした。

 前田座長は「医療の側は患者や遺族の側に立って『出すか出さないか』を判断していただくことが重要だ」と理解を示したが、このように「患者の視点」を届け出の判断に組み込めば、厚労省が示した届け出判断のフローチャートだけでは割り切れないことになる。

 辻本好子委員(NPOささえあい医療人権センターCOML理事長)は「遺族が『届け出なくて結構です』という場合には届け出なくてもいいのではないか。このように事例だけでうんぬんしていいのか」と事例だけで割り切ることに不満を表した。
 また、鮎澤純子委員(九州大大学院医学研究院医療経営・管理学講座准教授)は「この資料を見た時、ここまで書かれたかという思いがした。事案を3行、4行でまとめる難しさは分かっている。(届け出の要否は)どんなに枚数を重ねても書ききれるものではない」と述べた。

 厚労省の担当者は「この数行ではやはり判断できない。十分でないところがあり反省している。個々の患者の状態によっても条件が違う。本来は何十ページも必要で、それをサッと切ることはできない」と説明した。

 届け出の範囲を具体的な事例で明らかにしていこうという厚労省の試みは評価すべきだが、遺族の感情を考えた時、フローチャートでは単純に振り分けることができない難しさがある。

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この会議の中で批判が集中した・・・と書かれているので非常に期待をして記事を読みました。さすがに第3者機関設立の難しさがわかったのかしら・・・・と。

Blogを書かなくなって・・・そして他の様々なことに時間をとるようになって追いきれていなかったのですが、ここに批判が集中するとは思いもよりませんでした。

記事の中に「家族の思い」「遺族感情」が書かれていますが、それを重要にしなくては成らないとは僕も思います。遺族が届出をしない理由を説明するよう求められたら、説明する義務はあると思います。それは近親者を失った人たちが納得がいくように、する必要はあると思います。

しかし、それは届出をする必要があるか、必要ではないかの話ではないと思います。
また、届出が必要かどうかという「医学」的な話の中に「遺族の感情」をひとつの考慮事項に挙げたことが、申し訳ありませんが驚きです。

遺族の感情、家族の立場を思いやる、家族の立場で考えることは非常に重要なこと。そうしなくてはならないと思いますが、家族の立場を優先して(家族の立場だったら届け出るのが適当・・・というのは優先しているということ)届け出なくてはならない場所が死因究明という機関とは・・・・・と思ってしまいます。

医療事故調査委員会・・・という機関はシステムの問題を解決していくための機関だと思います。すなわち、第3者機関であって利害は絡まない。また、システムエラーと考えられる死因究明というものを正しく行うためにはあくまで「届出をした本人の処罰は行わない」として情報を集め、何故このようなことが起きたのかを考えるべきだと思う。

しかも、今の日本の医療体制、医療崩壊の現状では「医師不足」「医療費不足」から医療事故はおきやすい状況であり、一番のシステムエラーは「日本の政治家(全員じゃないでしょうけど、ごめんなさい)」「厚生労働省」である。

その一番のシステムエラーが「医療事故究明」をしようというのだから・・・「システムエラー」をみとめないだろうというのは想像に難くない。

医療事故究明は「より良い医療」を形成するために必要である。

しかし、現在・・・この日本の医療は「よりよい」を追求する状況ではなく、実は「悪化させない」ことをまず追求し、死因究明を行う以前にわかっているシステムエラーを改善しなくてはならないのだと思う。

そんなことを考えながら、自分自身を見つめる作業も行っています。
今の僕の立場って非常に微妙なんですよねw

大変だな~と思う今日この頃です
コメント (4)
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