-世間虚仮- 倒産大幅増
戦後最長の好景気というのに、近畿2府4県の6月の倒産件数が281件、前年同月比58%増と、件数において大幅増だが、一方負債総額は7ヶ月連続で1000億円を下回っているという。大手を中心に景気は相変わらず堅調に推移しているとされつつも、中小零細における小規模倒産が頻発しているわけだ。
同じくこの日発表された内閣府による7月の消費者動向調査では、2年7ヶ月ぶりの低水準だという。ガソリンの高騰もある。食品や生活用品に一部値上げの動きが続いている。
中小零細の事業者においても一般消費者においても、いざなぎ景気を越えたという好況感からはほど遠く、失われた十年以来のツケに困窮の度を深めているのが実態に近いのだろう。
参院選での安倍自民の大敗に、年金問題や事務所費問題ばかりが敗因とクローズアップされるが、なにやらじわりじわりと貶められていっているという感覚しかもてぬ、無辜の民の出口なし的状況への憤懣が、その背景にあるのだとは思えないか。
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<雑-39>
夢の世に月日はかなく明け暮れてまたは得がたき身をいかにせむ 藤原良経
秋篠月清集、百首愚草、十題百首、釈教十首、人。
邦雄曰く、「十首」は他に、地獄・餓鬼・畜生・修羅、天・声聞・縁覚・菩薩・仏を数える。建久2(1191)年、良経22歳の作であるが、その老成した技法は翌々年の六百番歌合に匹敵する。「夢の世」も、釈教臭を持たぬ流麗な調べのなかに、限りない寂寥感・無常観が漂う。「朝な朝な雪のみ山に鳴く鳥の声に驚く人のなきかな」は「鳥部十首」の中の歌、と。
昔見し蛍の影はなにならでわが世の月ぞ窓にかたぶく 滋野井実冬
新続古今集、雑上、寄月往事を。
邦雄曰く、掉尾の勅撰集に見える、応永16(1409)年9月十三夜の探題百首歌中の作、実冬は後三条入道前太政大臣。第四句の「わが世の月ぞ」に万感をこめ、緩徐調の滋味溢れる述懐歌を創った。第二十一代集きっての秀作として印象に残る。「契りしもあらぬこの世に澄む月や昔の袖の涙とふらむ」も同じく新続古今・恋五に見えるが、なかなかの佳品、と。
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