山本あけみ「緑ゆたかな環境を子どもたちへ」

建築士や生活者として、都市計画・公共施設マネジメント・地球温暖化対策・SDGsなど、独自の視点で日々発信

リアル版 メイキングヒストリー・後編

2010-07-01 | 活動日誌
(続き)

思い返すとこの構想に至るまでの下地は十分に用意されていた。
「久我山緑の散歩道」の活動を始めるにあたり、久我山にある2つの
大きな問題への解決の方法として、反対運動ではなく、
誰でも肯ける賛成運動をしていきたいという発想があった。

その問題とは、東京都により放射第5号道路が久我山の住宅街にある
玉川上水脇に通る計画が進行中であるということ、
そして、3つのグラウンドの都立公園化が遅々として進まないことである。

また、全世界的な課題として、
これまでの生活パターンを一新しなければならない程深刻に
環境への配慮が必要になってきているということ。
そして、なにより久我山に住む一住民として、
この街をより魅力的であり、次世代を見据えた
環境配慮型の街にして行きたいという強い思いがあった。

「この構想を推進することにより、久我山の2大問題をひとつの地域としての
 街づくりという手法で解決することができる。」

急がば回れの発想と言っても良いかも?

「近隣以外からも人々が久我山にジョギングやサイクリングをしに
 足を運んでくれるようなコースがいいな!」

「沿道にはおしゃれなカフェやおいしいイタリアンレストランがほしい!」

「高井戸公園内を通って玉川上水から神田川へと水を流し、
蛍が自生できるようなビオトープが欲しい!」

「生物多様性を実感できるような『環境ミュージアム』を作って、子供たちの
 社会科見学に利用できるような施設が欲しいな!」


と、意気盛んにアイデアは出るも、残念ながら何れもまだ夢の段階である。
夢を見ることは子供の専売特許のようだが、
大人になっても夢を語ることは可能である。
大人には知恵がある分、実現への道のりは近いともいえる。

「構想は興味深いが、東京都の縦割り行政と杉並区・三鷹市・武蔵野市という
 地域をまたいのものでは実現は難しいのでは?」
と一言で片付けてしまう人がいる。

そんな人には夢を語る楽しさから伝えていかなければなりませんね。

環境先進国といわれるドイツにカールスルーエという街がある。
住民主体の環境保全活動を推進している。街中にはトラムが走り、
高速道路の上にはいくつものビオトープを持つ公園があり、
これにより道路建設後の地域の分断を防いだ。
街中緑化のコンペティションがあって、住民の意識にはしっかりと
これからの街の行く末のビジョンが育まれている。

「久我山を環境先進都市として作って行こうよ。」

これが我々メンバーがたどり着いた答えである。

グローバル化がこれからの世の中だと声高に叫んでいた時代が
過ぎようとしている。
私たちはITの普及により、地球の裏側の地域紛争までリアルタイムで
情報を得ることができる世の中に生きている。

それで幸せですか?

そろそろ人はどんな大それた情報を知っていようと、
今自分がここで息をしている場所にあるローカルな幸せがなければ、
本当に幸せとは感じないのだと気づき始めている。

そんな時代が出発の時である。


リアル版 メイキングヒストリー・前編

2010-07-01 | 活動日誌
「久我山緑の散歩道」として、地域の問題解決に取り組みながら、
より良い街づくりを目指す団体としての活動を創めて約2年を過ぎようとしている。
この間、これまで問題解決への活動をしていた人々との横の連携、
ブログ形式での情報の発信、チラシ配布による広報活動、
杉並区への街づくり団体への登録、セミナー参加などによる勉強など、
歩幅はまちまちだが、着実に活動を続けて来た。

その中で、活動の最終的に目指す方向がようやく見えてきた。
それを「井の頭・久我山緑のパークウェイ構想」として取りまとめた。

2017年5月、JR吉祥寺駅から程近い東京都立井の頭恩賜公園(以下、井の頭公園)は
開園100周年を迎える。
大正6年に日本初の郊外型公園として生まれたこの公園は三鷹市・武蔵野市を
またがって緑豊かな散歩道、池、湧き水、自然文化園、ジブリ美術館という
多様な魅力を備え、中でも桜の名所として名高く、訪れる人々を魅了し続けている。
そして、この100周年に時を同じくして、「井の頭・久我山緑のパークウェイ構想」
が実現するよう、活動を開始した。

井の頭公園のある吉祥寺駅と久我山駅は3つ隣にあり、大変近いという関係にある。
現在、久我山にある3つのグラウンド(NHK・王子製紙・印刷局)は
都立公園の予定地(仮称・高井戸公園)になっており、
実はこの二つの都立公園は神田川と玉川上水により結ばれている。

現在、神田川沿いは護岸工事とともに植栽された桜やその他の緑に包まれ、
路面にはきれいな舗装が施され、川べりにはフェンスが続いている。

また、玉川上水は武蔵野の面影を今なお色濃く残し、雑木林の中に水路をうかがうことができ、
約350年の歴史を誇る史跡の趣を感じさせる。
盛夏には木陰を作り、冬には枯葉の上を歩くたびに乾いた音を踏みしめる楽しさがある。

「久我山という街を拠点にして、神田川沿いに井の頭公園まで行き、
 散策を楽しんだ後、玉川上水沿いに再び久我山に戻るというコースはどうか?」

とある日突然メンバーの一人が言い出した。

「そんなこと気づきもしなかった。」

という他のメンバーのリアクション。かなり突然の発想の転換だった。

「でも、それっていいかも。」

と、顔を見合わせ、笑いあった。

(続く)