【社説①】:COP28の成果 脱化石燃料が加速する
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:COP28の成果 脱化石燃料が加速する
「地球沸騰化」を食い止める足掛かりになるのだろうか。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれていた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は「化石燃料からの脱却」を進めることで合意した。COPの決定文書に化石燃料削減の方向性が、初めて明記された意義は大きい。
温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命前から1・5度に抑えることを目標に、加盟各国がそれぞれに定める温室効果ガス(GHG)の削減目標(NDC)を、進捗(しんちょく)状況を確かめ合いながら5年ごとに見直し、高めていくことになっている。
今回初めて実施された進捗状況の評価に基づく成果文書には、1・5度目標を実現するには、GHGの排出量を2030年までに19年比43%、35年までに60%減らす必要があると記された。そのためには、世界の排出量の7割以上を占める化石燃料を使わないようにするしかない。
議長からは当初「段階的廃止」という案が示された。産油国の猛反発で「消費と生産を低減」に後退したが、欧米や小島嶼(とうしょ)国が巻き返し、会期を1日延長しての議論の末に「化石燃料から脱却する行動をこの10年で加速させる」という折衷案に落ち着いた。
今回の成果文書は35年までに達成すべき次期NDCの“基礎”になる。「脱化石燃料」の流れは、より明確になった。化石燃料の中でもGHG排出量が多い石炭火力の延命に固執し続ける日本には、これまで以上に厳しいまなざしが向けられよう。日本のエネルギー政策の在り方が、あらためて問われることになる。
成果文書には「30年までに再生可能エネルギーを3倍に拡大する」との数値目標を盛り込む一方、脱化石燃料の手段の一つとして原発も加わった。しかし、重大なリスクをはらみ、コストのかかる原発は、切り札にはなり得ない。福島第1原発の後始末に悩むわが国はなおのこと、開発余地の多い洋上風力の推進など、本命の再生エネに力を注ぐべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年12月18日 07:51:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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