【社説・06.27】:米兵、少女を誘拐暴行 卑劣極まりない犯行だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・06.27】:米兵、少女を誘拐暴行 卑劣極まりない犯行だ
米兵による卑劣極まりない事件がまたも起きた。
16歳未満の少女を車で誘拐して自宅に連れ去り性的暴行を加えたとして、那覇地検が今年3月、嘉手納基地所属の米空軍兵長の男をわいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で起訴していたことが分かった。
起訴状などによると犯行は昨年12月。米兵は本島中部の公園で初対面の少女に「寒いから車の中で話そう」などと声をかけて車に乗せ、基地外の自宅に連れ去り性的暴行を加えたという。
手口から子どもをだます狡猾(こうかつ)さや計画性、ひどい暴力性がうかがえる。少女はどれだけ恐ろしい思いをしたことか。想像しただけで怒りが込み上げる。
性暴力は「魂の殺人」といわれる。特に子どもの頃の被害は深刻だ。専門家による長期的な回復支援を望みたい。
周囲もさぞ心を痛めたことだろう。関係者が事件当日に110番通報し容疑者が特定された。本人の勇気と周りの支えが事件化につながった。
事件を巡っては、報道で表面化するまで日米両政府が県に対し情報を伏せていたことも露呈した。
通報を受けた県警は米兵を任意で取り調べ、今年3月11日付で書類送検した。地検は同27日付で起訴。外務省は遅くともこの日には事件を把握し、エマニュエル駐日米大使に抗議したという。
一方、県への情報提供はなかった。
政府は被害者のプライバシー保護などを理由に挙げるが、過去には同様の性犯罪事件で米側から県に連絡があった。説明は釈然としない。
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公園という公共の場で発生した未成年者の誘拐暴行事案である。影響の大きさを考えれば政府は、被害者のプライバシーに配慮しつつ情報の共有を図るのが当然だ。
地域の安全を揺るがしかねない事件にもかかわらず、地検や県警からの情報提供もなかった。なぜなのか。
事件が発生した昨年12月、政府は辺野古新基地建設の「代執行」を強行。今月は県議選もあった。県民の反対を押し切り工事を進める中、反発を恐れて事件を「隠蔽(いんぺい)」したのであれば言語道断だ。そこに政治的な思惑が働いたのではないか。
エマニュエル大使は先月、軍用機で与那国と石垣を訪問し、日米合同軍事演習の重要性を喧伝(けんでん)した。
事件の重大性を考えれば大使が真っ先に口にすべきは被害者や県民への謝罪である。
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日米地位協定では公務外の米兵犯罪の容疑者は、原則として起訴されるまで米軍が管理下に置くと定める。
しかし1995年に起きた米兵3人による少女への暴行事件を受け、凶悪犯罪の場合は米側が応じれば起訴前に身柄の引き渡しもできると見直された。
主権国家であれば当然要求すべきだが、県警は今回も身柄引き渡しを求めなかった。「米側の協力が得られたため」とするが弱腰が過ぎる。
卑劣な犯行はもとより、さらに事件を隠蔽するような対応に県民の怒りは募るばかりだ。
元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月27日 04:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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