【児童手当】:所得制限「継続すべき」が「撤廃すべき」を上回るワケ…各社世論調査に欠けた視点
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【児童手当】:所得制限「継続すべき」が「撤廃すべき」を上回るワケ…各社世論調査に欠けた視点
「児童手当の所得制限撤廃の動きが活発になったのは、1月に小池都知事が打ち出した、0~18歳以下の子どもへの所得制限なしの月5000円給付です。それを受けて、自民党の茂木幹事長が国会で児童手当の所得制限の撤廃を訴えました」
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所得が高くても「多子世帯」だと負担は大きい(C)日刊ゲンダイ
こう話すのは、所得制限に意義を唱える日本大学文理学部教授の末冨芳氏(教育財政学)だ。
現在、児童手当は、中学卒業まで、子供1人あたり月額1万~1万5000円が給付される。ただし所得制限があり、子供2人の家庭では、夫婦どちらかの年収が目安として960万円以上だと、一律5000円の「特例給付」となり、22年10月からは年収1200万円以上は支給の対象外となった。
しかし今年、岸田首相の「異次元の少子化対策」の一環で突如、児童手当の所得制限撤廃が浮上し、2月21日には、立憲民主党と日本維新の会は、所得制限を撤廃する法案を提出した。ただ、これらに反対する声も根強い。
TBSが2月4~5日に実施した世論調査では、所得制限について「継続すべき」が56%に対し、「廃止すべき」は33%という結果が出た。日経新聞が2月24~26日に行った世論調査でも、「撤廃すべきではない」が54%、「撤廃すべき」が38%となっている。
一方、SNSを中心に《頑張って所得税を納めているのに給付制限っておかしいんじゃないか》《年収1000万あっても、子どもいるといないとじゃ雲泥の差》と所得制限撤廃を求める声も依然強く、「撤廃しろ」「撤廃すべきではない」と双方の意見が真向から対立している。
「テレビや新聞の世論調査は、手法に課題があると認識する研究者は多く、(旧民主党政権が、所得制限なしの『子ども手当』を始めたことで廃止された)年少扶養控除などの重要情報を与えずデータを取っても意味はありません。ネットで正確な情報を示しアンケートを取ると、結果が逆転するケースも多いのです」(前出・末冨芳教授)
■年収960万円でも“二重苦”で生活が楽ではないことも
所得制限撤廃を訴える団体「こどもまんなか子育て支援を望む会」代表国分詩織氏はこう言う。
「所得が高いほうが、子どもの数が多いのはデータで出ていることであり、そこをフォローすべきなのに、所得制限を設けることで、産み控えもはじまっているともいわれています。今の所得制限世帯は、年少扶養控除もなく、そして所得制限も設けられている。二重に苦しめられているのです」
特に扶養する子どもが3人以上いる「多子世帯」で、都市部で暮らす家庭などでは、年収が960万円以上あっても、住宅費や教育費の負担が大きく、子どもを塾や予備校に通わせるのをためらう家庭が多いという。それなのに児童手当の所得制限があるのが現実だ。
所得制限撤廃反対派の根底には、高年収世帯への嫉妬や高齢者の無関心があるのだろうが、児童手当については多角的な視点が必要だろう。
元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・「児童手当問題】 2023年03月05日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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