《社説②》:温暖化被害の支援基金 脱炭素につなげなければ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:温暖化被害の支援基金 脱炭素につなげなければ
地球温暖化がもたらす被害を直視し、脱炭素社会の実現につなげなければならない。
国連の気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、気候変動の被害に苦しむ途上国向けの基金を新設することが決まった。議長国のエジプトが主導し、会期を延長して採択にこぎつけた。
先進国が資金を拠出することは織り込み済みだ。支援の対象国や拠出国の範囲、基金の規模などを、来年開かれるCOP28に向け議論する。実効性のあるものにしなければならない。
洪水や干ばつ、森林火災など、気候危機の被害は年々顕在化している。ケニアのルト大統領は演説で「被害は抽象的な概念でなく、悪夢のような現実だ」と訴えた。
温暖化を巡っては、大量の温室効果ガスを排出して発展した先進国と、被害を受ける途上国との対立が続く。海面上昇に直面する島国が支援制度を提案しても、先進国は経済負担や賠償責任を問われることを警戒し、消極姿勢を崩さなかった。30年来の懸案である。
こうした対立に終止符を打とうとする今回の合意を評価したい。被害を最小限にするとの使命を、世界全体で共有すべきだ。
ただ、現実は基金創設で解決するほど生やさしいものではない。
地球の平均気温は上がり続けている。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」に基づき、先進国、途上国ともに産業革命後の気温上昇を1・5度に抑えることを目指している。
しかし、各国が決めた温室効果ガスの削減目標を達成できたとしても、1・5度を超えてしまう。目標の積み増しなど、より野心的な取り組みが求められる。
にもかかわらず、COP27では踏み込んだ議論がなされなかった。決定文書も、前回会合の表現を踏襲した。
背景には、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機がある。目の前の電力不足を補うため、一時的に化石燃料への依存を強めざるを得ない国も少なくない。
だからといって脱炭素の取り組みを怠れば、「人類最大の脅威」とも言われる温暖化の被害を回避できない。困難な状況下にある今こそ、国際社会が結束して対処することが求められる。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年11月22日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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