【政治部記者座談会】:①襲撃事件を深刻に受け止めなかった首相“マッチョな岸田”アピールの好機だったのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治部記者座談会】:①襲撃事件を深刻に受け止めなかった首相“マッチョな岸田”アピールの好機だったのか
現役総理が襲撃されるという事件の裏で何が起きていたのか。昨年起きた安倍晋三・元首相の暗殺事件を彷彿とさせる凶行に誰もが危機感を募らせるなか、最も変わらなかったのが岸田文雄・首相その人だった。もっとも間近で見ている記者たちは、岸田首相の「ある特性」に気づいたという──。<button class="sc-izhPXJ diavUp" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button><button class="sc-izhPXJ diavUp" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button>
間近で見ている記者たちは、岸田文雄・首相の「ある特性」に気づいたという(時事通信フォト)(NEWSポストセブン)
【写真5枚】“単独訪米”した裕子夫人。他には長男の翔太郎氏、従兄弟の宮沢洋一氏なども
衆参統一補選の遊説先である和歌山の漁港で起きた岸田首相襲撃事件。その直後に内閣支持率が10ポイント(ANN調査)も急上昇し、「襲撃事件の効果か?」と自民党議員たちを驚かせている。
事件後に首相が周囲の制止を振り切って遊説を行なったことが、〈岸田文雄首相、爆発事件に負けず衆院選の応援演説〉(スポーツ報知)と伝えられ、〈岸田首相「直接お礼の電話」容疑者取り押さえの漁師らに〉(FNN)などの政権寄りメディアによる“美談報道”が影響しているのは間違いない。
首相が事件を選挙アピールに利用すれば、相棒の松野博一・官房長官は、今回の警備について「和歌山県警の態勢構築など必要な措置は講じられていた」と説明した。警備態勢に不備がなかったのに事件を防げなかったとすれば、それこそ今後に禍根を残す大問題なのだが、簡単に“問題なし”と言い切ってしまう。
そこから見えてくるのは、“転んでもただでは起きない”というしたたかさではなく、この政権の危機意識の低さ、岸田首相の鈍感さだ。
政治記者たちはどう見ているのか。本誌・週刊ポストは覆面座談会を緊急開催。メンバーは政治部キャップクラスのベテラン記者A氏とB氏、第一線で取材する若手のC氏とD氏だ。【全3回の第1回】
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司会(編集部):襲撃事件後に支持率が上がって岸田首相は喜んでいる?
記者A:内心はホクホクしているとしても、官邸ではそんな様子は出さない。でも選挙にプラスという感触はあるでしょう。
記者C:岸田さんは事件直後からそう深刻には受け止めていなかった。周囲がきつく止めたが、本人は「(選挙の)応援をやめるわけにはいかないだろう」と演説を中止する気配はなく、東京に戻ってからも夕方にはいつもの理髪店に行ってみせた。事件を“テロに屈しないマッチョな岸田”をアピールするチャンスと考えたのではないでしょうか。
記者D:しかし、当日の警備にしても万全だったとは言いすぎです。先に容疑者を拘束したのは民間人で、SPらしき警察官が爆発物を聴衆に向けて蹴り飛ばした。爆発物の威力がもっと強かったら、大惨事になっていた。
記者B:官邸幹部たちを取材しても事件については口が重い。容疑者の背景がまだわからないから、安倍銃撃事件の旧統一教会問題みたいな背後関係が出てくるのではないかと心配している。
◆どこも報じない「ゴルフ談義」
記者B:岸田総理の鈍感さ、危機管理意識の低さという点では4月6日の自衛隊のヘリ墜落直後の対応もそう。ヘリが消息を絶ったという第一報を受けた後、総理は森喜朗・元首相や経済人との会合に出た。どこも報じていないが、宴席では4日前に経済人たちと回ったゴルフ談義に花を咲かせ、「あのゴルフは楽しかった」と上機嫌だったそうだ。ちょうどその頃、防衛省では陸上幕僚長が会見を開いて「航空機事故と判断した」と国民に謝罪していた。これでは“第2のえひめ丸事故【※注】”に近いものがある。
【※注/森政権時代の2001年2月、愛媛県の水産高校の練習船「えひめ丸」がハワイ沖で米原子力潜水艦に衝突されて沈没し、生徒ら9人が死亡した。当時の森首相はゴルフ中だったが、事故の報告を受けた後もゴルフを続けたことが批判されて支持率が低下し、辞任に追いこまれた】
記者A:会合で森さんは「首相を支える」と言っていたそうだから、岸田総理はヘリ事故のことなど忘れて、後ろ盾を得たとはしゃいだんだろうね。
記者C:これが民間のヘリなら別ですが、自衛隊だったから岸田さんは防衛省に任せればいいと気にしなかったのでは。自衛隊嫌いの野党はあまり追及しないでしょうし、えひめ丸事故とは状況が違うと考えたのではないですか?
記者B:ヘリには陸自の第8師団長という制服組トップクラスが搭乗していた。事故原因が何であれ、三つ星(中将クラス)の幹部が消息不明になったことは国防上の重大事だよ。“民間ヘリじゃないから”と関心が薄かったとすれば、総理はあまりに安全保障上の認識が甘すぎる。記者たちもそう感じないなら認識を改めたほうがいい。
記者A:岸田総理は自分では防衛通のつもりらしいよ。安倍内閣時代に稲田朋美・防衛相が更迭された時、外相だった岸田さんは安倍(晋三)総理に頼み込んで内閣改造までの5日間だけ防衛相を兼務させてもらった。官邸ホームページの首相の経歴にも「防衛大臣兼務」と載せているほどだ。 (第2回につづく)
■※週刊ポスト2023年5月5・12日号
元稿:小学館 主要出版物 週刊ポスト 【NEWSポストセブン】 2023年04月25日 16:12:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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