【大阪・関西万博】:本当に大丈夫なのか…公式ガイドブックの失敗から考える「大きな不安」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大阪・関西万博】:本当に大丈夫なのか…公式ガイドブックの失敗から考える「大きな不安」
◆スマホで撮影したイラストがそのまま掲載される
今月13日に開幕した大阪・関西万博。10月13日までの半年間続く予定の「夢の祭典」が盛り上がりを見せている。
一方で、建設の遅れや想定されている来場者数に対してアクセス方法や入場方法がまだ整備できていないといった問題が指摘されている。実際、海上ゲートを前に、
「盛り上がりは最高潮」という報道とは裏腹に、様々な場所で問題が露見している。その一つが3月19日に発売された公式ガイドックだ。
『2025年日本国際博覧会 大阪・関西万博 公式ガイドブック』(JTBパブリッシング)に掲載されたイラストが未完成のままだった。
イラストを寄稿した絵本作家・青山邦彦氏が取材に応じてくれた。
「出版の約1ヵ月前、2月5日に突然、完成品が欲しいと言われました。まだ完成していなかったのでそう伝えると、『レイアウトを検討するために途中でいいからスマホで撮って送ってほしい』と頼まれた。すると、そのままそのイラストが出版されてしまいました」
青山氏が出版社から依頼されたのは、未来都市のイラスト。空飛ぶクルマや水中ブルドーザー、テクノロジーと自然が融合した理想の街の風景だ。
青山氏がSNSにこの件について投稿したことで注目が集まり、JTBパブリッシングは公式HPに謝罪文とともに訂正表を公開した。それを見ると一目瞭然だ。
完成品と比べ掲載されたイラストは、全体のトーンは暗く、色も大部分が塗られていない。建物の窓には線が引かれておらず、「確認不足」と言うには無理がある。いったい何が問題だったのだろうか。
◆ギリギリすぎる制作スケジュール
「スケジュール的にギリギリだったのだと思います。
今回のお仕事の話が来たのは、去年の10月頃で、その時はざっくりとした作品の話をされました。その後、イラストに関する細かい資料が来たのは11月の頃です。資料には、水素エネルギーで走るクルマを入れてほしいなど、イラストに盛り込む要素をいくつか指示されて、デザインはコチラに任せるという感じでした。
ただ、突然の話だったので他の仕事も抱えており、ガイドブックの作業に取り掛かったのは12月下旬になりました」
その後、青山氏は作業を本格的にはじめる。イラスト制作に関するやり取りは、JTBパブリッシングとの間に編集企画会社を挟んで行われたという。
「担当の方には、年内に大まかな全体のイメージがわかる下書きがほしいと頼まれた。それで12月末に出そうとしたら、もう今年の業務は終わりと言われました。なので、下書きを実際に提出したのは1月6日です。しかしその後のやり取りはしばらくなく、2週間後に次の指示が出たんです。
本来そうした対応をする方たちでないのは承知しています。なので、おそらく編集企画会社の方たちも他のページの編集などで相当切羽詰まっていたのだと思います」
こうして2月に入り、冒頭の「事故」が起こる。青山氏は、スマホで未完成のイラストを送った5日後の2月10日に完成させ、提出した。その時は、編集企画会社との話し合いで「締め切りは2月10日にする」と了承があったという。
通常、この時点から出版されまでに1、2回の確認を行う。そこで「問題なし」となれば、校了し、作家には完成版が事前に配られる。
しかし、ガイドブックは青山さんに渡されることなく出版されてしまったのである。
「完成版を提出してからやり取りは一切途絶えてしまいました。献本はしてほしいと頼んでいたのですが、なかなか送られてきませんでした。3月末ごろに偶然本屋でガイドブックを発見し、そこでページをめくったところ、私の描いたイラストが明らかに下書きのものであることに気付きました。載っていたのはスマホで撮ったイラストをサイズに会うように引き伸ばしたものです。正直笑ってしまうほど、違うので唖然としました。こういう絵を描く人なんだと思われることが一番屈辱的です」
初版は10万部だといい、それが人の手に渡ると考えると青山氏の憤りはもっともだ。最終的には、JTBパブリッシングと編集企画会社から直接謝罪され、訂正版が5月に販売されるという。
「正直今すぐにでも取り替えてほしいです。万博自体はとても楽しみにしているので、他の場所で同じように失敗がないことを祈ります。人の命に関わる事故が起きると本当に(万博自体が)ダメになってしまう」
■押原 一香(ライター)
元稿:講談社 主要出版物 現代ビジネス 社会 【社会ニュース・話題・大阪・関西万博】 2025年04月15日 06:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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