【社説①】:新型肺炎 拡大阻止へ万全を期せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:新型肺炎 拡大阻止へ万全を期せ
政府は、新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法上の「指定感染症」に指定し、対策を強化する。水際対策と国内での監視態勢を強め、感染拡大の阻止へ万全を期したい。
きょう閣議決定で指定するのは、患者の増加が収まらない中国の現状を見ての判断だろう。
感染症の封じ込めには、政府レベルから民間、個人までできる対策がある。
パニックを起こしたり、周囲への差別を生まないためにも、正確な知識と情報を持ち「正しく怖がる」姿勢がなにより大切となる。まず政府は、正確な情報をこれまで以上に迅速に出すよう心掛けてほしい。
指定されると全国に約四百ある指定医療機関への強制入院や、就業の制限、患者を見つけた医師に報告が義務付けられる。
これまでも二〇〇三年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が、一四年に中東呼吸器症候群(MERS)が指定されている。
世界保健機関(WHO)は先週、緊急性を評価する委員会を開いたが、緊急事態かどうかの判断を見送った。政府はそれを待たず、指定感染症に指定することで監視と治療態勢を強化する。新型肺炎のリスク評価をこれまでより引き上げることになる。
空港や港などでの水際対策と合わせ警戒を怠らず、感染の拡大阻止に努めねばならない。
厚生労働省は今のところ、新型肺炎は国内では人から人への持続的感染は認められないと説明している。過剰に心配する必要はない。
ただ、中国政府は春節(旧正月)の大型連休期間中の人の移動を大幅に制限しているが、どこまで抑え込めるのか不透明な状況である。中国政府との連携も欠かせない。専門家の中国への派遣などの協力も積極的に行うべきだ。
民間レベルでの対策もある。外国人旅行者と接する宿泊施設などは、利用者に手洗いなど予防を呼び掛けたり、感染症の対応ができる近くの医療機関を確認しておくことは有効だろう。
個人でもマスクの着用やこまめな手洗い、うがいなど季節性インフルエンザと同様の対策を心掛けたい。予防に効果がある。
東京五輪まで半年を切った。期間中は多くの外国人が訪日するだろう。日本感染症学会は五輪に向け感染症への警戒を呼びかけている。既に多くの外国人が訪れる社会になった。感染症対策は政府の重要課題だと認識すべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年01月28日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。