【社説】:②台湾与党大敗 中国の圧力増大が懸念される
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:②台湾与党大敗 中国の圧力増大が懸念される
台湾の蔡英文政権に対する有権者の不満が噴出した。政権弱体化は避けられまい。中国が圧力を強め、台湾海峡情勢が不安定化する事態への警戒が欠かせない。
台湾で統一地方選が行われ、与党・民進党は首長ポストを改選前の13から6に半減させた。蔡総統は「結果に完全な責任を負う」と述べ、党主席を辞任した。
地方選は、2016年に発足した蔡政権の中間評価と位置づけられ、20年の次期総統選の前哨戦とも目されていた。蔡氏は総統は続けるものの、求心力が低下し、再選に向けて出馬できるかどうかは見通せなくなった。
民進党は「台湾独立」を党綱領に明記するが、蔡氏は独立でも統一でもない「現状維持」の対中政策を掲げてきた。
党内の独立志向派が勢いを増せば、中国との緊張が高まりかねない。蔡政権は対中関係への影響を最小限に抑えねばならない。
中国は「経済・民生を改善したい台湾の民衆の強い願いの表れ」と選挙結果を歓迎した。蔡政権が「一つの中国」原則を受け入れないことを理由に、外交・軍事・経済で圧力をかけ続けてきた成果だととらえているのだろう。
パナマなど5か国と中国は国交を結び、台湾と断交させた。台湾周辺海域では軍事演習を活発化させている。中国から台湾への旅行者を制限する一方で、台湾出身者の中国での就職・就学を支援し、世論の分断を図っている。
台湾海峡やアジア太平洋の安定に責任を負う大国にふさわしい振る舞いとは到底言えまい。中国には自制を強く求めたい。
親中路線をとる最大野党の国民党は、民進党の地盤である高雄市長選を制した。党勢を回復させ、政権奪還に弾みをつけた。
地方選で中台関係は主要争点にならなかった。とはいえ、中国人観光客の減少や中国向け農産物の輸出伸び悩みなど、関係悪化が景気に悪影響を与えているとの認識が広がっているのも事実だ。
台湾統一をめざす中国への警戒感と、中国がもたらす繁栄との間で、民意は揺れている。与野党問わず、中国との距離の取り方が今後も課題となろう。
地方選に合わせて行われた住民投票では、福島第一原子力発電所事故から続く、福島など5県産食品の輸入規制継続への賛成票が規定数を超えた。
日本政府がめざす早期の規制解除が難しくなった。良好な日台関係に水を差すのではないか。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2018年11月27日 06:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。