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チラシの裏

皇帝のかぎ煙草入れ その2

2012年05月31日 | JDカー
作品が短めで後半の展開がドライヴがかかってぐいいぐい読ませるので、
なんとなく冒頭の叙述トリックが見過ごされがちですが、
寝室でのネッドとイヴのやりとりは綱渡りと言うより、
視点が随意に移動して人によっては「ひどいアンフェア」と言いたくなるでしょうね。

都合の悪い部分はどうとでもとれる曖昧、かつダブルミーニングな言い回しでサラリとやり過ごして、
「茶色の手袋」へと注意を集めるやり口。
クリスティのお気に召したのは、この寝室の場面なのでしょうかね。
電話の箇所など舞台のワンシーンのようです。
しかも「かぎ煙草入れ」の持つ意味を、
あからさまにあちこちに晒しながら気取られないように配慮している。

怪談や密室なんか使わなくても、これだけタイトなミステリが書くことが出来るんだから、
この方向にすすんでも傑作を書けた人なんでしょうねえ。
結局アクの強い従来の路線や歴史モノに固執していたんだから、
人間なにが不幸かわかりません。

女性が主役だからでしょうか、「皇帝のかぎ煙草入れ」は映画化されています。
「That Woman Opposite」(1957年)
なんとその映画には、ジャニス・ローズ役でペトゥラ・クラークが出演しているそうです。びっくり!

Petula Clark Goodnight My Love



ところで次回刊行は「黒死荘の殺人」!
長かったなあ~
1977年刊行の創元推理文庫「白い僧院の殺人」P85の註に
「『黒死荘の殺人』本文庫で近刊」とあったので、35年越しで実現しましたねえ。

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