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夜の翼

2013年06月07日 | SF
ジャック・ヴァンスにくっきりとしたプロットを作る才があったら、
どんな作品を書いていたのでしょうか。
もしかしたら、こんな作品かも。
シルヴァーバーグの「夜の翼」(中篇版)は、1969年にヒューゴー賞を受賞しています。



賞をとったかどうかとか、
シルヴァーバーグがどんな作家なのかなどはさておき、
読めば「SFっていいなあ」と思わせる作品であることがお分かりになると思います。

いつとも知れぬ遠未来の地球を舞台に、過不足なく描かれた登場人物、
短い筋ながら背景の奥に折りたたまれた長い物語の一部を垣間見せつつ、
壮大なラストに持ち込む力業は
さすが小説工場のあだ名を持っていただけあります。
しかも、これを第一部とし、同名の長編として発表しています。

ところが70年代に入るとシルヴァーバーグはブンガク的な作品を書きはじめ、
-サンリオ文庫に入ってたような-
その作品が評価されないことを理由にSF引退宣言をしてしまいます。




そしてまたまたところが、80年に「ヴァレンタイン卿の城」を発表してSFに復帰。
「ヴァレンタイン卿の城」はSFというより、ブロックバスターファンタジイの先駆みたいな作品で、
「あのシルヴァーバーグ」が臆面もなくファンタジイの約束事を使っているのを読んで唖然としましたが、
話はけっこう面白いです。
さすが10代から小説を書きとばしてきた天才は違いますねえ。
「ゼンダ城」と「光の王」と「水戸黄門」(!)を足したような感じです。



続編もありますが、「マジプール年代記」が同じ世界を舞台にした連作中篇集でオススメ。



※今思ったのですが、ダン・シモンズの「ハイペリオン」は
なんだか「ヴァレンタイン卿の城」を思わせるような。
どこがどうと具体的に指摘できませんけど。


山下達郎がシルヴァーバーグの「夜の翼」に感動して、
アルバム「Moonglow」で「夜の翼」という歌を発表していました。


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