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名古屋シネマテーク「生誕百年 映画監督 山中貞雄」

2010年04月06日 | others
『「新青年」ゆう雑誌おましたやろ。しょっちゅう読んでいる。仕事しとるんかいアレ』
(「鞍馬天狗のおじさんは」竹中労)

鞍馬天狗こと、嵐寛寿郎が山中貞雄を評した一言です。
山中貞雄についての興味は、この一点につきます。
山中貞雄が読んでいたその頃の「新青年」は、
編集長が横溝正史から延原謙、また水谷準へとバトンされ、
モダニズムを売り物にする若者向けの、
いまで言うカルチャー雑誌の相を呈していたと思われます。
しかし探偵小説がひとつの柱であったことも事実で、
翻訳、創作の探偵小説が掲載されていました。
ですから、山中貞雄作品には「ミステリ的要素」が隠れているのではないか、
という仮説を確かめに行ったわけです。



名古屋シネマテーク「生誕百年 映画監督 山中貞雄」
●丹下左膳餘話 百萬兩の壺
■その前夜
●人情紙風船
●河内山宗俊
■右門捕物帖六番手柄
(●は監督作品、■は脚本作品)

結果から言えば、ミステリ的な要素はほとんど見受けられなかった、
というのは当たり前で、べつにミステリ映画を撮っていたわけではないですからね。

一番楽しい作品だった「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」でも、
いわゆる「宝物の争奪戦」になるのかと思いきや、
丹下左膳と情婦のお藤が主役のハートウォーミングなコメディだったのですね
(高橋英樹が主演していたTV時代劇ドラマ「ぶらり信兵衛道場破り」の元ネタ)。

いちばんミステリ色が濃いかと思われた「右門捕物帖六番手柄」は、
たしかに同心の「むっつり右門」が主役ではあるのですが、
筋はまったくの「多羅尾伴内」です。
いやもう、笑えるくらいにそっくりです。

※江戸の町で怪しげな浪人たちが暗躍、右門がその謎を追います。旅に出たはいいが、手がかりの手紙を賊の幹部らしき片目の男に奪われてしまいます。その手紙に書きつけてあった寺へ乗り込もうとしますが、敵のほうが一つ上手で右門は覆面されたうえに猿ぐつわをかまされ、縛り上げられて拉致されてしまいます。

はい、ここで「覆面&猿ぐつわ」がポイントですね。

賊の親玉は豊臣の残党で、行幸する将軍家を谷にさしかかったところで橋ごと爆殺しようとする計画。しかし右門は縛り上げられて手も足もでない。親玉が右門に引導を渡そうと覆面をはぐと、なんとそれは賊の片目男! すると本物の右門は? 

という感じのストーリーです。
なんたって笑えるのは、このあと賊に化けた右門がアップになるのですが、
オンタイ、眼帯をあてる目が反対ですって(笑)。
賊は右目に眼帯でしたが、なぜかアラカンの左目に眼帯が。
これで気づかない賊は幕府転覆なんてムリ(笑)。
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