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チラシの裏

蒸気にむせぶ

2012年04月19日 | ファンタジイ
ハヤカワ文庫FTではスチームパンク系の作品も出ていたはずなんですが、
いまやとんと新刊さえも見なくなりました。
ブレイロック、ジーター、パワーズがスチームパンク3人衆なんて言われていた頃が懐かしい。
個人的にはパワーズが一番読みやすく、次がジーターで、ブレイロックはなんとも言いがたいほど読みにくい。

下の「リバイアサン」はとても面白そうな設定ではあったのですが、
読みすすめるのが苦痛なうえ、物語のラストではそれが報われない、という残念な作品でした。




サイバーパンクは翻訳家黒丸尚の死で、
スチームパンクは翻訳家大伴墨人の死によって、
日本ではすでに遠いものになったのでしょうかね。

「悪魔の機械」では、訳者大伴墨人の文体というか言葉使いに馴染めるかどうかが分水嶺です。
「ヤッター」とか「止めれ」(田舎モノの口調)とか、もしかしたら読む気をなくす人もいるかも。
(最近うちの地方で土曜日早朝に「ヤッターマン」の再再再々(?)放送が始まり嬉しいかぎり)
主人公がパガニーニに間違われてヴァイオリンを弾くはめになる場面があり、
無能な主人公はヴァイオリンなぞ弾けるはずもなく、どうやって切り抜けるのかと思ったら、
「こーんなところでヴァイオリンが弾けるか、責任者出て来い!」
みたいな台詞で観客たちをケムに巻く、まるで人生幸朗みたいな場面あり。


スチームパンク作品ならば、この「アヌビスの門」が一番だと思います。

19世紀のロンドンを舞台に、
魔法によるタイムトラベル、地下の奇怪な巣窟に集まる盗賊、乞食、魔術的クローン、
エジプトの魔人、詩人、怪物たち。
かたや英国王室の王子が日本の高下駄を履いて登場、という脱力場面も。
(高下駄を履くことには、じつは一応の理屈があります)

複雑なプロットを一点に収束させていく力技に陶酔。
「奇想天外な大伝奇小説」という看板に偽りなし、です。




■悪魔の機械 K・W・ジーター
■リバイアサン ジェイムズ・P・ブレイロック
■アヌビスの門 ティム・パワーズ
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