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ハマースミスのバゴット

2012年04月21日 | ミステリ
植草甚一セレクトの創元社クライムクラブで出たっきりの、
古書価がべらぼうに高いレア本だったのですが、
何年か前に創元推理文庫で出ました。

シカシイッタイドコガオモシロイノカ。

アイラ・レヴィンの「死の接吻」と雰囲気が重なるようにも思えるのですが、
「死の接吻」くらいに突き抜けていれば…

東京創元社のクライム・クラブは1958年から59年にかけて29冊が刊行された、ミステリ叢書です。
収録作品の発表年を見ると、ほとんどが1950年台後半のものばかりで、
当時の海外ミステリの新作をそろえたということが分かります。
作家のほうもおそらくそれまで既知の作家ではなく、植草甚一セレクトによる大穴的作家らしく、
クライムクラブ以外では翻訳のない作家が3分の1くらいいると思います。
しかもその作家のクライムクラブ収録作は創元推理文庫に入ることなく埋もれたままになっています。

それが東京創元社ももったいないと思ったのか、
さいきん創元推理文庫に入ったのがこの「ハマースミスのうじ虫」と、「チャーリー退場」(アレックス・アトキンスン)。

こんなレアモノぞろいのお茶の会みたいな叢書に入っている作家だけに、
あとがきを読むと著者のウィリアム・モール(もちろんペンネーム)もなかなか面白い経歴の持ち主です。

で、経歴からするとわりと有名人のはずが、なんと「ハマースミスのうじ虫」の扉裏に原題、原著の発表年といっしょに、
「著作権継承者が不明なので情報を持っている人は東京創元社に連絡頼む」、という一文が英語で掲載されています。

日本の作家でも復刊されるときに、たまにこんな文が載っているときがあります。
最近では、ちくま学芸文庫から柴田天馬訳『聊斎志異』が復刊される予定ですが、
この柴田天馬の著作権継承者が不明のようです。

「ハマースミスのうじ虫」の著者はいちおう貴族の一家出身らしいのですが、それでもこんなことがあるんですね。

■ハマースミスのうじ虫 ウィリアム・モール 創元推理文庫
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