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チラシの裏

わたしは誰

2012年04月24日 | SF
その昔、光文社からB5サイズのカッパコミックスとして鉄腕アトムが毎月(?)出ていました。
この鉄腕アトムカッパコミックス版には、
その掲載号のアトムに使われているガジェットをテーマにした読み物が掲載されていました。
それがわたしにとっての、SF・ミステリへの撒き餌だったと気づいたのは、大人になってからのことでした。

誰が書いていたのかもう分かりませんが、
たとえば「コウモリ伯爵の巻」では、都市伝説赤マントを書き、
「ホットドッグ兵団の巻」ではサイボーグの話を書いていました。
そのサイボーグの解説で紹介されていたSF小説が、アルジス・バドリスの「Who?」だったのです。
このジャケも載っていて、トラウマになるくらいに怖かったなあ。
イラストレーターがインパクトを狙ってこんなデザインにしたのかと思っていたら、
本文の中で描写される姿を忠実に描いていたことに気づきました。







それがのちに朝日ソノラマ文庫海外シリーズで「アメリカ鉄仮面」という題で出ていました。
いい機会なので、ちょいと読んでみることにしました。

アメリカの天才科学者が、ヨーロッパのどこか共産圏に近い場所にある研究所で爆発事故にあい、瀕死の重傷を負う。
ソ連が彼を回収して、命を助けるかわりにサイボーグ化してしまう。
アメリカに戻った彼をFBIが審査するのですが、
本人なのかソ連がスパイとして送り込んだ別人なのか決め手がない・・・。
そんな状況をカットバック手法を使って地味に展開する長めの中篇です。
冷戦構造下における諜報戦や、
機械と肉体のハイブリッドに対する嫌悪感なんてものはすでに陳腐化しているので、
今更という感はありますが、「自己アイデンテティの証明」が意外に難しいことにはたと気づきました。

地味な話なので売れなかったのでしょうが、題はなんとかして欲しかったです。
「Who?」を「アメリカ鉄仮面」ってどうよ。
※小栗虫太郎の「人外魔境」に同タイトルがありましたね。


■アメリカ鉄仮面 アルジス・バドリス 朝日ソノラマ文庫海外シリーズ
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